急遽の騎乗も人気に応えた五十嵐冬樹騎手

　ホッカイドウ競馬3歳三冠路線の第一弾となる「北斗盃」が去る5月13日に行われた。

　数えて今年で45回目。内回りコース1600m。1着賞金500万円。副賞として、フィエールマンの配合権利が付与される。

　出走頭数は9頭と、昨年の7頭に続き、今年もやや少なかった。絶対的な主役不在の中、1番人気に支持されたのはラッキードリーム(五十嵐冬樹騎手)の2.6倍。2番人気はリーチ(服部茂史騎手)の2.8倍、さらにソロユニット(阿部龍騎手)4.4倍と続く。9頭中5頭が10倍を切っており、人気は割れていた。



　発走は午後8時40分。良く晴れた夜空にファンファーレが響き渡り、定刻通りにゲートが開いて、レースがスタートした。勢いよく飛び出したラブミーグッド(岩橋勇二騎手)とソロユニットが並んでゴール前を通過して行く。リーチ、ラッキードリームもそれに続く。

　快調に飛ばしていたラブミーグッドだったが、3コーナーを回ってから徐々に脚色が鈍り、代わってソロユニット、ラッキードリームが進出してくる。4コーナーから直線に向かうと、この両馬に外からリーチが加わり、完全にこれら3頭の争いとなった。

　残り100mあたりで抜け出したのはラッキードリーム。内のソロユニット、外のリーチがラッキードリームを挟んで2着争いを演じ、ゴール前辛うじてリーチがソロユニットに先着して2着を確保した。


　ラッキードリームは落馬負傷の石川倭騎手から五十嵐冬樹騎手に急遽乗り替わった形だが、そんなハンデをものともせず、ゴール前に計ったように抜け出し、見事1番人気に応えた。勝ちタイムは1分42秒5。


「初めて乗る馬でしたが、石川君の代打を果たせたことにホッとしています。内回りのレースがどう出るかという話だったので、戸惑っている部分もあったみたいですが、ここを一叩きして次に繋がるレースが出来たと思います。三冠に向けて皆さんまた応援よろしくお願い申し上げます」とは五十嵐騎手のコメントだ。


　ラッキードリームは牡3歳鹿毛、父シニスターミニスター、母サクラスリール、母の父ファンタスティックライトという血統で、林和弘厩舎の所属馬。馬主は林正夫氏。生産は新ひだか町・(有)谷岡牧場。通算成績は8戦5勝、獲得賞金は4320万円。重賞は、昨年秋の「サッポロクラシックカップ」「JBC2歳優駿」に続いてこれで3勝目。次の目標は、6月17日に予定されている「北海優駿」となる。



　この日、門別競馬場は、258人の熱心なファンが足を運び、レースを見守った。先着順500名までという制限が設定されているせいか、入場人員としてはかなり少なめだが、それでも、この日まで門別は、自由に入場できる競馬場として貴重な存在ではあった。

　しかし、この直後に、北海道は新型コロナウイルス陽性者が急激に増加し、ついに緊急事態宣言が発出される事態になったのは周知の通り。それによって帯広競馬場とともに、門別も今週から無観客開催の措置が取られることになった。これまでどちらかというと比較的少数の陽性者で済んでいた日高管内だが、ここ数日というもの、各町で新たな陽性者が続出しており、いよいよ身辺までコロナ禍が迫ってきた実感が強い。ここで感染拡大を食い止めておかねば、本当に大変な事態に発展するであろうことが予想される。門別競馬場が無観客開催に舵を切ったのも、やむを得ないところだ。

　なお、この日は裏開催が浦和と園田で、いずれも日中開催だったことから、ナイターは門別単独になったため、8億7763万3240円と馬券は大いに売れた。

　コロナ禍により、観客がいようがいまいが、馬券売り上げには直接関係がない(どころか、昨年の例からすれば、むしろ無観客の方が売り上げは伸びた)ようだが、競馬というのは本来、ファンからの声援や熱い視線がレースを盛り上げてくれるもの。それがまたなくなってしまうのかと思うと、何とも言いようのない寂しさを感じる。一般のファンと同様に、馬主、生産者もまた緊急事態宣言の期間中は競馬場入場ができなくなった。何とも残念な話だが、今が我慢の時、ということなのであろう。とりあえず今月末までは緊急事態宣言の期間が続く。ここでどれくらい沈静化するか、が今後の分かれ道になりそうだ。

　それにしても、恐るべし、新型コロナウイルス。