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仏国版ダービー「ジョッケクルブ賞」勢力図はどうなる?

  • 2021年05月26日(水) 12時00分

鍵を握るのは、A.オブライエンの決断


 24日にパリロンシャンで行われたG2オカール賞(芝2200m)をもって、6月6日にシャンティイで行われる仏国版ダービーのG1ジョッケクルブ賞(芝2100m)へ向けた前哨戦が終了。勢力分布の半ばが明らかになった。

 勢力分布の「半ばが」と、奥歯に物が挟まったような表現になったのは、出走すれば1番人気になるであろうセントマークスバシリカ(牡3、父シユーニ)の出否が未定だからだ。

 エイダン・オブライエンが管理するセントマークスバシリカは、昨年10月にニューマーケットで行われた英国における2歳牡馬王者決定戦的位置付けにあるG1デューハーストS(芝7F)の勝ち馬である。当然のことながら、5月1日にニューマーケットで行われたG1英二千ギニー(芝8F)の有力候補に挙げられていたが、レース当該週になって陣営は路線変更発表。仏国産馬であるセントマークスバシリカを、5月16日にパリロンシャンで行われる仏国3歳3冠初戦のG1プールデッセデプーラン(芝1600m)にぶつけることを決めたのだ。

 英二千ギニーにおけるオブライエン勢は大惨敗を喫したため、この戦略が100%うまく行ったとは言えないのだが、セントマークスバシリカ自身は首尾よくG1プールデッセデプーランを快勝。本賞金に加え、本賞金の60%にあたる仏国産馬プレミアムを手にすることになった。

 そのG1プールデッセデプーラン後、オブライエン師は「次走は仏ダービーか、ロイヤルアスコット初日のG1セントジェームズパレスS(芝7F213y)」とコメント。その結論がまだ出ていないのである。

 セントマークスバシリカの母の父はガリレオで、ガリレオ牝馬にシユーニの配合は、シユーニの代表産駒の1頭である凱旋門賞馬ソットサスと同じだ。2400mはともかく、2100mなら楽にこなす血統背景といえよう。

 地元の仏国調教馬で1番手と目されているのが、ジャン・クロード・ルジェ厩舎のマカロン(牡3、父ベイテッドブレス)だ。2歳6月にデビューすると、順調に白星を積み重ね、9月28日にシャンティイで行われたG3コンデ賞(芝1800m)を5馬身差で制し、無敗の4連勝を飾るとともに重賞初制覇を果した。しかし、10月24日にサンクルーで行われたG1クリテリウムドサンクルー(芝2000m)で3着に敗れ、連勝はストップしている。

 同馬の今季初戦となったのが、5月11日にシャンティイで行われたG3ギシェ賞(芝1800m)で、道中好位追走からきっちりと抜け出して快勝。2度目の重賞制覇を果たした。母は2400m戦の勝ち馬だが、父は生粋のスプリンターだっただけに、距離延長には若干の懸念があるように思う。

 同じジャン・クロード・ルジェの管理馬でも、距離の不安は全くないのがチェシャーアカデミー(牡3、父フリントシャー)だ。

 G1パリ大賞(芝2400m)など5つのG1を制した他、G1凱旋門賞(芝2400m)で2年連続2着となったフリントシャーの、初年度産駒の1頭となる同馬。母ダンザカヴァロはG3ロングアイランドH(芝12F)2着馬で、叔父にG3伊セントレジャー(芝2400m)勝ち馬トリップトゥロードスがいるという牝系の出身。アルカナ10月1歳市場にて、7万7千ユーロ(当時のレートで約944万円)で購買されている。

 昨年11月20日にポーのメイドン(AW2000m)を制しデビュー勝ち。2戦目となった、2月2日にポーで行われた条件戦(AW2000m)も制し連勝。

 そして、初めて芝を走ったのが、4月11日にパリロンシャンで行われたG3ノアイユ賞(芝2100m)で、後方から猛然と追い込んだ同馬は、1番人気のプリティタイガー(牡3、父シーザムーン)を鼻差捉えきれずに2着で入線。

 しかし、プリティタイガーがゴール前で斜行したとして降着となり、チェシャーアカデミーが繰り上がりで優勝。結果的には無敗の3連勝で重賞初制覇を果すことになった。

 ちなみに、ノアイユ賞で4着だったのが、5月23日のG2伊ダービー(芝2200m)を4馬身差で快勝したトウキョウゴールド(牡3、父ケンダルジャン)だった。

 英国からこのレースを狙いに行くのが、ジョンとタディのゴスデン親子が管理するメガラン(牡3、父キングマン)だ。

 アンソニー・オッペンハイマー氏の自家生産馬で、同じくオッペンハイマー氏の自家生産馬としてG1英ダービー(芝12F6y)やG1凱旋門賞(芝2400m)を制したゴールデンホーンの甥にあたるのがメガランだ。

 2歳時は5戦1勝、ニューマーケットのG3オータムS(芝8F)で4着となっている。

 今季初戦となったリングフィールドのLRスプリングC(AW7F1y)で2着になると、続くニューキャッスルのLRバラードンS(AW8F5y)を制し今季初勝利。5月13日にヨークで行われたG2ダンテS(芝10F56y)はハリケーンレーン(牡3、フランケル)の2着だった。

 ダンテSと言えば英ダービーのプレップとして有名だが、陣営はレース前から、距離適性を鑑みて仏ダービーを目標にしているとコメントしていた。

 なお、24日のG2オカール賞を制したバブルギフト(牡3、父ナサニエル)は、仏ダービー未登録で、6月20日にシャンティイで行われるG3リス賞(芝2400m)に向かうか、7月14日にパリロンシャンで行われるG1パリ大賞(芝2400m)まで待つかの、いずれかになる模様だ。

 6月6日のG1ジョッケクルブ賞は、グリーンチャンネルで生中継する予定なので、日本の競馬ファンの皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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