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混乱するコロナ対策 競馬界も翻弄

  • 2021年05月31日(月) 18時01分
教えてノモケン

▲少数とは言え、今年はダービー馬の雄姿をファンに直接届けることができた (撮影:下野雄規)


 本稿がアップされるのは5月31日で、既に日本ダービーも終わっている。昨年は7カ月以上続いた無観客施行のただ中で、コントレイルの無敗の二冠を見守ったのは、直接、施行に関わる人々とメディア関係者などに限られていた。今回は曲折もあったが、少数とは言え、ファンを迎えて施行されたのは不幸中の幸いと言える。

 ただ、首都圏と近畿・東海の現金発売施設は5月中は営業取りやめが続いており、しかも地方競馬では都市部と北海道で無観客の施行が続くなど、温度差も表面化している。

 ファンも混乱しかねないこうした状況は、一義的には政府の対応のドタバタが原因である。変異株の拡散で感染拡大に歯止めがかからず、ワクチン接種も先進国では圧倒的に遅れている。競馬界も当面、こうした混乱に振り回されることは不可避な状況だ。

二転三転した東京開催


 ダービーが極めて限定的とは言え、観客を迎えて施行されるまでは、様々な曲折があった。ダービーを含む第2回東京開催は、4月24日に始まったが、開幕日前日の23日に政府は、東京と近畿3府県を対象に今年2度目の緊急事態宣言を発令した。

 宣言の意図は、連休期間中の人の移動抑制とされており、発効は25日(日曜)に設定された。こうなると、同じ週の土日で対応が変わることになり、混乱は避け難い。しかも、JRAが日曜の無観客転換を発表したのは、宣言の正式発令を受けた23日夜遅くで、各メディアがいかに速報したとは言え、ファンへの伝達には限界があっただろう。

 もっと深刻なのは、場内で営業する飲食店やコンビニである。当然、土日連続営業を前提に仕入れをしていたはずだが、金曜夜にいきなり「土曜のみ」への変更である。JRA側からの休業補償的な措置はあったが、食材の廃棄など、ドタバタの費用は間違いなく発生している。

 筆者は25日にフジビュースタンド3階を経由して記者室に入ったが、照明の消えたコンビニの棚を見ると、要冷蔵の商品の棚は空で、保存の利く商品だけが、むなしくそのまま棚に置かれていた。

 こうした問題が深刻なのは、コロナ禍以前から場内での出店に消極的な業者が目立ち始めていたからだ。中央の場での営業は当然ながら土日限定で、フランチャイズが多い。だが、近年は人手不足などもあって、アルバイトの従業員確保が難しいため、「確保したマンパワーを常設の店舗に振り向けたい」と店を閉ざした例もある。

 しかも、昨年10月に観客の限定入場は始まったものの、最も器の大きい東京でさえ、スマートシート(従来は無料だったベンチなどに番号を振って予約発売の対象とした)導入後も、入場者が5000人を超えたことはない。政府の大型スポーツ行事への規制は現状、「最大収容人員の50%」と「5000人」の二段構えで、厳しい方の規制もクリアできる半面、場内で出店する業者にすれば、顧客数が少ないことになる。

 ただでさえ、厳しい状況で入店している業者側にとって、日曜のいきなり休業は論外だろう。こうしたことが繰り返された場合、中長期的には場内で出店する業者の確保も難しくなる。

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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