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昨年を上回る大盛況で幕を閉じた「八戸“燦燦”市場」

  • 2021年07月07日(水) 18時00分

尻上がりに活況を見せて最終的に1000万円超えが3頭も!


 昨日の7月6日、青森県で唯一の1歳市場「八戸市場」が開催された。結果はすでに各報道で紹介されているように、非常に盛況であった。すでに今年は、6月22日に開催された九州市場においても、前年を大きく上回る好成績を残しており、この八戸市場にも大きな期待がかかっていた。

 まず簡単に市場の結果をおさらいしておく。上場頭数41頭(牡24頭、牝17頭)、うち32頭(牡20頭、牝12頭)が落札され、総額1億2243万円(税込み)、売却率は78%、1頭当たりの平均価格は382万5937円(税込み)であった。

 昨年の数字と比較すると、八戸市場の好況がより伝わるだろう。上場頭数は前年比1頭減ながら、落札頭数は3頭増、それにより売却率は9%上昇し、売り上げも3487万円増加した。実に前年比39.8%の伸びである。

生産地便り

好天に恵まれた八戸市場の展示会場


 昨日の八戸市場は、曇りがちながら時折太陽が顔を出し、初夏の爽やかな風が吹き抜ける好天に恵まれた。上場馬の比較展示は午前10時半開始。いつになく人が大勢いると感じていたが、10時を過ぎてからは、明らかに昨年よりも多くの購買関係者が次々に訪れ、展示を待ちかねている様子であった。中には展示の前から各馬房まで出向いて事前に目当ての馬を個別にチェックする購買関係者も少なくなかった。

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待機馬房前で個別に下見する購買関係者たち


 用意したセリ名簿の残部が残り少なくなっているらしい、というような噂話すら漏れてきて、否が応でも期待が高まってきた。

 八戸市場では、比較展示を細かく分けて実施する。今年も3回に分割しての展示であった。日高の市場では上場頭数が多いので41頭ならば一度に展示できる頭数だが、青森の場合は、馬の引手の問題(同じ人が何頭も引く)もあり、頭数を絞って分割せざるを得ないのだ。

 そのため一度に展示されるのは13頭〜14頭である。購買関係者が1頭ずつ入念にチェックしながら、各馬を見て歩く。展示の最後は、時計回りに展示場を1周して常歩を披露し、その後、1頭ずつ速歩を見せる。日高ではもうなくなった(頭数が多いことと、放馬などの危険があるため)が、ここでは昔ながらの懐かしいセリの風物詩が残っている。

 比較展示が終了すると、八戸市場では、たっぷりと昼食時間が設けられる。各人がテントでお弁当と飲み物を受け取り、それぞれ思い思いの場所で昼食をとるのだ。41頭なので、八戸市場はすべてにおいて、のんびりとしたスケジュールになっている。

 セリ開始は12時半であった。最初に主催者の青森県軽種馬生産農協・山内正孝組合長が場内に向かって挨拶し、1番スプンキーウーマンの2020(父ゴールドアクター、牡・栗毛)からセリが始められた。八戸市場の上場馬は、8角形のリンクを周回する形式である。購買者と見学者はすり鉢状になった座席に、それぞれ距離を取りながら座る。会場の一番高いところにぐるりと柵が設けられており、そこにもずらりと人々が並んでせりの行方を注視している。

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中央の8角形のリンクで上場馬は周回を行う


 最初のうちはやや静観ムードが漂い、価格も比較的落ち着いていたが、セリが進むにつれて少しずつ盛り上がりを見せ始め、次々に購買者から声がかかり、売却率は一気に上昇した。税込みながら、1000万円を超える馬も3頭出た。うち1頭はJRA日本中央競馬会の落札である。因みにJRAはこの市場で4頭を購買し、トップバイヤーであった。

 最高価格馬は、当初より注目されていたエピファネイア産駒の35番クイーンナイサーの2020(牝、黒鹿毛、母の父フォーティナイナー)の1210万円(税込み)。(株)タイヘイ牧場の生産、販売申込馬で、落札したのは、静岡県・尾上松壽氏。

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▲▼今年の最高価格馬となったクイーンナイサーの2020


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 次点は3番シェーネフラウの2020(牡、鹿毛、父ドレフォン、母の父ゼンノロブロイ)の1045万円(税込み)。生産・販売申込者ともに(株)タイヘイ牧場、落札者は(株)サラブレッドクラブライオン。

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▲▼新馬戦好調のドレフォン産駒シェーネフラウの2020


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 3番目は、42番ホットレッグスの2020(牝、栗毛、父ヴィクトワールピサ、母の父Galileo)の1012万円(同)。生産、販売申込者は石田英機氏、落札者はJRA日本中央競馬会。

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▲▼JRA日本中央競馬会が落札したホットレッグスの2020


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 今年の八戸市場は、これら価格上位馬が示すように、牡馬よりも牝馬の方に高額馬が多く、落札馬の平均価格も、牡馬の341万5500円に対し、牝馬は451万円と100万円以上の差になった。

 前年を大きく上回る好成績を残したことについて、山内正孝組合長は「上出来も上出来。満足すべき結果に感謝しております。当初はコロナ禍のため本当に来て頂けるのかどうか不安でしたが、今日は遠方からも購買者の方々が多数足を運んで頂き、観光はダメでもこういう場所には行ってみようという気になって頂けたのだろうかな、と思っています。

 若い方々も多かったですしね。競馬場や競走馬のセリ会場では、幸いなことにクラスターが発生していませんし、実際に馬を見たいという方々が多くいらっしゃったのだろうと思っています」とコメントしていた。

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昨年を上回る好況振りに「上出来も上出来」とコメントした山内正孝組合長


 今年も昨年に引き続いて1歳馬を求める購買関係者が数多くいて、サラブレッド需要は未だ堅調なようである。来週は、いよいよ国内最大の「セレクトセール」が開催される。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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