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渋った馬場が追い風になったヨーロッパ血統のトーラスジェミニ

  • 2021年07月12日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・7/11 七夕賞(GIII・福島・芝2000m)
 2番手を追走したトーラスジェミニが逃げ粘るロザムールを交わして重賞初制覇を成し遂げました。雨の影響で馬場コンディションは稍重。不良馬場のエプソムCで3着に食い込み、重馬場の東風Sを逃げ切った実績があるので、渋った馬場は追い風でした。

 と同時に、前走の安田記念で良馬場ながら5着と踏ん張ったように、ここにきての地力強化は目覚ましいものがあります。それが距離延長に耐えた最大の要因でもあるでしょう。

 父キングズベストは芝8ハロンで争われる英2000ギニー(G1)の勝ち馬。世紀の名繁殖牝馬アーバンシー(ガリレオの母)の半弟にあたる良血です。

 ヨーロッパに繋養されていた時代にワークフォース(英ダービー、凱旋門賞)、エイシンフラッシュ(日本ダービー、天皇賞・秋)を出したものの、日本にやってきてからの成績は決して良好とはいえず、重賞勝ち馬はコスモメドウ(ダイヤモンドS)に次いでこれが2頭目です。

 ヨーロッパ血統だけあって道悪は鬼。そして、スパッと切れる脚がないので、瞬発力が要求される直線の長いコースより、スピードの持続力がモノをいう小回りコースを得意としています。全10場の芝コースのなかで福島競馬場の連対率は最も優秀です。今回、3着となったショウナンバルディもキングズベスト産駒でした。

・7/11 プロキオンS(GIII・小倉・ダ1700m)
 好位を追走した9番人気メイショウカズサが快勝。2着は14番人気トップウイナー、3着は12番人気メイショウウズマサが入り、3連単は194万馬券となりました。

 雨の影響で脚抜きのいい馬場コンディションだったため、ダート1700mの勝ちタイムは1分40秒9のコースレコードでした。

 父カジノドライヴはエーピーインディ系で、全10場のダートコースのなかで小倉を最も得意としています。なおかつ、脚抜きのいいダートの鬼で、馬場コンデション別のダート連対率は、良→稍重→重→不良と水分を含むごとに上昇していきます。

 カジノフォンテン(川崎記念、かしわ記念)、ヴェンジェンス(みやこS)が代表産駒です。ここ3走、15着→8着→15着とまったく振るわず、勝ち馬とのタイム差はいずれも4秒以上でした。得意条件で大きな変わり身を見せました。

今週の血統注目馬は?


・7/17 かもめ島特別(2勝クラス・函館・芝1800m)
 函館芝1800mと相性のいい種牡馬はルーラーシップ。連対率30.2%は、2011年以降に当コースで産駒が20走以上した32頭の種牡馬のなかで第2位。当レースにはドゥラモットが登録しています。函館芝1800mでは新馬戦で3着という成績があります。切れる脚はないものの、スピードの持続力に秀でているので、このコースはぴったり。渋った馬場も苦にしません。

今週の血統Tips


 近年のヨーロッパにおける最高の名種牡馬とうたわれたガリレオが、7月10日、アイルランドのクールモアスタッドで死亡しました。23歳。

 英愛チャンピオンサイアーの座に就くこと12回。その父サドラーズウェルズの14回、18世紀の大種牡馬ハイフライヤーの13回に次いで歴代第3位です。産駒はデビュー前のものを含めてまだ数世代残されているため、いずれこれらに並び、抜く可能性は高いでしょう。

 兄弟にこれも名種牡馬となったシーザスターズ(凱旋門賞、英ダービー、英2000ギニー)がおり、母アーバンシーは極上のドイツ牝系から誕生した凱旋門賞馬。2000年10月に競走馬としてデビューし、翌年、英ダービー、愛ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSなどを制覇しました。

 エイダン・オブライエン調教師は現役時代のガリレオについて「ギアが入ってからのトップスピードが驚異的」と評しています。血統、馬体、競走成績、種牡馬成績と、すべてにおいて完璧なガリレオは、巨大なノーザンダンサー系の本流といえる存在でした。そして、ここ十数年もの間、クールモアグループのエンジンでもありました。

 すでに100頭近いG1ホースを出しており、現役時代に14戦全勝の成績を残した最高傑作フランケルは種牡馬としても大成功。今年は父を上回る勢いで賞金を加算しています。ガリレオの肉体は滅びたものの、その血はこの先数十年にわたり、世界のサラブレッドに影響を及ぼし続けるでしょう。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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