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ダービーシリーズ再考

  • 2021年07月13日(火) 18時00分

今年のJDDはダービー馬の出走がゼロで…


 ジャパンダートダービーが、例年と比べてちょっと寂しいメンバーになった。中央勢にも、3年前のルヴァンスレーヴ、一昨年のクリソベリル、昨年のカフェファラオのような中心馬が不在。南関東もこの世代は混戦で、羽田盃上位4着まで、東京ダービー1、2着馬が揃って不在。波乱の匂いが漂う。

 そして地方他地区からの遠征馬も1頭もいない。地方他地区馬の参戦がなかったのは、2002年の第4回以来じつに19年ぶりのこと。

 地方競馬では、2006年に6競馬場での『ダービーウイーク』が始まり、2017年からは8場に拡大された『ダービーシリーズ』が行われている。

 ダービーシリーズ(旧・ダービーウイーク)はもともと、“各地のダービー馬がジャパンダートダービーに集結”という、いわば甲子園方式の理想があり、たしかに当初は各地のダービー馬や、ダービー上位馬がジャパンダートダービーに挑戦してくることもめずらしくなかった。しかし近年では他地区からの参戦が減少傾向にあり、2019、20年はわずか1頭の参戦で、ついに今年はゼロとなってしまった。

 その理由のひとつとして、近年、中央のダート路線が充実したことで格段に層が厚くなり、南関東以外の地方馬ではなかなか勝負にならないということはある。

 さらにこれはちょっと皮肉なことだが、地方競馬の賞金上昇もその理由としてあると思われる。地方競馬の売上が落ちて賞金が下がっていた2010年前後は、地元で走っていてもあまり稼げないので、遠征の輸送費が支給されるダートグレードへ出走手当目的と思われる出走が少なからずあった。それが今では地方のどこの競馬場でも売上の上昇とともに手当や賞金も上昇。十分に稼げるようになったことから、わざわざ遠征してまでとは考えなくなってきたようだ。

 ただ地方馬同士の交流なら勝てる可能性はあり、グランダム・ジャパンなどのシリーズ競走も充実したことで、交流は盛んに行われている。

 南関東以外の“ダービー”を勝った陣営が、その先の目標としてよく言われるのが、お盆の時期に地方全国交流として大井で行われている黒潮盃だ。近年では特に北海道からの遠征が目立ち、過去5年で計6頭が遠征し、2019年にはリンノレジェンドが勝ち、昨年はコパノリッチマンが2着に入っている。1着賞金1800万円は、南関東以外の地方馬にとっては大きな魅力だ。

 一方で、2017年からシリーズ化された『3歳秋のチャンピオンシップ』では、各地の対象レースを勝った馬が、ファイナルのダービーグランプリを勝つとボーナスが支給される。決勝が地方馬同士で、勝てばボーナスという魅力はやはり大きい。

 ダービーシリーズでは、その勝ち馬がジャパンダートダービーに出走すると与えられる出走奨励金はあるが、遠征して負けることのダメージを考えると、あまり魅力的には映らないというのが現状のようだ。

 ダービーシリーズからジャパンダートダービーへ、という路線は現状のままとして、もうひとつの目標として公式に黒潮盃を設定してはどうか。3歳秋のチャンピオンシップには、ファイナルでのボーナスがあるが、ダービーシリーズにはそれがない。もちろんジャパンダートダービーを勝てばボーナス以上の賞金が手に入るが、現状の中央・地方の格差を考えると、特に南関東以外の地方馬にとっては現実的ではない。

 ならば黒潮盃をダービーシリーズのファイナルとして、ボーナスを設定してはどうか。そうすると黒潮盃が、3歳秋のチャンピオンシップのステップレースとしての立ち位置と被ることになるが、ダービーシリーズから3歳秋のチャンピオンシップへとつながる、中間点のタイトルとする手はあると思うのだが、どうだろう。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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