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コビさんの200勝と50代問題

  • 2021年07月15日(木) 12時00分
 先週の第57回七夕賞で、「コビさん」こと小桧山悟調教師が管理するトーラスジェミニが13回目の挑戦で重賞初制覇を遂げた。それにより、小桧山厩舎は、節目のJRA通算200勝を達成した。

 前走の安田記念で、戸崎圭太騎手が、この馬を5着に持ってきた。勝ったダノンキングリーはこれがGI初制覇だったが、2着グランアレグリア、3着シュネルマイスター、4着インディチャンプにつづいての入線だから、自分の前にはGI馬しかいなかったわけだ。戸崎騎手は、あの一戦で、この馬の力の引き出し方を心得たのだろう。

 七夕賞では、道中、前を行く2着馬ロザムールにプレッシャーをかけつづけ、勝負どころから動いて後続に脚を使わせた。終始、レースを支配し切っての勝利だった。

 コビさんにとっては、スマイルジャックによる2011年の東京新聞杯以来10年ぶりの重賞勝ちで、これが5勝目。気合が乗りすぎて装鞍に苦労していたところを、かつて厩舎スタッフだった小手川準調教師が協力して事なきを得たという記事を読んだときは、ちょっとジンと来てしまった。

 柴原榮オーナーにとって小桧山厩舎とのコンビでは、イルバチオで勝った2003年のアイビスサマーダッシュ以来、18年ぶり2度目の重賞勝ちとなった。これは小桧山厩舎にとって初の重賞勝ちであった。個人馬主を大切にし、長く付き合うというコビさんの姿勢が、柴原オーナーにとっての18年ぶりの重賞タイトルという形で結実した。

「おれは何も持っていないんだけど、圭太が持っているんだよ。完璧に乗ってくれた。後ろの馬に差されるかなと思ったんだけど、あそこがゴールだった、ということだよね。次走は未定だけど、せっかく権利を持っているのだから、サマー2000シリーズのどこかを使えればと思っています」

 コビさんはそう話した。中村均元調教師や、松田博資元調教師からも祝福の電話があったという。

 七夕賞の翌日と翌々日、セレクトセール2021が開催された。既報のように大変な活況で、2日間の総売上は225億6100万円に達し、過去最高だった2019年の205億1600万円を大きく上回るレコードとなった。サイバーエージェント代表の藤田晋オーナーが18頭を落札し、購入額が全体の10分の1ほどの23億6700万円になったというのも、すごい話だ。

 今年同様コロナ禍でのセールとなった昨年も活発な取引きが行われ、2日間合計の売却総額は歴代2位(当時)の187億6100万円だった。それに藤田オーナーの購入分を加え、さらに14億円ほど上乗せされて、今年の売上げになった。

 馬の価格が上がったこと、それにより購入が叶わなかったオーナーもいたことなどが、再来週のセレクションセールや、来月のサマーセールにどう影響するか。馬産地にとって、いい風が吹いてくれることを願っている。

 セレクトセールの売上が225億円強と言われても、ここまで来ると、それがどのくらいの額なのか、よくわからない。

 今年の皐月賞の売上は191億7266万7100円、ダービーのそれは250億7589万6600円だった。七夕賞は71億7539万3200円。

 藤田オーナーによる購入額23億6700万円がいかに凄まじいかは、レコードだった昨年のセレクションセールの売却総額32億6300万円(184頭)と比べてもわかる。

 さすがの藤田オーナーも、日高の馬すべてを買い尽くすことはできないだろうが、門別の馬を買い尽くすとか、新冠の馬を……といったように、エリアを限定すれば買い占めることができるのではないか。

 そんな途方もないことを考えてしまうほどの勢いであった。

 月曜日の1歳セッションで、ディープインパクト産駒の出てくるセレクトセールは終了した。来年からは、ディープ産駒のいないセレクトセールが開催される。

 その意味で、今年のセレクトセールは、節目にふさわしい華やかさだったと言えるだろう。

 実は、ワクチン接種ネタから書こうと思っていたのだが、まだキャンセル待ちをつづけている。先日、対面での取材が2件あった。私はまだ1回も接種できていないのだが、取材対象はどちらも接種を2回済ませていたので、いくらか気を遣わずに済んだ。

 この調子だと、私に順番が回ってくるのは、早くても月末か。

 それに関して、今、「50代問題」というのがトレンドワードになっている。言い出したのは小池百合子都知事で、50代の入院患者と重症者が増えているらしい。働き盛りで会食をする機会が多く、基礎疾患を持っている人が多いからだという。それに加え、これは私の住む自治体の場合だが、40歳から59歳はワクチン接種が一番後回しなので、「50代問題」は加速するばかりだと思われる。

 感染者の6割ほどが30代以下なのに、重症化したり、問題視されたりするのは50代というのは、やるせないというか、不公平であるかのように、56歳の私は感じる。しかし、昔から、オジサンというのは、いるだけで問題視される存在だ。現に、「50代問題」で検索すると、バブル期に入社して、ろくに働かないのに給料だけはいいオジサンたちの問題に関する記事が出てきた。

 個人的な「50代問題」は、やはりフィジカル面だ。特に毛髪である。去年の8月から使いはじめた発毛剤リアップが12本目に突入した。使いはじめたころにバーと抜け、それが徐々に戻ってきて、「超回復」しそうかな、というところで停滞している。

 使用前・使用後の写真を公開できる日は、はたして来るのだろうか。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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