スマートフォン版へ

地方競馬の売上増が鈍化

  • 2021年08月03日(火) 18時00分

どこかで頭打ちとなることは間違いないのだが…


 コロナ禍で“ステイホーム”が言われた昨年、地方競馬はネット投票でかなり売上を伸ばしたが、それも2年目となって、さすがに売上の伸びが鈍化傾向を示すようになってきた。

 まず昨年度(2020年4月〜2021年3月)の売上を確認しておくと、地方競馬全体の総売得額が9122億8711万460円で、前年比130.1%、1日平均の前年比が132.1%と、近年まれに見る伸びを見せた。

 そして今年度、すでに発表されている4〜6月の売上を見ると、総売得額の前年同期比が108.3%、1日平均が114.2%となっている。さらに月ごとに見てみると以下のとおり(左が総売得額、右が1日平均のそれぞれ前年同月比)。

 4月 111.1% 120.9%
 5月 107.7% 114.5%
 6月 106.4% 108.3%

 前年より売上が伸びてはいるが、伸び率は月を追うごとに鈍くなってきていることがわかる。1月後半から笠松競馬がストップしているぶん売上が伸びていないということもあるかもしれないし、総売得額よりも1日平均の増加割合が大きいのは笠松の開催がないためと思われる。

 昨年度のコロナ禍における売上の伸びでは、「2021年度には、地方競馬の売上がピークだった1991年度の9862億3944万9300円を超え、1兆円の大台に乗るかもしれない」と、さまざまなところで書いたり言ったりしてきた。しかしこの4〜6月の売上を見ていると、どうやらその雲行きが怪しくなってきたと言わざるを得ない。ピークを超えるには昨年度比で108.2%、1兆円に到達するには109.7%の伸びを記録する必要がある。

 新型コロナウイルスの感染は第5波といわれる状況で、緊急事態宣言が東京をはじめいくつかの府県に拡大され、まん延防止等重点措置の適用も延長された。ところが都内の状況で以前と異なるのは、居酒屋など酒類を提供する飲食店で普通に営業しているところが目立つようになったこと。第5波もいずれピークアウトし、秋以降に若い世代にまでワクチン接種も進めば、外食や観光、その他のレジャーが徐々にかつての日常に戻っていくことになる。そうしたときに、地方競馬のステイホーム需要が果たして減少に転じてしまうのかどうか。

 2012年度から続いてきた右肩上がりがどこかで頭打ちとなることは間違いないのだが、この3カ月の傾向を見ていると、今年度がピークになるのかもしれないし、このあと一気に減少に転じるようであれば、昨年度がピークだったという可能性もなくはない。

 ただ、この4〜6月の売上が鈍化傾向を示したのは、昨年4〜7月にかけてが驚くほどの上昇割合だったため、今年はそれが落ち着いただけとも考えられる。

 地方競馬はコロナ禍のステイホームで、YouTubeなどによるライブ配信が盛んに行われるようになり、売上増にはその効果もあったと思われる。いずれ近い将来、人々が普通に行動できるようになったときに、今度はいかなる方法でファンをひきつけておくのか、新たな展開を考えておく必要はありそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング