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ばんえい世代交代の旗手メムロボブサップ

  • 2021年08月17日(火) 18時00分

馬だけでなく騎手も世代交代が期待される


 15日に行われた、ばんえいグランプリ。第2障害を先頭で越えたメムロボブサップがそのまま後続を寄せ付けず、1番人気にこたえる勝利となった。

 ばんえい競馬では、長らく絶対王者として君臨してきたオレノココロ、それに同世代のライバル・コウシュハウンカイが、揃って昨シーズン限り(今年3月)で引退。平地も含む地方競馬の連勝記録を更新(31連勝)し、今年3月にはばんえい競馬の最高峰、ばんえい記念も制したホクショウマサルは、その後体調を崩し、今シーズンは復帰が叶わないまま6月に死んでしまった。

 それだけに今シーズンのばんえい競馬は、一気の世代交代でどの馬が台頭するかが注目となっている。残っているチャンピオン級は、現役で唯一ばんえい記念のタイトル(2019年)を持っているセンゴクエースだけといえる状況。センゴクエースは、父が3歳時の三冠馬にしてリーディング種牡馬のウンカイ、母が重賞13勝のサダエリコという良血。

 ばんえい競馬では、2歳シーズン、3歳シーズン、4歳シーズンにそれぞれ三冠があるが、その計九冠のうち八冠を制している(3歳一冠目のばんえい大賞典が競走除外)、ばんえい界のエリート。9歳の今年も7月の旭川記念を制し、重賞通算14勝は現役馬で最多。世代交代が期待される若い世代の馬たちにとっては、そのセンゴクエースが大きな目標となる。

 一方、メムロボブサップも2〜4歳シーズン計九冠のうち八冠を制している期待馬。逃した一冠は、2歳シーズン二冠目のヤングチャンピオンシップで、後で触れるアオノブラックの3着に敗れた。5歳の今シーズンは、いよいよ古馬重賞路線に本格参戦。ここまでの重賞では、ばんえい十勝オッズパーク杯2着、北斗賞3着、旭川記念2着と勝ちきれないでいたが、今回のばんえいグランプリで古馬重賞(年齢に上限の制限がない重賞)初制覇となった。

 メムロボブサップの近2走(旭川記念、とかち桂冠賞)は、ともに第2障害を先頭で越えたものの、うしろから来たセンゴクエースにゴール前で差し切られていた。しかし今回、前夜の雨でやや軽くなった馬場もあり、メムロボブサップは前半から先頭に立って早め早めにレースを進めた。

 センゴクエースを負かすには、第2障害を越えたところである程度差をつけておく必要がある。第2障害手前、メムロボブサップの阿部武臣騎手は、センゴクエースがまだ十分には息を入れられていないタイミングで仕掛け、単独先頭で障害をクリア。センゴクエースは障害を越えるのにほんの一瞬、苦戦したこともあり、メムロボブサップの雪辱となった。

 ちなみに今回、残念ながら5着に敗れてしまったアオノブラックだが、メムロボブサップと同じ5歳で、この世代の2強と言われる存在。

「夏負け気味」という情報が出ていたこともあって万全の状態ではなかったようで、それゆえあまり人気にもならなかった(5番人気)。そのアオノブラックは、4歳シーズンの三冠こそメムロボブサップ相手に4、2、2着と敗れていたが、今年2月にはチャンピオンC、さらに5月にはばんえい十勝オッズパーク杯を勝って、メムロボブサップよりも先に古馬重賞を制していた。

 サラブレッドに比べて成長がゆっくりなばん馬では、5歳はまだ若いと言われる年齢。先のオレノココロ、コウシュハウンカイも5歳ごろから2強と言われ、今年11歳で引退するまで長く一線級で活躍を続けた。同じようにメムロボブサップ、アオノブラックも同世代のライバルとして、向こう5年か6年、トップクラスでばんえい競馬を盛り上げていくことが期待される。

 そういう意味でも、今回メムロボブサップが1番人気にこたえて快勝したことは“あっぱれ”だった。

 さらにばんえい競馬では、騎手も世代交代が期待されるシーズンとなっている。

 近年は、鈴木恵介騎手(44歳)と阿部武臣騎手(49歳)がばんえいリーディングのトップツーで争い、昨シーズンは阿部騎手が初めて鈴木騎手の牙城を崩してトップに立った。

 しかし今シーズンここまで(8月16日現在)のばんえいリーディングでは、菊池一樹騎手(34歳)が54勝でトップに立っており、阿部騎手が52勝で2位だが、3位が渡来心路騎手(32歳)、4位が西将太騎手(32歳)、5位が島津新騎手(31歳)。トップ5のうち阿部騎手以外の4人は30歳代前半で、しかも通算1000勝に満たない若手が一気に台頭してきた。

 さらに昨年12月にデビューしたばかりで、すでに通算67勝(8月16日現在)を挙げている金田利貴騎手(23歳)の活躍も注目となっている。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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