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【坂井瑠星×飛田愛斗】JRAと地方競馬の垣根を越えた“若手ホープ”対談

  • 2021年08月29日(日) 18時01分
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▲今秋フランスの重賞に挑戦予定の坂井瑠星騎手 (C)netkeiba.com


Twitterにファンの方が投稿したある写真がきっかけの一つとなり、坂井瑠星騎手との対談を希望する地方競馬の新人騎手がnetkeibaTVに初登場です! 彼の名は飛田愛斗騎手、19歳。佐賀競馬所属で昨年10月にデビューすると、史上最速のデビューから268日で通算100勝を達成。重賞もすでに3勝を挙げ、今後さらなる活躍が期待される地方競馬のホープです。

そんな彼と、今秋、エントシャイデンとのコンビでフランスの重賞に挑戦予定の坂井騎手によるJRAと地方競馬の垣根を越えた対談が実現。小学生の頃から木馬に乗って騎乗フォームを磨いていたという坂井騎手が飛田騎手の質問に答えたり、「レース後に焼肉を食べるのはジョッキーあるある!」と意気投合。netkeibaTVで公開中の真面目な話から、YouTubeでの番外編トークまで、ダイジェスト版でご紹介します。

(取材・構成=大恵陽子)


勝ちすぎていて、怖いんじゃない?


坂井 みなさん、こんにちは。JRA騎手の坂井瑠星です。今回は、ある若手ジョッキーが僕と対談したいということで、今回ここに呼ばれたんですけど…

飛田 こんにちは! 佐賀競馬場所属の飛田愛斗です。よろしくお願いします。

――坂井騎手は飛田騎手のことをご存知ですか?

坂井 もちろんです。3月にドバイに行った時に、周りの方が「すごいジョッキーが現れた」と話していたのですぐに動画をチェックして成績を調べたら、「ホントにこんな子がいるんだ!」と知りました。

――飛田騎手は、坂井騎手とお話してみたいと思った理由は?

飛田 JRAの名門・矢作芳人厩舎に所属されていて、海外でもレースに乗ったり、いろいろな重賞にも騎乗されていて、僕もこういう騎手になりたいなと思っていたからです。

坂井 ありがとうございます。成績的にはまだまだですけど、海外に行ったりしているのを見てくれていて、自分もそうしたいなって思ってくれるのはすごく嬉しいですし、あとに続いてほしいなと思います。

――飛田騎手は今年6月27日に史上最速で通算100勝を達成しました。吉原寛人騎手(金沢)や御神本訓史騎手(大井)の記録を超えて歴史に名を刻んだわけですが、そのお気持ちはどうですか?

飛田 最速で100勝をさせていただいたのは関係者のみなさまのおかげですし、馬主さんをはじめ調教師の先生のバックアップや、厩務員さんのおかげでこうやって勝つことができました。一番は馬のおかげで、強い馬から勝ち方を教えてもらってこうやって勝つことができていると思います。

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▲▼6月に史上最速で通算100勝を達成した飛田騎手 (提供:佐賀競馬)


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坂井 僕も新人の時は自分で勝たせたっていうより馬に勝たせてもらったというレースが多かったです。いい馬に乗って勝って、また新たにいい馬の依頼が来て、という循環になると思います。飛田君はまだ2年目ですよね?

飛田 まだ1年目です。

坂井 僕は海外に1年間行っていたのもあるんですけど、100勝したのは4年目だったので、1年目でというのは考えられないですよね。

飛田 いえいえ、中央と地方で全然違うので。

坂井 勝ちすぎていて、ちょっと怖いんじゃないかなと思います。

 僕の場合は全然勝てていなくて、デビューしてすぐに怪我もしました。それが今となっては逆に良かったのかな、と思います。あんまり勝ちすぎると、「自分は上手いんじゃないか」と錯覚したり、調子に乗ってしまいがちだと思うんです。でも、いま話した感じだと、飛田君は謙虚な姿勢だなと思います。

飛田 100勝を最速でさせてもらったんですけど、減量がどんどんなくなっていくにつれて乗り方も少しずつ変えないといけないし、みんなからマークされるし、少し大変な部分もありました。

なんで愛斗君がそれを知っているか、怖い(笑)


――お二人は「若手ホープ」という共通点がありますが、騎手になったきっかけは何ですか?

坂井 小さい頃から父(坂井英光調教師)が大井で騎手をやっていて、幼稚園の頃からずっと騎手を目指していました。小学生の時は父の騎乗馬を新聞でチェックするのが毎朝の日課で、南関東の馬は全部知っているくらい詳しかったです。

飛田 僕は競馬とは無縁の家庭だったんですけど、体が小っちゃくて、父と佐賀競馬場に来た時に、「騎手は体が小さいし、なってみないか?」と言われました。親戚のおっちゃんが競馬場の近くで居酒屋をしていて、そこに佐賀競馬の調教師や騎手の方が来られていた繋がりでいま所属している厩舎の先生(三小田幸人調教師)を紹介していただき、地方競馬教養センターに入りました。なので、中央競馬と地方競馬が分かれているって知らなかったし、ディープインパクトも知らなかったです。

――ジョッキーはアスリートでもありますが、トレーニングなどは何をしていますか?

飛田 毎日10kmくらい、厩舎実習の頃から走っていました。だんだんとクセになっちゃって、雨でも競馬場近くの川沿いを厚着して走っています。

坂井 木馬は絶対に乗っています。小学生の時からで、父が木馬を持っていたので、小学校の帰り道に寄って一緒に練習に付き合って教えてもらう、というのが習慣でした。今でも乗らないと落ち着かなくて、競馬の前も必ず乗ります。

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▲木馬に乗るのは小学生の時からの習慣 (C)netkeiba.com


飛田 小学生の頃から乗られていたんですか?

坂井 そう、「毎日乗れ」って言われて。最初はやらされていたけど、途中から「ジョッキーになるんだ」って思っていたから。

飛田 瑠星さんに質問があるんですけど、レース前に一人で馬場をチェックしに行っているじゃないですか。それって毎回どこの競馬場でもされているんですか?

坂井 そうね。やるようになったきっかけが、オーストラリアに1年間行かせてもらった時に、どのジョッキーも馬場を歩いて芝のコンディションをチェックしていたからなんです。自分もやってみたらそれが習慣になって、馬に乗ってから見るのも大事だけど、実際に自分で見て「思ったより内がいいな」とか感じるのは大事かなって。でも、愛斗君がなんでそれを知っているか、ちょっと怖かった(笑)。

飛田 Twitterに瑠星さんが一人で馬場を歩いている写真をファンの方が投稿していて、「すっげーな」と思って見ていました。

坂井 すごくはないけど、負けた時に「実際はこうだった」と、あとから思うのは嫌だし、少しでも後悔のないように準備は必要だと思います。

飛田 僕も何回かマネさせていただいたんですけど、あんまり分からなかったです。調教中に判断するので、レースの前にもう1回チェックするということはないです。

坂井 そこが中央と違うところで、普段攻め馬をしているところで競馬ってなると、朝乗って分かると思います。

自分のレベルの低さを早く痛感したい!


――オーストラリアへ1年間の遠征がきっかけで坂井騎手は新たな習慣ができたとのことですが、坂井騎手はほかにもアメリカ、香港、イギリス、サウジアラビア、ドバイにも行き様々な経験を積んできました。それがこの秋のフランス重賞騎乗に繋がったと思うんですが、坂井騎手にとって海外に行くことの意味は何ですか?

坂井 技術の向上です。昔から海外に興味があって、競馬学校生の時からずっと準備をしていました。矢作先生から「人と違うことをしなさい。人と同じことをしても上にはいけないから」という言葉も原動力になりました。海外に行くとモチベーションが上がるので、それが一番かもしれないです。

飛田 僕も海外に行ってみたいです。佐賀だけじゃなくて、いろんな競馬場に行ってみて、自分のレベルの低さを早く痛感したいです。でも先生からは「早く自分のレベルの低さを感じてほしいけど、まだ行くレベルではない」って言われます。

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▲飛田騎手「僕も海外に行ってみたいです」(提供:佐賀競馬)


坂井 海外に行くなら、早い方がいいんじゃないですかね。僕も2年目の秋に行かせてもらいました。ある程度の技術や知識がないと何もできないだろうから、それが固まってから、望むのなら行った方がいいかなと思います。愛斗君は海外に行けるなら、どこに行きたい?

飛田 あんまり分からなくて、どこがいいですか?

坂井 うーん、競馬の数を乗りたいならオーストラリアだし、スピード競馬を見たいならアメリカだろうし、自分が何をしたいかによって行く国を決めたらいいと思うよ。ちょっとでも力になれるなら、相談してくれれば紹介できる人もいます。あ、でも英語は絶対に喋れないとダメだよ。英語はできる?

飛田 英語は、王道のHelloは言えるんですけど、細かいことは言えないです。

坂井 勉強してから連絡してきてください(笑)。

――語学ができないことでの苦労もあるでしょうからね。さて、飛田騎手の所属する佐賀では9月1日にサマーチャンピオン(JpnIII)が行われます。飛田騎手はまだ騎乗するか分からないとのことですが、注目レースを控える佐賀競馬のPRをお願いします。

飛田 佐賀競馬も全国の競馬場に負けないように売り上げを伸ばして、これから僕たちが佐賀競馬を背負っていけるようにがんばっていきます。

――最後に、どんな騎手になりたいか教えてください。

坂井 まだまだ未熟なので、もっともっと上手くなってたくさん勝って、中央でGIを勝ちたいです。これから海外遠征もあるので、なんとかいい結果を出したいなと思います。将来的にはリーディングジョッキーという立場になりたいですし、その時は佐賀のリーディングになった飛田君とどこかでまたお会いできたらなって思います。

飛田 まずは地方を代表するようなジョッキーになって、いろんな地方競馬場の重賞に呼んでいただいてそこで結果を出せるようになりたいです。これからさらにレベルを上げていかないといけないので、もっともっと勉強してがんばって、いずれは瑠星さんみたいに高い舞台で一緒に戦わせてもらえるようにがんばります。

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▲これからのお二人の活躍に期待大です! (提供:佐賀競馬)


(文中敬称略)

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