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JRA史上最多の登録馬 馬房削減と裏腹に…

  • 2021年08月30日(月) 18時01分
教えてノモケン

▲今年の中央の夏季競馬も残り1週に… (撮影:下野雄規)


 8月末を迎え、中央の夏季競馬も1週を残すだけとなった。夏季競馬はまだ勝ち星のない3歳馬にとっては「審判の季節」である。以前は9-10月の開催にも3歳未勝利戦が組まれていたが、賞金を削減して実施した「限定未勝利」の時期を経て、2019年からは完全に廃止され、夏季競馬がラストチャンスとなった。

 秋季以降は、勝てないまま残っても、首都圏、近畿圏の4場で出走できなくなるなどの制限を受け、残る場合でも1勝クラスに編成され、フルゲートに空きがないと出走できない。そのため、勝てなかった馬の大半は地方転出や乗馬転用などの形で中央を去る。

 JRAが近年、未勝利戦の編成終了を早めているのは、秋季競馬の高額条件戦が空洞化するのを避けるためだ。3歳未勝利戦編成の終わりが近づくと、各厩舎は「とにかく1勝を」と、未勝利馬に馬房を優先的に割り当てる。時間的余裕のある上級条件馬は、秋に入ってからゆっくり始動することになり、結果的に9-10月は2勝クラス以上で、ダート短距離以外は少頭数戦が目立つことになる。

年末には9000頭突破も


 こうした不均衡の根本には、「登録過多」がある。JRAは年間開催日数が288日、1日のレース数が12という上限があり、年間で最大3456競走しか施行できない。美浦、栗東両トレセンの貸与馬房数も、もとはといえば3456競走で平均12頭程度が出走することを想定して設定されたという。

 ところが、実際には1980年代末のバブル経済が誘発した競走馬の生産頭数増加によって、JRAの想定よりはるかに多くの馬が集まった結果、様々な問題が起きてきた。バブルが本格化した87年、登録頭数は史上初めて6000頭を超え、90年代後半は6500頭前後で落ち着いていたが、2000年以降、地方競馬の廃止ドミノが始まると、行き場を失った低資質馬が中央に集まり、09年には8000頭を超えた。

 このレベルでも不均衡はかなり深刻で、JRAも後述の通り様々な手を打ったのだが、昨年末の時点では登録数が実に8911に膨らみ、今年は9000の大台を超える可能性がある。バブル当初との比較で5割近く増えており、焼け石に水だった。

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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