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「繁殖牝馬から乗馬へ」“帝王”の血を受け継ぐ産駒を支援 トウカイテイオー産駒の会(1)

  • 2021年08月31日(火) 18時00分
第二のストーリー

トウカイテイオー産駒で、乗馬として活躍するリラン(提供:櫻井克真さん・テイオー会@あかぎ団)


乗馬としての評価が高いトウカイテイオー産駒


 トウカイテイオーが天に召されたのは、2013年8月30日。突然の死に、テイオーファンのみならず競馬ファンに衝撃が走った。あれから8年の歳月が流れた。気高く美しく強かったテイオーを愛する人たちの中で、彼は永遠に生き続けている。そして彼の子供たちが、それぞれの道を歩んでいた。

 リラン(乗馬名・牝11)という馬がいる。彼女は現在、群馬県の赤城乗馬クラブで乗馬として活躍している。競走馬名はダッキ(以下リランと表記)。2010年3月29日生まれで、母キクノジョリーでその父がジョリーズヘイローという血統だ。競走馬時代は2012年10月から2016年4月まで大井、園田競馬場で走って通算47戦7勝の成績を収め、引退後は北海道新冠町の牧場で繁殖入り。2頭の子供を競走馬として送り出している。

 その彼女が繁殖を引退することとなり、トウカイテイオーの血を受け継ぐ産駒たちのセカンドキャリア、サードキャリアを支援する団体「トウカイテイオー産駒の会」が引き取り、乗馬として再スタートを切ることとなった。

「競走馬時代から応援にも行っていましたが、当時はここまで縁ができるとは想像はしていませんでした」

 と、会の代表である早川さんは話す。繁殖に上がる馬はかなりの数にのぼり、そのすべての馬たちを最後まで追うのは難しいからだ。リランが繁殖入りした先が、早川さんの引退馬活動の原点ともなったテイオー産駒のマイネルソロモン(新馬からプリンシパルSまで3連勝で日本ダービーに出走)の生産牧場であった。早川さんはソロモンが繋いでくれた縁だと感じ、生産牧場と連絡を取るようになった。そして繁殖を引退する時は声をかけてほしいと伝え、牧場から連絡をもらったのが2019年春のことだった。まだ若いリランを、会では乗馬転用させることにした。

「ただ、繁殖から乗馬にするにはどうしたらいいのかわかりませんでした。お腹も出ていて繁殖体型になっていましたから、いきなり乗馬クラブというのも不安でしたので、リトレーニングをしてからと考えました。ひとまずは私たちが引き取り、時間がかかってもいいですからと伝えてリトレーニングをしてもらえる施設にお願いしました」

第二のストーリー

繁殖時代のリラン(提供:トウカイテイオー産駒の会)


 繁殖牝馬はほとんどが放牧生活のため、乗馬クラブとは日々の過ごし方がまるで違う。例えば繁殖牝馬が洗い場に繋がれたまま待つということは、まずない。だから繁殖生活をある程度の期間続けた馬は、洗い場で繋がれたり、大人しく1頭で待っているということができない馬もいて、まずはそれができるようになるのがリトレーニングの第一歩でもあった。

 リランもその段階からスタートして、およそ1年間乗馬になるためのトレーニングが続いた。

「調馬索や調教をしている姿を時々見せてもらっていましたし、預託していた施設からも、どこの乗馬クラブに行っても大丈夫というお墨付きが出ました」

 それでも早川さんは心配だった。

「元が繁殖牝馬でしたから、どうしてもこちらからアピールするのは不安がありました。それが、赤城乗馬クラブの方からリランもウチでどうでしょうか? と、お声がかかったんですよね」

 次回以降に詳細はお伝えするが、既に赤城乗馬クラブにいる2頭のテイオー産駒(ヤマニンバッスル、ゴールドショット)が、乗馬としての評価が高いというのがその理由だった。こうしてリランの行先は、会や早川さんの危惧をよそにあっさり決まった。

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赤城乗馬クラブ(提供:櫻井克真さん・テイオー会@あかぎ団)


 こうして赤城乗馬クラブに移動したリランは、すぐに乗馬で活躍できるという評価をもらった。

「その言葉を聞いて、ええ、そうなんだ! という驚きもありましたが、それまで経験ないことを急にやって、リランも1年間本当に大変だったと思うんですよね。1頭では洗い場にいられなかったところから、1つ1つ課題を克服してきたのですから、すごい頑張り屋なのだと思います」

 早川さんによるとリトレーニング中のリランは、どちらかというと愛想の良いタイプではなかったとのことだ。

「リトレーニング期間中に会いに行っても、クールな感じで淡々とこなしていました。出産してお母さんになった経験があると、腹が据わっているという話を聞きますけど、子育てした分だけメンタル面では強くなっているらしいですね。いざ乗馬クラブの環境に慣れたら、周囲に溶け込むのは早かったですし、自己主張もはっきりするようになりました(笑)」

 繁殖生活の名残で出ていたお腹もスッキリして、すっかり乗馬体型になったリランは、普段はレッスンや外乗をこなしている。60cmクラスの障害も飛越できるようになり、競技に出場できるレベルにも達した。だが昨年はコロナ禍の影響もあり中止になった大会も多く、まだ外部の試合には残念ながら出場はできてはいないものの、クラブ内で行われる競技会には出場しているという。

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クラブ内の競技会にて障害飛越するリラン(提供:櫻井克真さん・テイオー会@あかぎ団)


 実際のデータがないのではっきりしたことはわからないが、最近では繁殖牝馬から乗馬転用は珍しくないそうだ。あまり高齢になってからだと難しいだろうが、若くして繁殖を引退した馬なら、乗馬になる可能性があるということをリランは示してくれた。リランが在籍する赤城乗馬クラブでは、乗馬の繁殖も手掛け、仔馬を出産した競技馬が子育て後に再び乗馬として活躍している。その経験がリランの受入れにもプラスに働いたのかもしれない。

 ともあれリランは、無事乗馬としての道が開けた。

「本当に安心しました」

 早川さんが心底ほっとしているのが電話口からも伝わってきた。乗馬3年目のリラン。まだ新たな馬生は始まったばかりだ。

(つづく)



※新型コロナの感染拡大防止のため、赤城乗馬クラブへのご来場は、必ず事前にお問合せいただきますようお願い致します。

▽ トウカイテイオー産駒の会 HP
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北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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