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【新潟記念】ステイゴールドの血がフルに爆発したレース

  • 2021年09月06日(月) 18時00分

大きく明暗を分けた枠順と直線でのコース取りの差


重賞レース回顧

半妹ユーバーレーベンと同じようなレース運びで快勝したマイネルファンロン(C)netkeiba.com、撮影:橋本健


 例年以上に難しいハンデ戦だった。タイムは「60秒0-58秒4」=1分58秒4(レース上がり34秒4)。前半のペースは最近10年の平均とほぼ同じで、新潟の外回りらしい流れだったため、直線に向いて残り400mあたりで、珍しくほとんど横一線に並んだような場面があった。

 まるで直線1000mの攻防のような形になったため、枠順も大きく関係し、結果的に最後の直線コースでの内、外の差が大きく明暗を分けた。

 勝ったマイネルファンロン(父ステイゴールド)は人気薄の気楽な立場もあったが、前半はタメにタメ、直線は大外へ…。これには伏線があった。芝の発表は良馬場でも、馬場の内寄りはかなりタフな芝。M.デムーロ騎手は午前中の4Rで、伏兵ボーンジーニアス(父ナカヤマフェスタ、その父ステイゴールド)で、大外一気を決めている。2着マイネルグロンだけでなく、3着ブルーローズシップも、4着レキオノユメも、そろってステイゴールド系ゴールドシップ産駒だった。開催の最終日で完全な良馬場でもない。例によってステイゴールドの血がフルに爆発するコンディションを示していた。

 レースの後、マイネルファンロンが、同じように前半控えに控え大外からオークスで差し切ったユーバーレーベン(父ゴールドシップ)の、4分の3同血の兄とは「知らなかった」と笑ったというが、同じ手塚厩舎の所属馬で、同じ勝負服。騎乗依頼を受けたテン乗りの馬。デムーロ騎手がなにも知らなかったはずはない。少なくとも同じような気の強さを前面に出してしまう難しい馬と察知していたのは確かで、同じような血統背景の馬だと知っていたはずだ。ユーバーレーベンとほとんど同じようなレース運びで快勝に結びつけてみせた。心持ちタフな馬場は、ステイゴールド系産駒にピッタリだった。

 M.デムーロ騎手はこれで新潟記念【2-3-0-1】。最終世代の6歳の産駒マイネルファンロンが12番人気で勝ったステイゴールドは、2008年に2年目の産駒アルコセニョーラが16番人気で勝ったのに続き新潟記念2勝目となった。

 2着トーセンスーリヤ(父ローエングリン)は、もう完全に本物になっている。新潟記念が左の外回りの2000mになって今年で21回目。ハンデ57.5キロ以上の馬は、今年2着のトーセンスーリヤを加えて通算【1-2-2-27】。大苦戦を続ける記録があるだけに、負けたとはいえ、この2着は大きな価値がある。中団の外につけ、昨年勝った新潟大賞典とも、圧勝した前走の函館記念ともまったく異なるレース運びで、外に回りながら自己最高の1分58秒5を負担重量57.5キロで記録したのは立派だった。

 素晴らしいデキに映った同じ57.5キロのザダル(父トーセンラー)は、予測以上に上がりの速いレースでハンデが堪えたと同時に、内枠の馬が全滅(上位6着まで馬番は2ケタ)の馬場コンディションも味方しなかった。直線1000mのレースと同じで、内を通った馬は1頭も上位に食い込めていない。まだ5歳。レースキャリアも浅く、東京で見直したい。他の内枠の馬もみんな芝コンディションの差が痛かった。

 クラヴェル(父エピファネイア)は、52キロを生かし、うまく外に回って力は出し切った印象がある。最後まで脚さばきが鈍ったところはなく、この差は1-2着馬とのキャリアの差だけだった。最近10年ばかり牝馬の台頭は少なかったが、「夏の牝馬」の金言は、かつて新潟記念で毎年のように牝馬が快走したから生まれた格言であり、惜しい3着にとどまったが、来年以降も牝馬に注目する手法は間違いではない。ましていま、明らかに牝馬の時代でもある。

 4着ヤシャマル(父キズナ)は、5着ラインベック(父ディープインパクト)とともに非常に惜しかった。外にカベができてしまったため、2頭は上位3頭のように直線で馬場の外側には出せず、なおかつ、他馬と馬体が離れる形になってしまった。追い通しで伸びたヤシャマルも、最後は内にヨレ気味になってしまったラインベックも4歳馬。これからまだパワーアップが期待できる。3-5着だった4歳馬は、1-2着した歴戦のベテラン6歳馬2頭にしたたかなレース運びの経験の差で見劣ったかもしれない。

 内の3枠の2頭の牝馬リアアメリア(父ディープインパクト)、パルティアーモ(父ワークフォース)は巧みに早めに好位の外に回ったが、今回は長い直線の攻防でちょっとパンチ不足だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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