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「また奇跡を起こしてくれると信じて…」何度も苦難を乗り越えたゴールドショット トウカイテイオー産駒の会(2)

  • 2021年09月07日(火) 18時00分
第二のストーリー

ヤマニンバッスル(右)のことが大好きなゴールドショット(左) (提供:櫻井克真さん・テイオー会@あかぎ団)


「テイオーの子だからきっと乗り越えてくれる」


 前回登場したトウカイテイオーの娘で、繁殖から乗馬へと転身したリラン。彼女が乗馬としての1年間のリトレーニングを終えたのち、群馬県の赤城乗馬クラブに決まったのには、理由があった。それは同じトウカイテイオー産駒のヤマニンバッスルとゴールドショットが、既に赤城乗馬クラブで乗馬として活躍していたからだった。

 この2頭も、トウカイテイオー産駒の会が見守り支援してきた馬だ。ヤマニンバッスルは美しい流星と鹿毛の馬体の雰囲気が父によく似ており、以前いた乗馬クラブ時代から乗馬として評価の高い馬であった。2017年12月に赤城乗馬クラブに移動したのちも、乗馬としての素質を認められ、競技会にすぐに出られるレベルに達してもいた。それがクラブ側のトウカイテイオー産駒の高評価へと繋がり、バッスルの移動からおよそ半年後にゴールドショットの受け入れが決定した。

第二のストーリー

馬術は万能型のヤマニンバッスル(提供:櫻井克真さん・テイオー会@あかぎ団)


 レース中の骨折が原因で引退したゴールドショットは、脚部不安が続いたために競走馬時代の馬主と会が協力して療養させて、2年後にはウォーキングマシン運動が日課になるまでに回復し、すっかり元気を取り戻していた。

「養老馬になるにはまだ若いですし、乗馬になってくれればと思いましたが、不安もありました。会の会員さんも、バッスルと一緒なら乗馬に挑戦してもいいのではないかという意見でしたが、こちらが想像していた以上に才能があって、乗馬クラブではすごく期待されて障害もすぐに飛べるようになりました」

 会としては、ヤマニンバッスルと同じ場所でゴールドショットを見守ることができるのも嬉しいことであった。

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部内競技会でお洒落したゴールドショット(提供:櫻井克真さん・テイオー会@あかぎ団)


「ゴールドショットも次の競技会に出られますからと言われて楽しみにしていたのですが、その矢先に、放牧中何かに驚いて柵を飛び越え外乗コースまで逃走してしまいました」

 何とか捕まえたものの、跛行と肩の脱臼が見られたために獣医の診察を受けて、長期間の療養に入ることになった。乗馬としての素質を買われ、競技会出場を楽しみにしていただけに、クラブ側、そして会や早川さんのショックは大きかった。

「当初は厩舎から放牧地まで歩いていくのも大変なくらいで、もちろん人を乗せることもしばらくできませんでした。幸い骨には異常はなかったので、回復に向けての治療をしていただきましたが、かなりの重傷でもう天にすがるしかないという状況でした」

 乗馬として再起できるかどうかわからない中で、早川さんは何度も不安な気持ちになることもあったが、希望は捨てなかった。

「乗馬挑戦を後押ししてくれた会員さんから、テイオーの子だからきっと乗り越えてくれると励まされたことで、気持ちを強く持ち続けられました。ゴールドショットは競走馬時代も長期休養から立ち直って連勝し、父テイオーのような復活を果たしたこともありましたし、また奇跡を起こしてくれることを信じてひたすら祈り続けました」

心の支えとなったバッスルの存在


 ゴールドショットの怪我は、徐々に徐々に回復していった。その助けになったのが、治療薬の投与とクラブの皆さんの手厚いケア、そしてヤマニンバッスルの存在だった。

「最初は個別のパドックに放牧されていたのですけど、ゴールドショットが怪我をした後から、ヤマニンバッスルや仲間たちと放牧されるようになりました。ゴールドショットはきついタイプではなくて、人にも馬にも優しいタイプのようで、いつもバッスルを頼りにしたみたいです。この2頭がなぜ仲良くなったのか、父が助け船を出してくれたのか、馬に聞かないと理由はわからないですけど、とにかくゴールドショットがバッスルを慕ってついて歩いて、バッスルに守ってもらっていた感じはありますね」

 早川さんによると、ゴールドショットは一時期内向的になっていて、人間が来るとバッスルの後ろに隠れるなど怖がりな面を見せていた。それがバッスルといることで、精神的な安定を得られたのかもしれなかった。

「何頭かと放牧されているのですが、仲良くするのはバッスルだけみたいです。いつ見ても一緒にいますし、本当にバッスルのことが好きなんだなと思いました。バッスルに支えられるようにして、だんだん活発になり、元気になっていったように思います」

第二のストーリー

放牧地ではいつも一緒の流星きょうだい(提供:櫻井克真さん・テイオー会@あかぎ団)


 同じトウカイテイオーの血を引くもの同士、惹かれあうものがあったのだろうし、そっくりな流星を持つ2頭は「流星きょうだい」とクラブでも親しまれているという。ともあれ、ゴールドショットはバッスルがいたことで、心身ともに良いリハビリになったのは間違いない。

 こうして半年以上の療養をしたゴールドショットは、再びレッスンに出られるようになるまで回復を果たしたのだった。

(つづく)



※新型コロナの感染拡大防止のため、赤城乗馬クラブへのご来場は、必ず事前にお問合せいただきますようお願い致します。

▽ トウカイテイオー産駒の会 HP
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登録済

北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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