ゴール寸前は追い詰められて危ないクビ差だったのも事実…

　スプリンターズSに強く関連するGIIらしく、人気馬が上位を独占する形になり、勝ったのは圧倒的な支持を受けた4歳牝馬レシステンシア(父ダイワメジャー)だった。

　これでGI、あるいはGII勝ちの実績を持つ馬がセントウルSで1番人気になると、今年を含め最近10年【5-2-0-0】となった。

　ただ、そのセントウルSの連対馬が本番のスプリンターズSでどうかとなると、昨年までの6頭の成績は【3-1-0-2】にとどまる。本番の勝率は50パーセント。両レースの結びつきは非常に強いが、さすがに直結とまではいかない。

　好スタートのレシステンシア(ルメール騎手)は、ハナを主張したシャンデリアムーンに先頭は譲ったが、直線は残り300m付近で先頭に立ち、実質は逃げ切りにも近い先行押し切りのレースで、自身の中身は「前半33秒2-後半34秒0(最終1ハロン12秒3)」＝1分07秒2だった。

　昨年の勝ち馬で、今春の高松宮記念でレシステンシアを封じているダノンスマッシュの昨年のセントウルS(中京)の中身は「33秒8-34秒1(最終1ハロン11秒9)」＝1分07秒9だった。馬場差は別に、レシステンシアの内容は十分過ぎるほど満足のいくものだが、ゴール寸前は追い詰められて危ないクビ差だったのも事実。

　速いペースを積極的に勝ちに出たのだから、最後の1ハロン12秒3は納得だが、ゴール寸前の激しい追い比べの高松宮記念でダノンスマッシュにクビ差競り負けたシーンを今回に重ね合わせると、スプリンターズSに直行予定のダノンスマッシュと互角のスプリント能力を秘めるが、スパートのタイミングが難しい馬かもしれない。

　次もルメール騎手が続けて騎乗となったら、きびしい前傾バランスが珍しくない中山1200mでも、一段のパワーアップを信じて同じような強気な戦法に出るのだろうか。レシステンシアは中山初コース。途中で少し控えるかも…な気がする。

　2着に猛追したピクシーナイト(父モーリス)は、自身の中身「33秒9-33秒3」＝1分07秒2。最終1ハロンは推定11秒8だった。レシステンシアが1200mに出走2戦目なら、ピクシーナイトも今回が1200mに挑戦は2戦目だから価値がある。前回のCBC賞(小倉1200m)を2着の1分06秒1は、前日の2勝クラスで1分06秒4、当日の3歳未勝利戦で1分07秒1が記録された特殊なコンディションなので評価が難しかったが、今回も当時と同じ後半3ハロン33秒3で伸び、レシステンシアとはクビ差。前回の快走は馬場コンディションによるものではなく、秘める高いスプリント能力発揮だった。

　母の父キングヘイローは高松宮記念勝ち馬。祖母の父サクラバクシンオーはスプリンターズS2勝馬。近年の活躍馬には珍しくないが、ノーザンダンサーの「6×6×5×6×5×6」。まだキャリアは浅い。レシステンシアと同じく中山は初コースになるが、次走スプリンターズSに出走なら最有力馬の1頭になる。

　3着クリノガウディー(父スクリーンヒーロー)は、これで中京コース【2-1-1-4】。今回はきわめてスムーズに追走できた。残り1ハロンでは、5着カレンモエ(父ロードカナロア)とともに勝ち負けかと映ったが、追い比べになってもう一歩。早めに動く正攻法になると鋭さもう一歩になるのか。着差はわずかでも1-2着馬には力負けの印象が残った。

　カレンモエはオープンに出世して1200m重賞で「2、2、2、5」着。秘めるスプリント能力は素晴らしいが、GIIではパンチ力がもう一歩だった。

　4着ジャンダルム(父Kitten's Joyキトゥンズジョイ)は、スタートでつまずくように出負けしてしまった。直線だけで追い込んで勝ち馬と0秒2差。アンバランスな前後半は「34秒8-32秒6」＝1分07秒4。上がり最速だけにかなり残念なレースだった。

　同じくスタートに失敗して置かれすぎ、後半32秒7で伸びたタイセイビジョン(父タートルボウル)も、不利があった前走で1分06秒3を記録した力を出し切れなかった。

　GI馬ラウダシオン(父リアルインパクト)は、人気馬が上位を独占した中で、ただ1頭だけ凡走となったが、体調の問題ではなく、今回の1分08秒2は自己最高であり、本質は1200m向きのスプリンターではないのだろう。1400-1600mで見直したい。