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【紫苑S】「後手に回るところが一切なかった」福永祐一騎手の“理に適っている”乗り方

  • 2021年09月14日(火) 18時00分
哲三の眼

紫苑ステークスは2番人気だったファインルージュが勝利 (撮影:小金井邦祥)


秋華賞トライアルとなる紫苑ステークスを制したのは2番人気のファインルージュ、鞍上は福永祐一騎手でした。レースを振り返り「内容も、次に繋がるという意味でも、本当にいい前哨戦の勝利」と絶賛した哲三氏、今回はスピードに乗りやすい馬場での競馬について解説します。

(構成=赤見千尋)

次走・秋華賞に繋がる勝利


 先週の土曜日に中山競馬場で行われた紫苑ステークスは、2番人気だったファインルージュが勝ちました。鞍上の(福永)祐一君は抜群に巧かったですね。

 ファインルージュは1600mの桜花賞でいいポジションから3着に入り、2400mのオークスではちょっと揉まれる感じでタイム的にはそれほど大きく負けているわけではないのですが、11着という結果でした。今回はそこからの秋初戦のトライアルで、まず距離2000mでの結果の出し方がさすがだなと。

 スピードに乗りやすい今の中山競馬場の芝で、スタートをしてまずはしっかりとスピードに乗せて行きました。距離を考えて折り合い重視という部分に重きを置くと、スタートしてすぐに下げるという選択肢もあるかと思います。でも僕の考えでは、スピードに乗りやすい馬場でいったんスピードを殺してしまうと、そこからまたスピードに乗せるためにはロスが生まれると思っていて。今回の祐一君のように、スタートしてスピードに乗せ、ある程度スピードに乗ったところから抑えにかかるというのはとても理に適っている乗り方だと思います。

 中山のスピードの馬場に対して、先手を打っていくような競馬をしたわけではないけれど、後手に回るところが一切なかった。オークスでの負けを考えると、2000mに挑むにあたって折り合い面に気を使う部分はあったと思いますが、折り合いを付けるためにポジションを落とそうとせず、自然な形でコーナーに入っていけたというところが巧いと感じました。

哲三の眼

「自然な形でコーナーに入っていけたというところが巧い」と哲三氏 (撮影:小金井邦祥)


 位置取りとしても、まったく揉まれずに1コーナーに進入出来て、馬にとって走りやすいと思いますし、さらに向正面も揉まれないところに居て、後ろからマクッてくるような馬もいない。この時点である程度勝ちは見えていたのではないかと。

 そこから早めに外に出したのもさすがでしたね。この勝ち方は、次走、今年は阪神の2000mで行われる秋華賞に繋がっていくと。阪神2000mは内々を捌ければ一番いいと思いますが、必ずしもそういう形になるとは限りません。今回のような形で強い競馬をしていれば、次走で同じような場面になっても、ある程度強気な競馬で運んでも対応出来るという手ごたえを掴んだのではないでしょうか。自分自身でもイメージがしやすく、陣営にとっても同じイメージを持って行きやすいと思います。レース内容も、次に繋がるという意味でも、本当にいい前哨戦の勝利でした。

 フランスのパリロンシャン競馬場で行われたフォワ賞では、ディープボンドが逃げ切り勝ちを収めました。これまでハナを切る競馬というのはなかなか無かったですから、見ていてとても面白かったです。クリスチャン・デムーロ騎手の馬の動かし方は、戦術を含めてさすがだなと。和田(竜二)君の乗り方も好きですし、こういう乗り方も面白い。凱旋門賞ではどんな競馬を見せてくれるか楽しみです。

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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