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能力拮抗ハイペースが結果を左右したダービーグランプリ

  • 2021年10月05日(火) 18時00分

他地区枠、フルゲート、1着賞金…増やした主催者に“あっぱれ”


 10月3日に盛岡競馬場で行われたダービーグランプリは見ごたえのあるレースとなった。

 今年はフルゲートを16頭に拡大し(出走は14頭)、他地区枠を10頭にまで増やした主催者は、まず“あっぱれ”だった。交流レースでは地元枠をある程度確保することもめずらしくないが、全国からレベルの高いメンバーを集めようとすれば、やはりそうすべきだろう。

 さらに1着賞金が昨年の1500万円から2000万円に増額されたこともあり、南関東から大挙6頭が遠征。その中にはジャパンダートダービーを逃げ切ったキャッスルトップがいたことで、このレースの価値も高まることになった。そして南関東勢では6頭中5頭が戸塚記念から中1週とちょっと。南関東からその間隔で有力馬が複数頭揃って遠征というのはめずらしい。

 そのほか、北海道三冠馬ラッキードリーム、兵庫からは一冠目の菊水賞を制し、兵庫ダービーでハナ差2着だったシェナキング、金沢からサラブレッド大賞典を制したベニスビーチ、そして地元では不来方賞を大差で圧勝したマツリダスティール。まさにダービーグランプリというレース名にふさわしい面々が顔を揃えた。

 JpnIを勝ったキャッスルトップは逃げ馬の宿命とはいえ、今回も厳しいレースを強いられた。戸塚記念ではギャルダルにぴたりとマークされたが、今回は南関東牝馬二冠を逃げ切り、関東オークスでも2着だったケラススヴィア、さらに今回もギャルダルと、2頭にぴたりとマークされた。見た目には無理に競り合っているようには思えなかったが、映像で測った前半1000m通過が60秒8。勝ちタイムが2分6秒8だから、後半が66秒0で、前半が後半より5秒ほども速いという超ハイペース。それではさすがに前は厳しい。

 結果的に1、2着をクビ差で争ったのは、先行3頭のうしろ、2列目を追走していたギガキングとジョエル。ただその2頭には道中のコース取りで明暗があった。3コーナーあたりで先行勢の外に持ち出したギガキングに対して、ジョエルは内にいたため3〜4コーナーで勢いが鈍ったキャッスルトップ、ギャルダルが壁になって行き場をなくす場面があった。4コーナーから直線を向くところで、ジョエルはギガキングのさらに外まで持ち出して追い出すというロスがあった。展開のアヤといってしまえばそれまでだが、3コーナーで前の脚色は一杯と見て、スッと外に持ち出したギガキングの和田譲治騎手の一瞬の判断がひとつ勝因といえよう。

 戸塚記念ではゴール前、一瞬の脚を使って差し切ったセイカメテオポリスは、ギガキング、ジョエルからやや離れた位置での追走で、今回はその1、2着馬がレースの流れにうまくハマっての3着だった。

 南関東勢が上位3着までを独占し、戸塚記念5、3、1着馬で決着。先行して失速した3頭も含めて能力的にはほとんど差がないと思われる。とはいえ、キャッスルトップの直後でプレッシャーをかけていったケラススヴィアが最下位、ギャルダルが11着に沈んだのに対し、5着に踏ん張ったキャッスルトップは、あらためて能力の高さを示したともいえる。キャッスルトップはこの着順でまた人気を落とすようであれば、同型がいないメンバー構成となったときに狙いとなりそうだ。

 地元期待のマツリダスティールは13着。道中は1、2着馬とほぼ併走の2列目を追走したが、向正面で動き出すタイミングが早かった。大差で圧勝した不来方賞では前半1000m通過が64秒1というゆったりした流れだったのに対し、今回はそれよりはるかに速いペースで早めの仕掛けではいかにも厳しかった。

 ちなみに、上位人気が拮抗した中でも単勝1番人気に支持されたギャルダル、そして勝ったギガキングは、当初の登録では補欠からの繰り上がりでの出走だった。

 地方3歳馬の全国交流戦は、このあと11月2日に園田1400mの楠賞が行われる。楠賞はダービーグランプリよりひと足早く昨年から1着賞金が2000万円になっており、こちらには短距離志向の好メンバーが集うことになりそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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