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蛯名正義調教師「ありがとうね」 ――フェノーメノの種牡馬引退に寄せて

  • 2021年10月06日(水) 18時01分
ノンフィクションファイル

▲蛯名正義調教師がフェノーメノとともに戦った現役時代を振り返ります (C)netkeiba.com


史上3頭目となる天皇賞・春を連覇(2013年、14年)したフェノーメノが先日、種牡馬を引退しました。

確かな末脚で天皇賞・春を連覇時、手綱を取ったのは当時騎手だった蛯名正義調教師。日本ダービーでは差し脚を伸ばすも、ディープブリランテにハナ差届かず涙を飲んだこともありました。

種牡馬引退と騎手引退という、それぞれに新たな道を歩み始めたかつての名コンビの思い出を蛯名調教師に伺いました。

(取材・構成=大恵陽子)

※このインタビューはリモート取材で行いました

落ち着いていて、頼もしくて安心感のある馬


――2016年に種牡馬入りしたフェノーメノが今年、種牡馬を引退しました。その知らせを聞いた時の思いを教えてください。

蛯名正義調教師(以下、蛯名) 今年の夏くらいに生産者の追分ファームにお邪魔した時に、そんな話をチラッと聞いていて、非常に残念だなと思いました。

――改めて現役時代を振り返って、どんなことが思い浮かびますか?

蛯名 悔しい思い出と嬉しい思い出と、両方ありました。たくさんの時間を共有してきたので、いろいろ思い返されます。

――悔しい思い出というと、ハナ差2着だった日本ダービーでしょうか?

蛯名 そうですね。着差も着差でしたし、みなさんの応援もありました。ダービーというレースですから、非常に残念でした。

――その悔しさがありながらも、翌春には天皇賞・春を制覇されました。フェノーメノにとってはGI初制覇でしたね。

蛯名 距離の長いところも大丈夫だとずっと思っていました。この馬の力を見せることができたので、少しだけ“良かったな”という気持ちでした。

――いちファンとして、黒い馬体で差してくる姿がカッコいいなぁと思っていました。蛯名調教師はどういうところが一番好きでしたか?

蛯名 バタバタしないというか、落ち着いて走れる馬で、頼もしくて安心感がありました。

――だからこそ、3200mの天皇賞・春を連覇できたのでしょうか?

蛯名 そうですね。性格的にも穏やかなところがあったので、距離もこなせたんじゃないかなと思います。

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▲フェノーメノにとってはGI初制覇となった13年の天皇賞・春、翌年も勝ち連覇を達成 (C)netkeiba.com


――現在、3世代がデビューし、キタノオクトパスは昨年の大井・ジャパンダートダービー(JpnI)で3着。蛯名調教師が産駒にレースで騎乗することはありませんでしたが、産駒の走りを見てどんな印象を持ちましたか?

蛯名 ここのところ走る馬も出てきてはいるんですけど、最初のうちは期待したような成績が出ていなかったり、短い距離で勝つ馬が少なかったりして、種牡馬がたくさんいる今は厳しい時代なんだろうなと思っていました。

――種牡馬を引退し、故郷の追分ファームに帰ったフェノーメノにはどんな言葉をかけたいですか?

蛯名 「ありがとうね。ご苦労様」というのと、「これからはのんびりしてね」と言いたいです。

――蛯名調教師ご自身はあと半年ほどで厩舎開業となります。現在の状況を教えていただけますか?

蛯名 藤沢和雄厩舎で研修を続けています。馬房や厩舎スタッフなどは全く決まっていないので、いまできる準備は厩舎のロゴやカラーをどうしようかとか、そんなことくらいです。

――ちょこっとでいいので、どんなロゴやカラーになりそうか教えていただけませんか?

蛯名 まだまだ全然(苦笑)。いろんな方にお手伝いいただきながら練っている段階で、まだ話せるところまでいっていないです。

――開業時にどんなロゴになっているか見るのを楽しみに待っています。最後に、厩舎開業に向けての意気込みを聞かせてください。

蛯名 藤沢先生のところでいろいろと教えていただいたり、話を聞かせてもらってすごく勉強になっています。また、ジョッキーとしてもいろんな厩舎に関わらせていただいて、一部ながら見させてもらいました。そうしたいい部分をどんどん取り入れて、さらに自分が経験してきたものをミックスして、よりよいものにできればなと思っています。

(文中敬称略)

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