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僕がガッツポーズをしない理由──心に刻まれた「共感」と「反省」【In the brain】

  • 2021年10月21日(木) 18時03分
VOICE

▲ガッツポーズをしない…その背景にある思いに迫ります (撮影:桂伸也)


今週は、テーマを設けて川田騎手の脳内を紐解いていく「In the brain」です。今回は“ガッツポーズをしない”その理由について。最初のきっかけは、的場均元騎手(現調教師)からのある言葉でした。その後、キャプテントゥーレと制した皐月賞で起こった出来事がさらにその思いを強くさせたといいます。

そんな川田騎手が「しっかりガッツポーズをした自覚があるのは、自分の記憶のなかでは一度きり」と語るホワイトベッセルとのレース。当時の心境とともに振り返ります。

(取材・構成=不破由妃子)

「まさか骨折しているとは」デビュー4年目の出来事


「川田騎手がガッツポーズをしないのはなぜですか?」

 これまで度々そういった質問を受けてきました。最初に断っておきますが、僕のなかに「ガッツポーズはするべきではない」という発想はありません。デビュー前はもちろんですが、デビューして以降も、ゴール前でガッツポーズをしているジョッキーの姿を見て、素直に「かっこいいなぁ」と思う瞬間もあります。

 華やかなJRAの舞台に憧れていた少年時代はなおさらで、その姿は当時の僕にとってとても眩しいものでした。そんななか、どんなに大きな舞台であっても淡々とゴールを駆け抜けていたのが、現調教師である的場均騎手。強く印象に残っているのはグラスワンダーでの活躍で、淡々とトップでゴールを切る姿に「なぜガッツポーズをしないんだろう」という疑問を抱いていましたし、その姿にまた別のかっこよさを感じてもいました。

 競馬学校在学時のある日、そんな的場調教師が、講師としてきてくださる機会がありました。そこで僕は、「なぜガッツポーズをしないんですか?」と質問をさせていただいたんです。そこで的場調教師から返ってきたのは、「人は馬から下りれば、いくらでも喜ぶことができる。だから、わざわざ馬の上で喜ぶ必要はない」という言葉でした。

 その言葉は、僕の心に沁み入るように入ってきて、今でもずっと残っています。そこで得た共感が、僕が今に至る一番最初のきっかけですね。

 そしてデビュー4年目、的場調教師の「わざわざ馬の上で喜ぶ必要はない」という言葉を、身をもって痛感した出来事がありました。それは、キャプテントゥーレで勝利した皐月賞でのことです。

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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