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【チャンピオンズC AI予想】今週は見解が真っ二つ! AIが指名した伏兵は常識を覆せるか

  • 2021年11月29日(月) 18時00分

ジャパンCはコントレイルが有終の美を飾った(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

基本的には波乱含みの一戦だが…


AIマスターM(以下、M) 先週はジャパンCが行われ、単勝オッズ1.6倍(1番人気)のコントレイルが優勝を果たしました。

伊吹 素晴らしいパフォーマンスでしたね。上がり3ハロンタイムは33.7秒で、2位タイのグランドグローリーとユーバーレーベン(いずれも34.2秒)を大きく引き離しています。完璧なタイミングで抜け出したオーソリティの健闘もあり、見応えのある追い比べが直線半ばまで続いたものの、着差以上の完勝だったと言って良いのではないでしょうか。

M 無敗のまま3歳牡馬クラシック三冠を達成した昨年の菊花賞以来となる、およそ13か月ぶりの勝利です。

伊吹 まぁ、アーモンドアイに屈した昨年のジャパンCはともかく、今年に入ってからの2戦はいずれも降雨の影響がある馬場でしたからね。その2戦でも地力の高さは見せていましたし、乾いた馬場なら違った結果になっていたはず。今回は順当勝ちだと思います。

M コントレイルはこのレースがラストラン。来春からは種牡馬として供用される見込みです。

伊吹 ディープインパクトの後継種牡馬争いにおいては、もう今の時点で頭ひとつ抜けていますよね。ディープインパクト直仔の牡馬でJRAGIを4勝以上しているのはこの馬のみ。ちなみに、勝利数2位はフィエールマン(3勝)で、アルアイン・サトノダイヤモンド・ミッキーアイル・ワールドプレミア(各2勝)が3位タイです。さらに、産駒がJRAGIを勝っているディープインパクト直仔の種牡馬は、今のところキズナとリアルインパクトだけ。繁殖牝馬の血統や種付け料の予算にもよるとはいえ、当面はコントレイルがディープインパクト系種牡馬のファーストチョイスになるでしょう。

M 無事なら相当な成功を収めそうですね。

伊吹 おそらくそうなると思いますが、こればかりはやってみないとわかりません。私がそれなりに資金力のあるブリーダーなら「コントレイルは未知数だし、向こう数年は既に実績のあるキズナを重視しよう」みたいなことを考えるはず。また、ミッキーアイルやリアルインパクトといった、生まれてくる産駒の特徴がイメージしやすい種牡馬にもコントレイルとは違ったニーズがあります。まだまだ多くの候補に後継種牡馬の筆頭格となる可能性が残っているので、今後もじっくりと戦況を見守っていきたいです。

M ちなみに、3着はシャフリヤールでした。

伊吹 先週の当コラムでAiエスケープが注目馬に挙げていましたね。

M 単勝2番人気だったことを考えると、何とも言えない結果ですが……。

伊吹 いや、単勝4番人気以下の馬には先着を許していませんし、それなりに誇って良いと思いますよ。Aiエスケープが人気サイドの馬を推すということは、妙味ある伏兵が見当たらない、すなわち堅く収まる可能性が高いということなのでしょう。結果的に3連単の配当は1780円。妥当な見立てだったようです。

M 今週の日曜中京メインレースは、下半期の最強ダートホース決定戦と位置付けられているチャンピオンズC。昨年は単勝オッズ13.3倍(4番人気)のチュウワウィザードが優勝を果たしました。

伊吹 いま振り返ってみると、過小評価され過ぎだったように思います。この時点で2019年のJBCクラシックや2020年の川崎記念を勝っていたわけですし、2019年のチャンピオンズCも勝ったクリソベリルから0.3秒差の4着と、当時の展開を考えれば十分に高く評価できる内容。実際の勝ちっぷりも、まるで断然の人気を集めていたかのような横綱相撲でした。

M 3着に単勝オッズ57.5倍(10番人気)のインティが食い込んだこともあって、3連単20万6940円の高配当決着。堅く収まる年もある一方、波乱も十分に期待できるレースという印象があります。

伊吹 確かに、人気薄の馬が激走した例は少なくありません。ただ、上位人気馬もそれなりに安定しているんですよね。


M 単勝3番人気以内の支持を集めた馬は、半数以上が3着以内を確保していますね。

伊吹 波乱含みとはいえ、人気サイドの馬を中心に据えた買い目でも的中に近付くことができるはず。無理にスタンスを変えてまで超人気薄を狙う必要はないでしょう。

M そんなチャンピオンズCでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、クリンチャーです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。昨年のチャンピオンズCで11着に、前走のみやこSでも6着に敗れてしまったので、今回は相当に人気が落ちるのではないでしょうか。

M ただ、今年は地方のダートグレード競走を2勝しているうえ、JpnIの帝王賞でも3着に食い込んでいます。もともと狙おうと考えていた方も多いはずです。

伊吹 穴党ならずとも気になる一頭ですね。 Aiエスケープの評価を踏まえたうえで、レースの傾向と比較していきましょう。

M もっとも気掛かりなのは、やはり大敗直後である点。前走好走馬よりは評価を下げるべきなのでしょうか。

伊吹 残念ながらその通りですね。前走好走馬が強いレースとまでは言えないものの、前哨戦で格好をつけているに越したことはありません。


M 前走で4着以下に敗れていた馬は3着内率が11.8%。極端に低いわけではありませんが、前走3着以内の馬に比べるとやや見劣りしますね。

伊吹 ちなみに、2015年以降の過去6年に限ると、前走の着順が4着以下、かつ生産者がノーザンファーム以外の馬は[0-0-3-35](3着内率7.9%)でした。

M クリンチャーは平山牧場の生産馬。ちょっと心配ですね。

伊吹 少なくとも、過信禁物と見ておく必要はありそうです。

M 実績面はどうでしょう。

伊吹 実はこちらもあまり強調できません。レース名がチャンピオンズCに変わった2014年以降の3着以内馬21頭中13頭は、既にダートのJRAGIで4着以内となったことがある馬でした。


M なるほど。改めて振り返ってみると、昨年はこの条件に該当する馬が1〜5着を占めています。

伊吹 一方“JRA、かつダート、かつGIのレース”において4着以内となった経験がない、かつ出走数が10戦以上の馬は2014年以降[0-4-1-51](3着内率8.9%)。極端にキャリアが浅い馬を除くと、さらに好走率が落ちてしまうのです。

M クリンチャーはキャリア30戦の7歳馬。2017年菊花賞2着、2021年帝王賞3着などの実績があるとはいえ、フェブラリーSやチャンピオンズCではまだ結果を残せていません。

伊吹 あとはみやこS経由で参戦してきた点も、近年の傾向を考えるとやや不安です。


M 地方のレースを経由してきた馬の方が信頼できるんですね。

伊吹 マイルCS南部杯やJBC3競走など、前哨戦としても手頃なビッグレースがたくさんあって、実績馬の大半はそちらに回りますからね。なお、前走の条件がJRA、かつ前走の4コーナー通過順が3番手以下だった馬は2014年以降[0-2-1-49](3着内率5.8%)とさらに苦戦していました。

M クリンチャーは前走の4コーナーを3番手で通過しています。

伊吹 「前走がみやこSや武蔵野Sだった馬でも、その前走で先行していれば侮れない」と解釈するならば、大きく評価を下げる必要はないのかもしれません。ただ、厳密に言えばこの条件もクリアしてないわけですし、全体的に好走馬の傾向から少しずつ外れている点は気掛かり。Aiエスケープとは逆の見解になってしまいました。どちらの見立てが正しかったのか、結果を楽しみに見守ろうと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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