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コントレイル、到着

  • 2021年12月08日(水) 18時00分

堂々とした風格と圧倒的な存在感を放っていた


 ジャパンカップの激走から4日後の12月2日(木)に栗東トレセン、矢作芳人厩舎を出発したコントレイルは、約28時間かけて馬運車で陸路を北上し、津軽海峡を渡って翌3日(金)、午後1時半前に無事、繋養先である社台スタリオンに到着した。

 この日、安平町早来源武の社台スタリオン周辺は朝から雨模様であったが、馬運車が到着する直前になると、その雨が奇跡的に止み、厚く垂れこめた雲が徐々に薄くなって、時折雲間から薄日が差すほどまでに天候が回復した。

 正午過ぎには多くの報道陣が集まり始め、馬運車の到着を待っていた。やがてコントレイルの乗ったホース運輸の馬運車から「予定(1時半)よりも少しだけ早めの到着になりそうです」との連絡が入り、それがスタリオンのスタッフより伝えられた。それを受けて、事務所からゾロゾロと取材陣が到着場所まで移動する。動画チームも合わせるとざっと20人くらいいるだろうか。さらに到着場所に、お揃いのブルゾンと帽子を身に着けたノースヒルズのスタッフ約20人が姿を現した。引率するのは福田洋志ゼネラルマネージャーである。スタリオンのスタッフや関係者を含めると総勢50人近い大人数でコントレイルの到着を待った。

 エンジ色の馬運車がゲートの前に到着し、すこしずつバックしながら、後扉をこちら側に向ける。車が静止すると、ゆっくり後扉が下りていく。中の観音扉が開かれ、全員が注視する中、矢作厩舎の金羅隆調教助手に引かれて、コントレイルが一歩ずつ確認するように、馬運車から降りてきた。

生産地便り

▲約28時間の長旅を終えて無事に社台スタリオンへ到着


 一斉にシャッター音が鳴り出す。コントレイルは、周囲を見渡しながら、金羅助手に従い、スタリオン厩舎の前のパレードリンクを悠々と周回する。そして、一度、馬房へ収容された。

 数分後、再び姿を現したコントレイルは、まずパレードリンク中央へと導かれ、そこで立ち姿を披露した。蹄鉄を装着したままなので、いくぶん脚元を気にして、軸脚が狭い立ち姿になったが、それでも堂々とした風格で落ち着き払っている。過度に周囲を気にすることもなく、嘶き声も上げない。初めて来た場所だというのに、まるで動じない。すでに圧倒的な存在感を放っていた。

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▲初めての場所でも堂々とした立ち姿を披露


 立ち写真を撮った後、また常歩で周回してのお披露目である。カメラマンたちがしきりにシャッターを切る。馬運車から降り立った時にかけられていた頭絡は外され、スタリオンが用意した専用の名前入り革頭絡に替えられている。それが、特徴のある流星(電話機に例えられてる)に、よく似合っている。コントレイルは、終始、落ち着いていて、自分の置かれている立場を完全に理解しているかのような表情であった。

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▲▼終始落ち着いており、置かれている立場を理解しているような表情を見せていた


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 スタリオンから、金羅隆調教助手と、ノースヒルズの福田洋志ゼネラルマネージャーに花束が贈呈される。そして、駆けつけたノースヒルズのスタッフとの記念撮影なども行われた。

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▲▼金羅隆調教助手、福田洋志GMに花束が贈呈され記念撮影


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 金羅助手は「ディープインパクトの後継種牡馬として期待が大きいですし、頑張って欲しいですね。コントレイルは普段はとても大人しくて管理に苦労したことはありません。調教はちょっと大変でしたけど(笑)。馬運車の中でも大人しかったですよ。高速道路も順調に走れました。青森〜函館のフェリーは少し揺れましたけどね。(無事到着したので)これから夕方の飛行機ですぐ戻ります」と囲み取材に応えていた。

 ノースヒルズの福田洋志氏は「コントレイルのように、皆さんに愛されるような産駒が誕生するよう願っています。そして、日本だけではなく、海外に挑戦できるような馬が生まれてくれることを期待しています」とコメントしていた。

 また、社台スタリオンの徳武英介氏は「サンデーサイレンス、ディープインパクトを思い出してしまうような、そして、サンデーサイレンスの柔らかさも感じますし、すごい種牡馬になるんだろうなぁという思いですね。振り返ると、コントレイルは新馬から隙のないレースぶりでしたし、やる気があってバネのある馬ですから、この馬の能力を伝えられるようにスタッフ一同頑張るつもりです。もちろん社台グループでも、ノースヒルズさんも良い繁殖牝馬を用意して、初年度からロケットスタートできるように努力していきたいと思っています」と話していた。

 コントレイルの種付け料は周知の通り1200万円。初年度としては破格の水準だが、それだけこの馬にかける期待がいかに大きなものか、ということであろう。徳武氏によれば「種付け料云々よりも、とにかくこの馬を付けてみたい」と希望する声も多かった、とのこと。社台スタリオンに繋養が決定し、種付け料が発表されると、即日のうちに満口になったというのも、頷ける。とにかく、来年デビューの種牡馬の中で最も注目馬であることは間違いなさそうだ。

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▲第2の馬生にも大きな期待がかかるコントレイル

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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