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2021年最後のメジャーなセール「アルカナ・ディセンバーセール」

  • 2021年12月15日(水) 12時00分

ミリオン超えが5頭も登場


 北半球における2021年最後のメジャーなセールとなる「アルカナ・ディセンバーセール」が、12月4日から7日までフランスのドーヴィルで開催された。

 総売り上げの4154万1000ユーロは、コロナ渦で厳しい渡航制限が敷かれた中での開催だった2020年に比べると64.5%もの大幅なアップで、2019年と比較しても20.8%アップとなって、このセールとしての歴代新記録をマーク。中間価格も前年比33.2%アップの6万379ユーロで、こちらも歴代の新記録となった。

 その一方で、中間価格の1万5千ユーロは前年比6.3%ダウン。主取り率も、前年の20.9%から今年は24.3%に上昇と、好調ではあったものの、いささかラフなマーケットが展開された。

 筆者も臨場していたのだが、100万ユーロ超えが5頭も飛び出した初日のセレクトセッションにおける盛況ぶりには、おおいに驚かされた。

 最初のミリオン超えとなったのが、上場番号150番のパープルペイ(牝2)だ。セドリック・ロッシ厩舎に所属し、今季は8戦を消化。3勝をあげた他、重賞初挑戦となった最終戦のG1クリテリウムインターナショナル(芝1600m)で、牡馬相手に3着に好走した馬である。

 日本に置き換えれば、GI朝日杯フューチュリティSで3着になった牝馬が上場されたようなものだ。なおかつ、父が今年の仏国におけるフレッシュマンサイアーチャンピオンのザラックというのも魅力で、同馬がリングに登場すると争奪戦は激化。カタール・レーシングの代理人であるデヴィッド・レッドヴァース氏との競り合いに勝利し、同馬を200万ユーロ(約2億5866万円)で購買したのは、米国人馬主ロイ・ジャクソン氏のラエル・ステーブルの代理人を務めた、ニコラ・ヴェルトラン・ド・バランダ氏だった。この結果、パープルペイは米国のアーノウ・デラクール厩舎に移籍して3歳シーズンを迎えることになる。

 さらにヒートアップしたのが、上場番号160番のルジール(牝3)を巡る争奪戦だった。

 2歳秋にパリロンシャンのG1マルセルブーサック賞(芝1600m)で3着になった後、ドーヴィルのG3レゼルヴォワール賞(芝1600m)を制し重賞初制覇を飾ったのがルジールだ。3歳春のG1仏オークス(芝2100m)は5着、夏のドーヴィルを舞台としたG1ロートシルト賞(芝1600m)は4着に終った後、凱旋門賞のアンダーカードとして行われたG1オペラ賞(芝2000m)に優勝。待望のG1初制覇を果している。

 同馬を購買したのは、米国人馬主ピーター・ブラント氏と、愛国のクールモアスタッドのパートナーシップの代理人を務めたミシェル・ゼロロ氏で、価格はこのセールにおける歴代最高となる300万ユーロ(約3億8799万円)だった。パープルペイ同様に、ルジールも北米に移籍して現役を続行する予定で、チャド・ブラウンの管理下に置かれることになった。

 上場番号172番として登場したのが、昨年のG1仏千ギニー(芝1600m)2着馬スピークオヴザデヴィル(牝4)だ。同馬を195万ユーロで購買したのも代理人のミシェル・ゼロロ氏で、こちらはピーター・ブラント氏による単独購買だった。同馬もまた、北米のチャド・ブラウン厩舎に移籍して、5歳となる来季の現役生活を続行する予定だ。

 上場番号188番のワイルドフェダー(牝3)は、G1凱旋門賞(芝2400m)など4つのG1を制したヴァルトガイストの、4歳年下の全妹にあたる。この牝系からは、本馬の3歳年上の半姉ヴァルドリードが、4日前にニューマーケットで行われたタタソールズ・ディセンバーセールに上場され、220万ギニー(約3億5662万円)で購買されたばかりである。ワイルドフェダーを205万ユーロで購買したのは、代理人のクリスパン・ド・モウブレイ氏だった。

 そして、ミリオン・クインテットの大トリを務めたのが、上場番号192番として登場したグランドグローリー(牝5)である。

 今年8月、ドーヴィルのG1ジャンロマネ賞(芝2000m)を制しG1初制覇を飾ると、続くG1オペラ賞がルジールの鼻差2着。そして、東京を舞台としたGIジャパンC(芝2400m)でも5着に好走した、日本の競馬ファンにもお馴染みの馬である。同馬を250万ユーロで購買したのは、代理人のアンソフィー・ヨーベネット氏だった。

 トップエンドのマーケットが高騰した中、日本人バイヤーも健闘。G1フェニックスS(芝6F)3着馬アロハスター(牝3)、G3プリンセスエリザベスS(芝8F113y)勝ち馬ペアレンツプレイヤー(牝4)、G3テクサニタ賞(芝1200m)2着馬ルリアナ(牝3)らが、日本の生産者によって購買されている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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