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高知勢初参戦!? 地元で規格違いのマリンスカイが川崎・全日本2歳優駿へ

  • 2021年12月14日(火) 18時00分
明日12月15日、川崎競馬場で行われる全日本2歳優駿(JpnI、2歳、ダート1600m)に高知生え抜きのマリンスカイ(牡2、打越勇児厩舎)が出走を予定しています。同レースがJRA馬との交流重賞となった1997年以降では初めての高知所属馬の参戦。地元ではスピードの違いから楽に先手を取って無敗の4連勝中で、全国の舞台でどんな走りを見せるのか、注目が集まります。

高知から無敗の4連勝馬の参戦


 マリンスカイは父にNHKマイルカップや朝日杯フューチュリティステークスを制覇したグランプリボスを持ち、母の父は同じくマイルを中心とした短距離で国内外でGI5勝を挙げたタイキシャトル。昨年のサマーセールで260万円(税抜き)で購買されました。

 8月21日にデビューすると、800mの新馬戦でダッシュを利かせて逃げ切り勝ち。9月と10月にも出走が予定されていましたが、前者は頸部フレグモーネで熱発、後者はソエが痛んだため出走取消となりました。

 2戦続けて出走取消となったものの、仕切り直しの一戦となった10月16日を9馬身差で圧勝。そして、高知でこの世代最初の重賞・黒潮ジュニアチャンピオンシップも8馬身差でアッサリと勝利したのでした。

馬ニアックな世界

▲重賞・黒潮ジュニアチャンピオンシップでも圧倒的な強さを見せたマリンスカイ(提供:高知県競馬組合)


馬ニアックな世界

▲重賞レースのため馬主服を着用した宮川実騎手と口取り撮影(提供:高知県競馬組合)


 いずれも逃げての3勝で、距離延長が不安視されたこともありましたが、200mの延長となった1600mの準重賞・土佐寒蘭特別は直線で宮川実騎手がビジョンを確認する余裕があるほどで、8馬身差で勝ちました。

馬ニアックな世界

▲前走の土佐寒蘭特別も余裕の圧勝!


左回りの練習も経験済み


 ここまでのレースぶりを記すと、みなさんの中に2つのイメージが湧くと思います。

(1)逃げ馬であること
(2)もしかして、高知の他の2歳馬のレベルが実は低いだけじゃないかということ

 (1)については、レース映像をご覧いただけるととても分かりやすいのですが、実はマリンスカイは生粋の逃げ馬というわけでもないように感じます。というのも、スタートしての1歩目は決して速くはなく、滑りながらスタートを切ったレースさえありました。

 そんな、やや立ち遅れ気味のスタートでも、スピードに乗ってからの行き脚が素晴らしく、結果的に逃げているだけのように思うのです。スピードの絶対値が違いすぎる、というのがベターな表現でしょうか。

 ではそこでもう一つ浮かぶ疑問が(2)。しかし、高知競馬ではサラブレッドの新馬戦が17年ぶりに再開された2015年以降、ほぼ毎年のように高知生え抜きから他地区で活躍できる馬を輩出しています。


デビュー年 馬名 
主な勝ち鞍

2015年 ディアマルコ 
兵庫サマークイーン賞(2016、17年、園田)、のじぎく賞(園田)、高知優駿など

2016年 フリビオン 
西日本ダービー(佐賀)、高知優駿など

2018年 アルネゴー 
西日本ダービー(高知)など

2020年 ハルノインパクト 
高知優駿など

※西日本ダービーは開催場が持ち回り制


 フリビオンやハルノインパクトは、他地区から有力馬を迎えた高知優駿を勝ちましたし、西日本地区の生え抜き3歳馬が集う西日本ダービーもこれまで6回のうち2回を高知勢が優勝。この何年間かで、高知競馬の馬のレベルは想像以上のスピードで高くなっていっています。

 そうなれば、「いまの高知のトップホースで、全国に戦いに行ってどのくらいやれるのか」を見てみたいという思いに駆られます。

 マリンスカイはその思いの実現に向けて着々と準備を進めてきました。地元の高知競馬場ではレースは右回りですが、全日本2歳優駿が行われる川崎競馬場は左回りのため、12月5日には遅い時間帯を利用して左回りの練習も行ったとのこと。

 練習相手に騎乗した打越厩舎所属でデビュー2年目の井上瑛太騎手は「僕自身が左回りに慣れていなくて不思議な感覚でしたけど、マリンスカイはデビュー前に牧場で乗らせていただいたこともある馬。全日本2歳優駿でどれだけやれるか楽しみですよね!」と、厩舎期待馬の全国挑戦に目を輝かせます。

 騎乗するのは兄弟子でもある宮川騎手。今年、勝率の全国トップに立ち、安定感のあるジョッキーです。

 誠実な人柄で、地に足のついたコメントをする印象が強かったのですが、黒潮ジュニアチャンピオンシップを勝った時、橋口浩二アナウンサーから「ファンサービスも兼ねて、この馬の大きな可能性を語ってください」と向けられると

「スペルマロンと叩き合いができるような馬に成長させていきたいです」

 と、高知初の1億円ホースとなった王者の名前を出しました。それだけ大きな期待を抱いていることが伝わってきます。

馬ニアックな世界

▲黒潮ジュニアCSの表彰式でスペルマロンとの対決についても言及し、ファンを沸かせた宮川実騎手(提供:高知県競馬組合)


 全日本2歳優駿で引き当てたのは外目の7枠12番。コーナーがキツイ川崎コースでの外枠は少し気になりますが、出走馬を見渡すと逃げ・先行馬がズラリ。マリンスカイはこれまで砂を被ったり揉まれた経験がないため、外枠で揉まれずに運べそうな点は好材料のような気もします。

「全国トップレベルの2歳馬を相手に、高知の馬でどこまで差を詰められるのかを見たいですし、欲を言えばもちろん勝ちたいです」と、現在全国リーディングを走る打越調教師。

馬ニアックな世界

▲マリンスカイを管理する打越勇児調教師は、3回目の全国リーディングも目指します


 マリンスカイは15日(水)20時10分、川崎競馬場で走ります。

競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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