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不安定な世情の下でも堅調に推移した競馬業界…2021年回顧

  • 2021年12月22日(水) 18時00分

この好調がいつまで続くのか、は何とも不透明…


 有馬記念を前にして、一年間を回顧するのはあまり適当ではないかもしれないが、今日が年内最後の更新日なので、簡単に今年を振り返ってみようと思う。

 新型コロナ禍に明け、新たなオミクロン株によるコロナ再拡大に怯えながら年の瀬を迎えた2021年。今のところ、我が国の新規感染者数はかなり少なめに推移しているものの、このまま終息するとはとても思えず、おそらく来年になってもしばらくの間は新型コロナへの警戒が必要だろう。あるいはもう一度、大規模な流行に見舞われる可能性もある。

 そんな不安定な世情の下でも、競馬は影響が最小限に抑えられており、外出自粛による巣ごもり需要の効果からか、馬券売り上げは依然として伸び続けた一年であった。中央競馬は10月末までの時点で、2兆5167億8413万円(千円以下切り捨て)。前年比105.6%と堅調だ。

 また地方競馬も同様に、今年も売り上げを増加させており、こちらは11月末の時点で、1150日間(前年比31日間減)の開催で、8620億9842万円と、前年比112.5%を記録しており、健闘している。

 因みに、地方競馬の開催日数31日減は、不祥事による開催自粛に追い込まれた笠松競馬(前年比53日減)によるところが大きい。それ以外では、佐賀(8日)、船橋(6日)、浦和(4日)など開催日数を増やしている主催者があり、差し引きして31日の減少となった。

 地方競馬全体における1日平均の売り上げも、7億4965万円で前年比115.5%となっており、コロナ禍2年目ながら、着実に数字が伸びてきている。

 平地のみならず、ばんえい競馬も売り上げが順調で、今年1月〜11月末までの期間、137日を開催し、452億2054万円と前年比120.9%。1日平均では3億3007万円と全国最下位とはいえ、ひと頃の危機的状況からはすっかり立ち直った印象だ。

 こうした背景から、生産地でも、昨年に引き続きサラブレッドの各市場は大盛況であった。主流を占める1歳市場についてみて行くと、6月22日九州市場から10月18日〜19日の北海道オータムセールまで、全7市場、13日間の開催で、計2807頭が上場され、2171頭が落札されて、総額268億4396万円を売り上げた。全体を通じての平均価格は1236万4790円。前年と比較すると、上場頭数は135頭増、落札頭数79頭増、売却率は77.3%でこちらはわずかに前年を下回った(1%)ものの、総売り上げは24億7450万円増と10.2%の伸びとなった。

 これは、中央地方ともに好調に推移している馬券売り上げによって、賞金や諸手当の増額に後押しされ、馬主層の旺盛な購買意欲が形となった結果と言えるだろう。

 ただし、この好調が、果たしていつまで続くのか、については何とも不透明だ。地方競馬の場合、これまで主として、観客エリアを中心に施設改善を進めてきており、バックヤードともいうべき厩舎地区の諸施設が手つかずのまま後回しにされてきたところが多い。

 例えば、門別競馬場。昭和時代に建てられた厩舎や従事員住宅などを、2021年度から5か年計画で全面的に建て替える予定になっている。事情はばんえい競馬を開催する帯広競馬場も同様で、やはり厩舎地区の施設一新が緊急課題である。

 南関4場とて、事情は大して変わらない。また笠松に至っては、スタンドも含めすべてがレトロな味わいと言えなくもないくらいの古びた印象だ。むしろ逆に、施設への新たな投資の必要がない競馬場を数えた方が早いかもしれない。

 来年春には、名古屋競馬が、従来の競馬場を廃止し、新たに弥富市のトレセンを競馬場化して、ナイター競馬に参入することになっている。これでナイターを実施するのは、門別、帯広、浦和を除く南関3場、園田(金曜日限定だが)、佐賀、高知に加え9か所目となる。

生産地便り

これまでの名古屋競馬場(c)netkeiba.com、撮影:高橋正和



 この好調な馬券売り上げが、後数年間は続いて欲しいところだが、さて来年はどんな世の中になって行くことか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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