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若くして引退したジョッキーの後日談

  • 2021年12月28日(火) 18時00分
年内最後のコラムは今年掲載された「ちょっと馬ニアックな世界」から後日談をお送りします。

今年6月、「若くして引退したジョッキーとトランセンデンスを結ぶ縁」でデビュー6年を待たずして引退を決断したジョッキーと、彼が主戦を務めた牝馬の初仔が東京ダービーに出走するエピソードは、大きな反響をいただきました。ありがとうございます。

コラムの主人公の小山裕也元騎手は、掲載後、感じることがあったようです。そして、今秋には騎手時代の仲間たちと再会を果たしました。

2021年最後の「ちょっと馬ニアックな世界」を覗いてみましょう。

転職後、初めて古巣・園田へ


 小山裕也元騎手、27歳。現在の肩書はJRA栗東トレーニングセンターの笹田和秀厩舎の調教助手です。

 2013年4月、園田・姫路競馬でデビューしましたが、通算24勝。減量が取れて騎乗数が減っていった頃、ジョッキーとしての可能性をかけて高知競馬場へ武者修行に向かいましたが、調教中に落馬して骨折。デビュー6年を待たずして引退することを決断したのでした。

 そして、JRAの調教助手に転身すると、かねてから交際していた彼女にプロポーズし、結婚。子どもも生まれ、公私ともに充実した日々を送っている、というのが今年6月に掲載したコラム「若くして引退したジョッキーとトランセンデンスを結ぶ縁」のあらすじです。

 コラムには

「ジョッキーだけがすべてじゃない」
「理想と現実の狭間で、どう折り合いをつけて人生を歩んでいくかが大切」

 と、彼の生き方に拍手を送るコメントが寄せられました。

 これらのコメントには、発信者の人生観も詰まっているように感じられ、私自身も勇気づけられたり考えさせられることが多々ありました。

 そして、小山助手もこう話します。

「みなさん、いいことばかりコメントしてくださって、嬉しいです。『コラム読んだよ』と声をかけられることも多くて、ジョッキーとしての成績は全然でしたけど、人間関係にはとても恵まれていて、幸せ者だなと思います」

 そして、9月9日には現在、調教助手として所属するJRAの笹田和秀厩舎のラウディが園田競馬場でJRA交流レースに出走。ラウディは小山助手が調教を担当している馬で、笹田調教師に「僕も園田に行っていいですか? 」とお願いし、古巣にやってきました。

 実は、JRAの調教助手に転身してから園田競馬場に仕事で来るのは初めて。午後は厩舎を空けることになりますが、笹田厩舎の他のスタッフたちの協力もあり実現しました。

馬ニアックな世界

▲仕事で初園田。騎手時代の師匠・盛本信春調教師(右)と


 多くの騎手・調教師から「裕也、久しぶりやな! 」と声をかけられ、かつての師匠でもある盛本信春調教師と二人でパトロールビデオを見る場面もありました。

馬ニアックな世界

▲騎手時代の先輩である鴨宮祥行騎手(左)、大柿一真騎手(中)と久しぶりの再会


馬ニアックな世界

▲盛本調教師(右)とパトロールビデオを見つめる小山助手


 現在はどのように過ごしているのでしょうか?

「コラム掲載前と変わらず、家族のために頑張るということを第一にしています。最近は、仕事から帰ってくると娘が笑いながら玄関まで出迎えてくれるようになったので、さらに娘や家族のために頑張ろう! と思うようになりました」

 そんな話を聞くと、リーディングジョッキーになるとか、重賞を勝つとか、一般的に「成功者」と言われるポジションに立つことだけが幸せなのではなくて、悩みながら信じて歩んだ道にも様々な形の幸せがあるのだな、と感じます。

 そんなことを改めて感じさせてくれたのが6月に掲載したコラムへのコメントと、小山助手自身の言葉でした。

 今年一年間もコラム「ちょっと馬ニアックな世界」をお読みいただき、ありがとうございました。みなさんにとって2022年が幸せな一年となりますように。

競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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