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【シンザン記念】能力をフルに発揮した横山典弘騎手会心の騎乗

  • 2022年01月11日(火) 18時00分

大きな死角となった経験不足、初遠征、スタートの悪さ


重賞レース回顧

シンザン記念で優勝したマテンロウオリオン(C)netkeiba.com


 最近15年間のシンザン記念で好走した5頭の牝馬が、4月の桜花賞を制しているマイル重賞とあって、ルメール騎手が「グランアレグリア級」と絶賛した牝馬ラスール(父キタサンブラック)が人気の中心になったのは、当然のことだった。

 ただ、今回がまだ2戦目。2016年の桜花賞馬ジュエラーはこのシンザン記念では負けている。2011年の桜花賞馬マルセリーナもシンザン記念は負けていた。ともにキャリア不足の2戦目だった。2019年の桜花賞馬グランアレグリアも、桜花賞まで無敗だったわけではない。注目のラスールは、経験不足、初遠征、スタートの悪さが大きな死角として露呈してしまった。

 新馬戦もスタート一歩だったラスールは、今回は落ち着いてはいたが、明らかに出負けしている。レースの前後半は「47秒0-47秒1」=1分34秒1(レース上がり35秒1)。1000m通過59秒0というあまり速くない流れだったため、出負けのロスはさして無理することなくカバーできたが、残念ながらラスール自身はムキになっていた。休養明けのC.ルメール騎手もこの日【0-0-0-5】。本来のルメール騎手ではなかった。

 直線に向くと馬群が一団になったため、内寄りを進んだラスールにはどこにも進路がなかった。慌てて外を探したがスムーズではなく、もまれて進路を変更しているうちに、ラスールも、C.ルメールも気力がなくなったように映った。牝馬の2戦目の初遠征は難しい。10日の「フェアリーS」で人気になった2戦目の人気馬エバーシャドネー(父ルーラーシップ)も、終始インで揉まれ、接触されたとはいえ最後は闘志を失う失速だった。

 ラスールは素晴らしい身体つきに恵まれた牝馬。これから大きく出世することは間違いないが、今回は2戦目の不利を考えるとちょっと人気になりすぎだったか。

 逆に、初戦はフェアリーSに出走した牝馬エバーシャドネーに負けたマテンロウオリオン(父ダイワメジャー)は、後方一気だった2戦目と異なり、好スタートからスムーズ。

 理想的な位置で平均ペースの流れに乗り、能力フルに発揮となった。今週の芝の内は悪くなかった。そこも読んで巧みにインを衝いた横山典弘騎手の会心の騎乗だった。

 ただ、5レースの未勝利戦を逃げ切った4戦目のエンペザー(父ロードカナロア)が、前後半「47秒5-47秒2」の逃げ切りで、1分34秒7(上がり34秒8)だったことを考えると、そうレベルの高いシンザン記念ではなかったかもしれない。マテンロウオリオンの祖母は2001年のオークス馬レディパステル。これからの成長に期待したい。

 2着ソリタリオ(父モーリス)は、最初は苦しい位置にいたが、そのあとのC.デムーロは巧み。勝負どころを迎える前に、いつのまにか揉まれない外に回っていた。インを衝いた勝ち馬には及ばなかったが、現時点の能力は勝ち馬と互角だろう。こちらは祖母がライラプス(父フレンチデピュティ)。成績通りのマイラーか。

 3着レッドベルアーム(父ハーツクライ)は、スマートに映るシャープな馬体で、今回は文句なしの好仕上がり。前回が道中かかり気味だったので、今回はあえて馬群の中に入れ、折り合いはスムーズだった。このペースだけに大事に乗って脚を余した印象はあるが、それでも惜しいという内容でもなかった印象はある。

 4着ビーアストニッシド(父アメリカンペイトリオット)は、道中行きたがるのを岩田康誠騎手独特の制御方でなだめた。馬に負担のかかる騎乗のように見えるが、あれは岩田騎手の流儀。それでインから伸びたから負担はかかっていないのだろう。見事、脚質転換に成功した。折り合うレースを覚えれば今回の上位馬とはまったく差がない。

 それぞれ、これからの活躍が期待できる内容だったが、接戦のわりに全体時計が物足りなかったあたり、厳しいようだが、GI級というには迫力不足の印象はあった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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