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1兆円の大台に乗るか?

  • 2022年01月13日(木) 18時00分

年度ベースでは達成の可能性も…見通せない売り上げ予測


 この年末年始、地方競馬では大晦日も元日も、どこかの競馬場で必ず競馬が行われ、1日も休むことなく開催していた。大晦日の12月31日は、水沢こそ悪天候により馬場回復が望めずに中止せざるを得なくなったが、大井、笠松、園田、高知の4場が開催し、年が明けて1月1日には、川崎、名古屋、高知の3場が早々に新年の開催をスタートした。

 いうまでもなく、年末年始は、地方競馬にとって、最大の書き入れ時である。中央競馬が開催を終了してから、新年5日、金杯で始まるまで、地方競馬はどこでも最大級の注目レースを組み、ファンにPRする。

生産地便り

▲▼年末の大一番・東京大賞典はオメガパフュームが制し前人未到の4連覇を達成(c)netkeiba.com、撮影:高橋正和


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 その典型例が大井競馬で、12月29日に行われた第67回東京大賞典当日の売り上げは、地方競馬初となる1日100億円の大台を記録した(SPAT4LOTOを含め104億4805万円)。また東京大賞典単独の売り上げも、従来の記録を上回り、69億5320万円の新記録を達成した。

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▲東京大賞典は地方競馬1レースの売上レコードを更新(c)netkeiba.com、撮影:高橋正和


 また、大晦日の12月31日、大井は33億3767万円。笠松は5億3137万円。園田は9億8056万円。高知は唯一のナイターとなった(大井は日中開催)ことから12億4796万円を売り上げて、2021年の開催を終了した。

 そこで、気になるのが、2021年の地方競馬全体の売り上げが、1兆円に届いたかどうか、ということだ。地全協の公表している1月〜11月までの合計は、8620億9842万円。その後12月の1か月間で、どれくらい上乗せできたのかを知りたかった。

 しかし、未だ、公式発表はされていない。それで、やむを得ず、地全協広報課に問い合わせてみたところ、「現在、農林水産省に確認してもらっている段階」とのことで、まだ確定ではないため、暫定値という但し書きがついているものの、口頭で2021年の総売り上げをご教示頂いた。

 それによると、昨年は9645億327万4720円、であったらしい。前年比111.7%。1兆円には約355億円、届かずであった。

 周知の通り、従来の記録は1991年度の9862億円余である。当時と今とでは、そもそも競馬場の数が大きく異なり、単純な比較はできないが、1場あたりの馬券の平均売り上げ額は大幅に向上している。

 地方競馬は中央と異なり、正式には、4月〜3月の会計年度で集計を行なっている。したがって、2021年度の決算は、厳密に言うと、今年3月末の開催終了まで待たねばならない。

 地全協によれば「確かに、1月〜12月の期間では1兆円に届かなかったものの、このペースを維持できれば、会計年度の決算では、夢の1兆円をクリアできるのではないか」とのことであった。

 その根拠は、2020年度(2020年4月〜2021年3月)の9122億8711万円が基礎になっている。これに、先程の伸び率の前年比111.7%を乗じてみると、約1兆190億円である。

 今後、3月末までの2か月半で、どこまで売り上げを伸ばせるか、にかかっている。また、さらに気になるのは、たとえ2021年度が1兆円の売り上げを仮に突破できたとしても、その後の売り上げ予測がまったく不可能ということである。

 新型コロナ禍の動向にもよるであろうし、日本経済全体の景気動向にもよるだろう。2022年の日本がどんな年になって行くのかも正確に予想できる人はいない。

 ただ、地方競馬の主催者の多くは、長年の懸案事項となっていた厩舎地区の施設改善にようやく着手し始めており、できることなら、あと数年は現状の売り上げを維持したい、というのが本音であろう。昭和時代に建てられた老朽化の目立つ施設が建て替えられるまでは、何とかこのまま好調を維持して欲しいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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