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冬季繁殖馬セール

  • 2022年01月27日(木) 18時00分

わずか22頭の上場も、JRA重賞ウィナーの名が


生産地便り

セール会場風景


 昨日1月26日(水)、新ひだか町静内の北海道市場にて「冬季繁殖馬セール」が開催された。(株)ジェイエスが主催する繁殖馬セールは10月とこの1月と、年に二度のペースで開催されているが、秋と比較すると、1月は上場頭数が毎回少なくなる傾向が顕著で、今年もわずか22頭の上場にとどまった。

 折から北海道でも、新型コロナのオミクロン株が大流行の真っただ中とあって、会場に足を運んだ関係者はやや少なめの印象であった。駐車場も空きが目立った。

 コロナ禍になってから市場は感染対策にかなり気を配っており、今回の繁殖馬セールでも、出入り口を1か所に限定して、まずそこで手指の消毒と検温が課せられている。また、上場頭数の少ないこともあり、開場が午後1時、セリ開始が午後2時とされ、昼食時の飲食サービスなどは一切実施されなかった。

 それにしても、上場頭数22頭というのは異例の少なさで、この10年間でも最も少頭数である。だが、今回は、未供用馬の中にノーワン(フィリーズレビュー=GII優勝馬)の名前があり、この馬1頭が、全体の売り上げの半分以上を占めるほどの高価格となった。
生産地便り

ノーワン立ち


生産地便り

ノーワン落札場面


 まずセール結果の概要を先に記しておく。上場馬は22頭(受胎馬8頭、空胎馬14頭)で、落札されたのは17頭(受胎馬5頭、空胎馬12頭)、売却率は77.27%(受胎馬62.50%、空胎馬85.71%)。売り上げ総額は1億2322万2000円(税込)。平均価格は724万8353円(受胎馬486万2000円、空胎馬824万2667円)。

 最初に登場したのは受胎馬8頭で、そのうち最も高額だったのは、7番ダンシングロイヤル(14歳、父サクラバクシンオー、母の父ダンスインザダーク、シニスターミニスターを受胎しており最終種付け日は5月30日)の1045万円(落札価格950万円)。村上欽哉牧場からの上場馬で、落札者は村上愛氏。

 本馬は中央時15戦2勝2着4回、未勝利〜黒松賞を連勝した実績を持ち、獲得賞金は3212万円。加えて、シニスターミニスターを受胎していることも人気を集める要因となった。
生産地便り

ダンシングロイヤル立ち


生産地便り

ダンシングロイヤル落札場面


 続いて不受胎馬及び種付けをしなかった空胎馬が5頭、その後、現役引退直後となる繁殖未供用馬11頭が登場した。

 203番(未供用馬は200番台で表示されている)シトラスノキセキ(6歳鹿毛、父ワークフォース、母の父サンデーサイレンス)は880万円(落札価格800万円)で(株)リコーファームが落札した。販売者は加藤正二郎氏、飼養管理者は恵比寿牧場。本馬は中央で25戦2勝(朝日岳特別を含む)3着1回の成績を残し、獲得賞金は2160万円。これが未供用馬二番目の高額馬であった。

 前述のノーワンが登場したのはその後である。ヒップナンバーは206番。ノーワンは6歳鹿毛、父ハーツクライ、母プレイガール、母の父Caerleonという血統で、2019年の阪神・フィリーズレビュー優勝馬である。その後、桜花賞、オークスと牝馬クラシックに駒を進めた実績を持つ。1200万円から始まったセリは徐々にヒートアップし、4000万円、5000万円、そして6000万円台の攻防へ突入した。決着がついたのは6600万円のコールが告げられた時である。そこでようやく長かった競り合いに終止符が打たれた。販売者はハナズリトルファーム(株)、落札者はポリッシュホースメイト。もちろんこの馬が今回のセールの最高価格馬であった。

 市場を総括して、(株)ジェイエスの大西セールスマネージャーは「現役の重賞勝ち馬が未供用で上場されたのは画期的なことで、申し込みをいただいた時には私たちも興奮しました。少しずつ、こういう評価されるべき馬が必要とされるところに買われて行くという流れが根付いてきていると感じています。頭数は少なかったものの中身は濃いと判断し開催に踏み切りましたが、冬季セールはいつも頭数の確保の問題がついて回ります。しかし、良いものは売れると改めて認識しました。年末まで競走に使ってからセールに出すタイミングとしては、今回の1月冬季セールがベストなのではなかろうかと考えます。販売者の皆様と、購買にお集まりいただいた購買者の方々に厚くお礼を申し上げます。上場頭数の割には予想以上の数字が出まして、繁殖馬マーケットに対する需要や熱が依然としてあるのだなと感じました。今後もより良い市場をご提供できるように活動して参りたいと思います」とインタビューに応じていた。

 中央のGII勝ち馬が現役引退直後にここに上場されるのはまずないことで、その分だけノーワンは希少価値の高い上場馬であったと言えそうだ。なお、ノーワンの現役時代の獲得賞金は計5650万円。今回は自身の稼いだ賞金以上の落札価格がつけられたことになる。今後のノーワンの繁殖生活にも注目してみたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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