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賞金アップの兵庫で

  • 2022年02月01日(火) 18時00分

高素質馬の活躍が目立ってきており、地元でのタイトル奪取に期待


 1月30日に行われた高知の黒潮スプリンターズカップは、兵庫から遠征のイグナイターが断然人気にこたえ、7馬身差の圧勝となった。

 一方、遠征競馬で重賞3連勝中だった地元期待のダノングッドは、1300mでの1番枠は難しかった。砂の深い内で包まれたくなかったのだろう、逃げの手に出てハナはとれたものの、エイシンビジョンに絡まれる厳しい展開。3コーナー過ぎでイグナイターにとらえられ、それでも直線半ばまで2番手で粘っていたが、ゴール前で北海道のイダペガサスに交わされての3着だった。

 イグナイターは昨年末、中央馬相手の兵庫ゴールドトロフィーで、ハンデに恵まれたとはいえ直線半ばまでは逃げ切ったかという惜しい3着。その能力の高さを高知遠征であらためて示して見せた。

 今後の目標は、黒船賞とのこと。兵庫ゴールドトロフィーで先着されたテイエムサウスダン、ラプタスは、それぞれ2021、20年の黒船賞の勝ち馬で、今年の黒船賞でも再戦となる可能性はある。黒船賞はグレード別定戦で基準重量が56kgだから、イグナイターにとっては兵庫ゴールドトロフィーほど楽な斤量にはならないが、成長途上の4歳ということでは雪辱を期待してもよさそう。管理する新子雅司調教師にとっては、2018年に単勝234.3倍の9番人気だったエイシンヴァラーで制したレースでもあり、厩舎としても4年ぶりの期待となる。

 いま、地方競馬では多くの主催者がそうだが、好調な売上とともに賞金も上昇している。兵庫では12月のグランプリレース、園田金盃が2020年から1着賞金が3000万円に大幅アップ。兵庫の最高賞金は3歳馬によるJpnIIの兵庫チャンピオンシップで3500万円だが、2歳馬によるJpnIIの兵庫ジュニアグランプリ、古馬JpnIIIの兵庫ゴールドトロフィーが3000万円で、園田金盃はそれと同額。ほかに5月の兵庫大賞典、3歳馬による兵庫ダービーと楠賞も、2020年から2000万円となっている。

 兵庫の地方重賞では最高賞金の園田金盃で、一昨年、昨年と連覇を果たしているのがジンギで、2月3日に姫路競馬場で行われる白鷺賞に出走予定。昨年は重賞のみ6戦して4勝で、負けたのは、名古屋に遠征した名古屋大賞典で中央馬相手に4着だったのと、地元の六甲盃で南関東からの遠征馬に先着されての2着だけ。一昨年10月の姫山菊花賞で、同じ橋本忠明厩舎のエイシンニシパの2着に負けて以降、地元馬には先着されていない。

 先のイグナイターは、中央ダートの新馬勝ちから大井を経由して兵庫に転入。中央と大井では1600〜1800mを使われていたが、兵庫では1400mの路線で素質開花。

 一方のジンギは兵庫の生え抜きだが、父がロードカナロア、母ロイヤルインパクトは中央4勝で、その父ディープインパクトという、地方デビューとは思えない血統。こうした素質馬が兵庫に入ってくるようになったのも、賞金の上昇と無関係ではないだろう。イグナイターは短距離路線で、ジンギは2000m前後の路線でダートグレードのタイトルが狙える存在だ。

 兵庫では現在、3つのダートグレード競走が行われているが、3歳馬の兵庫チャンピオンシップこそ2001年の第2回に地元のロードバクシンが勝ったものの、以降昨年まで20年連続で中央馬が勝利。2歳馬の兵庫ジュニアグランプリ、古馬の兵庫ゴールドトロフィーは、20年を超える歴史で地元馬の勝利はまだない。

 しかしながら高素質馬の活躍が目立ってきている現状だけに、いずれ近い将来、地元兵庫所属馬によるグレードタイトル奪取に期待だ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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