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ハーツクライの良さをうまく引き出すレッドキャットファミリー

  • 2022年02月07日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・2/6 東京新聞杯(GIII・東京・芝1600m)
 後方追走のイルーシヴパンサーが直線で大外から鋭く伸び、ファインルージュの追撃を1.3/4馬身抑えて初の重賞タイトルを獲得しました。昨年6月に1勝クラスを勝ってからこれで4連勝。完全に本格化しています。

 父ハーツクライは同日のきさらぎ賞(GIII)をマテンロウレオで制しており、一日にふたつの重賞をものにしました。4分の3同血のステラロッサ(父が同じで母同士が親子)はオープンクラスまで出世し、東京コースは[3-2-0-2]と抜群の成績でしたが、イルーシヴパンサーもこれに似ています。

 東京コースを得意とする父ハーツクライの良さを、2代母レッドキャットのファミリーはうまく引き出しています。ハーツクライ産駒は東京新聞杯と相性が良く、通算7回走って2勝、2着2回、3着1回。複勝率は71%に達します。

 近親のステラロッサも切れる馬でしたが、イルーシヴパンサーも同様で、今回はメンバー中最速の上がり3ハロン33秒1。遅れてきた大物だけにまだ伸びしろはあるでしょう。同じハーツクライ産駒の大物ジャスタウェイのようになれるかどうか、安田記念(GI)が楽しみです。

・2/6 きさらぎ賞(GIII・中京・芝2000m)
 ゴール前でマテンロウレオとダンテスヴューが激しく叩き合い、外のマテンロウレオがハナ差先着しました。お昼ごろまで降った雪の影響で馬場状態は稍重。

 マテンロウレオは母の父にパワー型のブライアンズタイムを持つので、少し渋った馬場も苦にしませんでした。ブライアンズタイムはロベルト系のスタミナ血統で、切れ味よりも持続力を武器とし、荒れた馬場やダートを得意としました。

 母サラトガヴィーナスはグラスワンダー(有馬記念連覇、モーリスの2代父)とよく似た配合構成が魅力的です。父ハーツクライは東京コースを得意とする種牡馬ですが、母方の血の特徴を考えると、小回りの中山適性が高いのではないかという気がします。

 前走のホープフルS(GI)はキャリア不足で6着と敗れましたが、本質的にはダービー(GI)よりも皐月賞(GI)向きでしょう。

今週の血統注目馬は?


・2/13 あすなろ賞(3歳1勝クラス・小倉・芝2000m)
 小倉芝2000mに強い種牡馬はキズナ。連対率25.5%は、2012年以降、当コースで産駒が20走以上した53頭の種牡馬のなかで第3位。このレースに出走馬を送り出している種牡馬のなかではナンバーワンです。当レースにはアランヴェリテとエクラノーブルの2頭が登録しています。

 前者はキメラヴェリテ(北海道2歳優駿、若葉S-2着)の全弟、後者はノーブルジュエリー(京都牝馬S-3着)の半妹。実力拮抗の混戦模様だけに勝機はあるはずです。

今週の血統Tips


 1月30日、北海道札幌市のモモセライディングファームで余生を送っていたテレグノシスが死亡しました。23歳。

 現役時代にNHKマイルC(GI)など3つの重賞を勝ち、種牡馬となってからは少ない産駒からマイネイサベル(府中牝馬S、中山牝馬S、新潟2歳S)を出しました。テレグノシスの父はトニービン。1990年代の半ば、サンデーサイレンス、ブライアンズタイムと並んで“御三家”と称された名種牡馬です。

 娘のエアグルーヴは年度代表馬となっただけでなく繁殖牝馬としても成功し、直系子孫にはルーラーシップやドゥラメンテがいます。

 また、トニービンを母の父に持つハーツクライは、先週重賞を勝ったイルーシヴパンサーとマテンロウレオの父なので、この2頭はいずれもトニービンを含んでいます。

 昨年の年度代表馬エフフォーリアはハーツクライを母の父に持つので、これも血統構成のなかにトニービンが組み込まれています。

 “御三家”と持て囃されてから四半世紀が経過し、いまだに血の影響力は大きいものの、父系は壊滅状態です。オウケンブルースリ、トーセンジョーダンなどは一応現役種牡馬ではあるのですが、種付け頭数はごくわずかで、ここから一発逆転は難しそうです。

 トニービン系競走馬はじきに消滅する運命でしょう。ちなみに、御三家の一頭であるブライアンズタイムの系統も風前の灯で、めぼしい現役種牡馬はフリオーソぐらいです。

 結局、サイアーラインとして生き残ったのはサンデーサイレンスのみ。1990年代末、サンデーサイレンスが独走を始めると、“御三家”という言葉は誰も口にしなくなったのですが、その当時の力量差が現在の父系勢力にそのまま表れています。

 マイネイサベルが走っていた10年前は、トーセンジョーダンやオウケンブルースリも現役だったので、これほど急にトニービン系が勢いを失うとは想像できませんでした。父系の盛衰は諸行無常、人知の及ぶところではなく、サンデーサイレンスであってもこの真理から逃れることはできません。

 これから四半世紀後、サンデー系がさらに発展しているか衰退しているかは誰にも分かりません。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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