スマートフォン版へ

現状のままではトップホース不在 大混戦模様のケンタッキーダービー

  • 2022年03月02日(水) 12時00分

第2回前売り時点ではスマイルハッピーに注目が集まっていたが…


 5月7日(土曜日)にチャーチルダウンズで行われる第148回ケンタッキーダービー(d10F)を頂点とする北米3歳戦線が、近年にない大混戦模様となっている。

 確固たる軸馬不在と言われていた中、G2ケンタッキージョッキークラブS(d8.5F)を含めて2戦2勝の成績で2歳シーズンを終え、1月21日から23日にかけて行われたケンタッキーダービー・フューチャーウェイジャー・プール2で、個別の馬では1番人気(9倍)に推されたスマイルハッピー(牡3、父ランハッピー)が、今季の始動戦となった2月19日にフェアグラウンズで行われたG2リズンスターS(d9F)で2着に敗れ、連勝がストップ。混戦模様に拍車がかかることになった。

 さらに、2月26日にオークローンパークで行われたG2レベルS(d8.5F)は、出走11頭中最低人気(オッズ76.4倍)のウンオホ(セン3、父ラアオバン)が優勝。ロード・トゥ・ケンタッキーダービーは、まさしく秩序のない無政府状態となり、だれが主役となるのか皆目見当がつかない状況に陥っている。

 牡馬陣がこれだけ不甲斐ないならと、例えば、2月26日に同じくオークローンパークで行われた牝馬のG3ハニービーS(d8.5F)を7.1/2馬身差で制し、直近3連勝を飾ったシークレットオース(牝3、父アロゲイト)について、管理するW.ルーカス調教師はレース後、次走は4月2日のG1アーカンソーダービー(d9F)で、牡馬に挑む可能性に言及。

 また、5.1/4馬身差で制したG1BCジュヴェナイルフィリーズ(d8.5F)を含めて4戦無敗で2歳シーズンを終え、エクリプス賞最優秀2歳牝馬に選出されたエコーズールー(牝3、父ガンランナー)も、牡馬3冠への登録を済ませており、同馬を管理するS.アスムッセン調教師は「ケンタッキーダービーも選択肢の1つ」とコメントしている。

 ダービー戦線を混迷させている背景にあるのが、B.バファート厩舎所属馬を巡る騒動だ。昨年のG1ケンタッキーダービーで1着入線後、ドーピング検査で禁止薬物のベタメタゾンが検出された、B.バファート厩舎のメディーナスピリットが、失格処分となることが2月21日に正式決定。

 チャーチルダウンズは、B.バファート調教師に対し向こう2年間の出走資格停止処分を課すとともに、ロード・トゥ・ケンタッキーダービーに組み込まれたレースでB.バファート厩舎所属馬が獲得したポイントを無効とする決定を下している。

 したがって、2歳時にG1BCジュヴェナイル(d8.5F)を含む無敗の3連勝をマークし、エクリプス賞最優秀2歳牡馬を受賞したコーニッシュ(牡3、父クオリティロード)を筆頭に、2月6日にサンタアニタで行われたG3ロバートルイスS(d8.5F)を15馬身差で制し、2度目の重賞制覇を果したメシエ(牡3、父エンパイアメーカー)、G3シャムS(d8F)、G3サウスウェスS(d8.5F)の2重賞を制しているニューグレンジ(牡3、父ヴァイオレンス)、2月26日のG3サウジダービー(d1600m)を快勝したパインハースト(牡3、父トゥワーリングキャンディ)といった、この世代のトップホースたちが、現状のままではケンタッキーダービーに出走することが出来ない事態となっているのだ。

 B.バファート調教師は、資格停止処分の解除を求めて、本案件を法廷闘争に持ち込んでいるが、もはや残された時間は限られており、上記した馬を所有する馬主たちが、いつ転厩に踏み切るかを含めて、どのような判断を下すかが注目されている。

 そんな中、ブックメーカー各社は現時点で、コーニッシュ、メシエらに11〜17倍のオッズをかかげ、今もって前売り上位人気に評価。リズンスターSで土がついたスマイルハッピーも、9〜17倍のオッズを提示され、依然として争覇圏にいる1頭との評価を受けている。彼らに加え、ここへ来て評価が急上昇しているのが、スマイルハッピーに2.3/4馬身差をつけてリズンスターSを制した、S.アスムッセン厩舎のエピセンター(牡3、父ノットディスタイム)である。

 G3パッカーラップS(芝9F)3着馬サイレントキャンディの6番仔で、キーンランド・セプテンバーセールにて26万ドル(当時のレートで約2752万円)で購買されたのがエピセンターだ。昨年11月にチャーチルダウンズのメイドン(d8F)を制し、デビュー2戦目で初勝利をあげると、続くフェアグラウンズのガンランナーS(d8.5F)を6.1/2馬身差で制して連勝。3歳初戦となったフェアグラウンズのG3ルコントS(d8.5F)は2着に終ったが、リズンスターSを逃げ切りで制して重賞初制覇を果たした。

 この結果を受け、ブックメーカー各社は同馬に11〜13倍をかかげ、ケンタッキーダービー上位人気の一角に浮上させている。エピセンターの次走は、3月26日にフェアグラウンズで行われるG2ルイジアナダービー(d9.5F)が有力だ。そこでよい競馬が出来れば、同馬がケンタッキーダービー戦線の主軸となる可能性もあるだけに、ルイジアナダービーは見逃せない戦いとなりそうだ。

 一方、東海岸のガルフストリームパークでは、今週土曜日(3月5日)にG2フォンテンオヴユースS(d8.5F)が組まれており、G1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F)勝ち馬ラトルンロール(牡3、父コネクト)、G1BCジュヴェナイル3着馬ジャイアントゲームス(牡3、父ジャイアンツコーズウェイ)、G3ホーリーブルSの2.3着馬シンプリフィケーション(牡3、父ノットディスタイム)とモードニガル(牡3、父アンクルモー)らが出走の構えを見せている。こちらも注目の一戦と言えそうだ。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング