スマートフォン版へ

ついに始まる欧州障害 チェルトナムフェスティヴァル

  • 2022年03月09日(水) 12時00分

無敗の女王ハニーサックルを制する馬が現れるか


 欧州障害シーズンのハイライトとなるチェルトナムフェスティヴァルが、3月15日から18日まで開催される。

 このコラムでは今週、来週の2回にわけて、各開催日のメイン競走となるレースの展望をお届けしたい。

 まず、初日(15日)のメイン競走として行われるのが、ハードル2マイル路線の最高峰となるG1チャンピオンハードル(芝16F87y)だ。このレースの本命馬については、もはや改めてご紹介するまでもないだろう。様々なところで書かれているし、筆者も機会を見つけてはあちこちで書いてきた女王ハニーサックル(牝8、父スラマニ)に、ブックメーカー各社も1.5倍前後という、ガッチガチのオッズを掲げている。

 18年11月にハードルデビューして以来の成績が、14戦14勝。昨年のこのレースも、2着以下に6.1/2馬身差をつけて快勝している。今季も、緒戦となったフェアリーハウスのハットンズグレイスハードル(芝20F)を8馬身差、前走レパーズタウンの愛チャンピオンハードル(芝16F)を6.1/2馬身差で制し、強さにますます磨きがかかったと高く評価されている。

 ハードルデビューから一貫して同馬の手綱をとってきたのは、女性ナンバーワン騎手のレイチェル・ブラックモアだ。史上最強のレディースタッグが、チェルトナムフェスティヴァル初日を華やかに盛り上げることになるだろう。

 2番手候補の筆頭にあげられているのが、愛国の伯楽ウイリー・マリンズが管理するアプリシエイトイット(セン8、父ジェレミー)だ。ポイントトゥポイント競走を2戦、ナショナルハントフラットを4戦した後、20/21年にハードルデビュー。このシーズンは4戦し、24馬身差で制したチェルトナムフェスティヴァルのG1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)を含めて、無敗の4連勝を飾った。

 ところが、この馬、今季はまだ一度も競馬場に姿を見せていない。マリンズ師によると、シーズンが佳境に入ろうとしていた昨年秋に故障を発症し、2週間ほど調教が出来ない期間があったとのこと。2月5日にレパーズタウンで行なわれたG1愛チャンピオンハードルで戦線復帰のプランがあったのだが、登録しただけで結局は出走せず、ここは1年の休み明けで臨むことになった。

 この馬が順調だったなら、ハニーサックルのオッズも1.5倍ということはなかったろうし、ハニーサックルを倒す馬が現れるとしたら、既成勢力ではなく新興勢力からという考え方もわからなくはないが、この馬に女王の対抗馬という役割を担わせるのは、いささか無理筋な気がする。

 新興勢力で注目すべき馬として、もう1頭、ゴードン・エリオット厩舎のティーオプー(セン5、父マスクトマーヴェル)をあげておきたい。20/21年にハードルデビュー。このシーズンは4戦し、フェアリーハウスのG3ジュヴェナイルハードル(芝16F)を含む3勝をあげた。今季緒戦となったナースのG3フィッシェリーレーンハードル(芝16F)を12馬身差で制して2度目の重賞制覇を飾ると、続くリムリックのG2リムリックハードル(芝16F)も1/2馬身の僅差ながら制し連勝。2月19日にゴウランパークで行われたG3レッドミルズトライアルハードル(芝16F)を11馬身差で制し、3連勝を飾った。骨っぽい相手とはまだ戦っていないが、未知の魅力にあふれた馬だと思う。

 続いて、2日目(16日)のメイン競走として行われるのが、スティープルチェイス2マイル路線の最高峰となるG1クイーンマザーチャンピオンチェイス(芝15F199y)だ。ここにも、ブックメーカー各社が1.6〜1.7倍のオッズを掲げている大本命がいる。英国の伯楽ニッキー・ヘンダーソンが管理するシシュキン(セン8、父ショロコフ)が、その馬だ。

 ハードルを1シーズン経験した後、20/21年からスティープルチェイスに転進したのがシシュキンだ。このシーズンは4戦し、12馬身差で制したチェルトナムフェスティヴァルのG1アークルチャレンジトロフィー(芝15F199y)を含めて、無敗の4連勝をマークした。当初は、12月4日にサンダウンで行われたG1ティングルクリークチェイス(芝15F119y)が今季の始動戦になると言われていたが、レース前日に行なったスコープ検査の結果が芳しくなく、ここを回避。

 仕切り直して出走したのが、12月27日にケンプトンで行なわれたG2デザートオーキッドチェイス(芝16F)で、G1ティングルクリークチェイスを勝っての参戦だったグレナティーン(セン8、グレートプリテンダー)に10馬身差をつける快勝。さらに、1月22日にアスコットで行なわれたG1クラレンスハウスチェイス(芝16F167y)も、スティープルチェイス転向後5連勝中だったエナーガメン(セン8、父デンハムレッド)との一騎打ちを制し、スティープルチェイスにおける無敗の連勝を7に伸ばしている。

 4倍から5倍のオッズで2番人気を争っているのが、クラレンスハウスチェイスの2着馬エナーガメンと、古豪シャカンプルソワの2頭だ。20/21年からスティープルチェイスを跳び始めたのが、エナーガメンだ。このシーズンは4戦し、16馬身差で制したパンチェスタウンのG1ライアンエアノーヴィスチェイス(芝16F)を含む4連勝をマーク。今季緒戦となったコークのG2ヒリーウェイチェイス(芝16F160y)も8.1/2馬身で制して臨んだのが、G1クラレンスハウスチェイスだった。

 シシュキンには1馬身及ばず連勝は止まったものの、3着以下に18馬身差をつけており、この馬も極めて高い能力を持つことを実証している。

 シャカンプルソワ(セン10、父ポリシーメイカー)は、昨年のこのレースの3着馬だ。今季緒戦のG1ティングルクリークチェイスで5着と大きく崩れ、年齢的な衰えが心配されたが、2月6日にレパーズタウンで行なわれたG1ダブリンチェイス(芝17F43y)を12馬身差で制し、このレース3連覇を達成するとともに6度目のG1制覇を奪取。健在ぶりを示している。

 チェルトナムフェスティヴァル3日目(17日)のメイン競走となるG1ステイヤーズハードル(芝23F213y)、最終日(18日)のメイン競走となるG1ゴールドC(芝26F70y)の展望は、来週のこのコラムでお届けする。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング