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伝統の大一番「第54回ばんえい記念」

  • 2022年03月23日(水) 18時00分

今後、安定的な人材確保も大きな問題


 前日に大荒れの天候に見舞われた十勝地方だったが、20日(日)には何とか回復し、帯広競馬場は朝から好天に恵まれた。開門は12時。待ちかねた多くのファンが次々に入場してくる。早々に駐車場は満車の札が掲げられた。

 この日が令和3年度開催の最終日。メインは伝統の大一番「第54回ばんえい記念」である。三連休を利用して本州方面から駆け付けたと思しきファンも数多く入場しており、場内のいたるところで旧交を温め談笑する光景が見られた。やはりこの日だけは外せない、というファンが多いのだ。

 ばんえい記念の出走馬は8頭。しかも、2014年以来のばんえい記念優勝経験馬不在というやや寂しい顔ぶれとなった。1番人気はアアモンドグンシン(セン7歳、西将太騎手)で2.5倍。前走まで目下4連勝中の実績が買われ、支持を集めた。

 それに続く2番人気はメムロボブサップ。リーディングジョッキーの阿部武臣騎手が手綱をとり、こちらも2連勝中だ。2.6倍とアアモンドグンシンにほぼ並ぶオッズを付けている。

 3番人気はアオノブラックで5.2倍、4番人気はメジロゴーリキで5.4倍。10倍を切るのはここまでで、以下は大きく離された支持率であった。

 惜しまれるのは1枠1番キタノユウジロウ。前年このレースで2着に健闘した実績馬だが、残念ながら今年は直前に取り消しとなり、やや「主役不在」の感のあるばんえい記念であった。

 前日の降雪によって、馬場水分はやや多い。第9レースのばんえい記念でも4.8%と、2012年の5.1%に次ぐ高さであった。

 レースは既報の通り、先頭で第二障害を一気に登坂したメジロゴーリキが、そのまま息を入れることなく力強い足取でゴールに向かって重さ1000キロのソリを曳き、危なげなくゴール板を通過した。勝タイムは2分47秒2。

生産地便り

ばんえい記念1着メジロゴーリキ


 2着はメジロゴーリキにやや遅れて二番手で第二障害を越えたメムロボブサップが、約10秒後に入線。3着はアオノブラック。なお、最後にゴールしたキンツルモリウチが入線すると、期せずして観客席から大きな拍手が湧き、今年のばんえい記念が無事終わった。

生産地便り

ばんえい記念2着メムロボブサップ


 優勝したメジロゴーリキは、牡8歳鹿毛、西謙一騎手が騎乗。松井浩文調教師の管理馬。

 馬主・広瀬豪氏。生産・佐渡孝徳氏(幕別町)。通算成績は150戦21勝、2着29回3着24回。獲得賞金は3232万6000円。松井調教師はこのレース6度目、また西謙一騎手は初勝利であった。

生産地便り

ばんえい記念口取


 さて、この日をもって、ばんえい競馬は昨年4月以来となる149日間の開催を終え、総額517億9517万円を売り上げ、昨年比107.12%の史上最高額を記録した。

 帯広市単独開催となったのは2007年のこと。以来、2012年までは低空飛行が続き、開催日数こそ150日間ありながら、年間100億円をようやくクリアする時代が続いた。ちょうど東日本大震災の年、2011年度が底で、この年は103億6442万円と、1日平均でも6000万円台にしかならない厳しさであった。

 それから10年。2021年度は前述の通りちょうど5倍の517億円まで売上げが回復した。まさしく驚異的な伸びと言って差し支えない。

 ただ、冬の時代が長かったことにより、ばんえい競馬を取り巻く環境は依然として厳しいものがある。まず馬資源。生産者の高齢化や戸数減により、馬資源を安定的に確保するのが年々難しくなってきている。また、騎手、厩務員、調教師なども、ばんえい競馬の特殊性を考えれば、今後、安定的な人材確保をどのように進めるかということも大きな問題だ。現在、騎手19人、調教師27人の体制だが、他の地方競馬と交流できない形態の競馬であり、将来を見据えた人材育成も重要になってくると思われる。

 なお、ばんえい競馬は来月22日(金)に令和4年度開催が開幕する。以降、来年3月20日まで、149日間の開催予定である。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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