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先行馬には厳しく、差し馬に流れが向いたレースだった

  • 2022年03月28日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・3/27 高松宮記念(GI・中京・芝1200m)

 後方を追走したナランフレグが直線で内から脚を伸ばし、ロータスランド、キルロードに競り勝ちました。8→5→17番人気の決着だったので3連単は278万円の大穴です。勝ったナランフレグはテンに行ける馬ではないので、つねに後方待機策からの末脚勝負に徹しており、ペースが向かなければ仕方がない、というタイプです。

 今回は前後半が33秒4-34秒9と、前半のほうが1秒5速い前傾ラップでした。現在のコースで施行されるようになった2012年以降、前後半の差が3番目に大きかったので、先行馬にとっては厳しく、差し馬にとっては流れが向いたといえます。なおかつ、重馬場だったので、パワー型が台頭する競馬でした。

 ナランフレグは「父ゴールドアリュール、母の父ブライアンズタイム」という組み合わせで、むしろダートのほうが合うのではないかという印象すら受けます。父ゴールドアリュールはこれまで、エスポワールシチー、コパノリッキー、スマートファルコン、ゴールドドリーム、クリソベリルなど、ダートの猛者を次々と送り出してきたのですが、最晩年になって初めて芝のGI馬を誕生させました。

 2代母の父はオグリキャップと死闘を繰り広げたタマモクロス(1988年の年度代表馬)、3代母ミヤマビューティーはホウヨウボーイ(1980、81年の年度代表馬)の半妹と、80年代の競馬を盛り上げた名馬に関連する血を持ち、牝系は1907年(明治40年)に岩手の小岩井農場が輸入した基礎牝馬フラストレートにさかのぼります。

 海外で日本馬が華々しくビッグレースを勝つ一方、こうした血統背景を持つ馬が国内GIを勝つのは、日本競馬の奥深さを象徴するものといえるでしょう。

・3/26 毎日杯(GIII・阪神・芝1800m)

 ハナを切ったピースオブエイトが最後の直線でベジャールに並びかけられたものの、ゴール前で突き放して逃げ切りました。デビュー以来3戦全勝。この日は前に行った馬、内を通った馬の健闘が目立ったのですが、迷わず先に行った藤岡佑介騎手の判断は正解でした。

 勝ったピースオブエイトは、モーリス、ゴールドアクター、ウインマリリンなどと同じスクリーンヒーロー産駒。母方にサドラーズウェルズを持つ同産駒にはモーリス、ミュゼエイリアンなどがいます。前者は年度代表馬となり種牡馬としても成功、後者は7年前の毎日杯の勝ち馬です。母トレジャーステイトはJRAでダート3勝。

「オアシスドリーム×サドラーズウェルズ」というヨーロッパ血統なので、雨で渋った馬場(稍重)もポジティヴに作用したものと思われます。

今週の血統注目馬は?


・4/2 アザレア賞(1勝クラス・阪神・芝2400m)

 阪神芝2400mに強い種牡馬はエピファネイア。これまでに産駒が15回走って[4-2-1-8]。勝率26.7%、連対率40.0%、複勝率46.7%と抜群の成績です。当レースにはアップデートが登録しています。昨年10月の新馬戦(阪神芝2000m)は12頭立てのしんがり負けを喫したのですが、4ヵ月ぶりの実戦となった今年2月の未勝利戦(阪神芝2400m)は、上がり33秒7の決め手を発揮して快勝しました。

「エピファネイア×ステイゴールド」という長距離向きの血統。今年秋の菊花賞で狙いたいと思わせるほどの素材で、前走と同じコースなら容易に崩れないでしょう。

今週の血統Tips


 ドバイワールドカップミーティングは、日本馬が計5勝という旋風を巻き起こしました。先日のサウジアラビアでは1日4勝、昨年暮れの香港でも2勝と、このところ日本馬は大きな存在感を示しています。欧米勢が本気を出していないシーズンオフのアジアの競馬だから、という意地の悪い見方も、昨年秋、アメリカにおけるブリーダーズカップでの活躍で説得力を失いつつあります。

 国際舞台で日本馬がコンスタントに好成績を挙げれば、IFHA(国際競馬統括機関連盟)における日本馬全体のレーティングにも影響を与えます。国際舞台で日本競馬のプレゼンスが高まることは好ましいことです。ドバイゴールドカップ(G2・芝3200m)をステイフーリッシュで勝った矢作芳人調教師は、インタビューで「個人的にはロイヤルアスコットへ行ってみたい」と語っていました。

 ロイヤルミーティングは6月の第三週にイギリスのアスコット競馬場で行われる開催で、おそらく狙いはアスコットゴールドカップ(英G1・芝19ハロン210ヤード)でしょう。1807年創設の名物レースです。2004年にイングランディーレが挑戦して9着と敗れたのが日本馬唯一の出走です。タフな馬場で約4000mを走るわけですから、サウジアラビアやドバイのレースともまったく別物です。しかし、もし実現するなら本当に楽しみです。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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