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可能性、限界、ジョッキーの役割──川田将雅が語る調教の真実 【In the brain】

  • 2022年04月07日(木) 19時05分
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▲川田騎手の“調教スタンス”とは(C)netkeiba.com


ジョッキーの仕事のひとつに“調教”があります。レースを控える馬に跨ってコンディションを確認し、コンタクトをとりながら本番へと向かいます。

ただ、騎手が調教にどれだけ乗らなければいけないという、ルールはありません。そのため、向き合い方は人それぞれ。なるべく多く騎乗したい騎手もいれば、機会を絞って騎乗する騎手もいます。川田騎手自身は、どのようなスタンスをとっているのでしょうか?

角居元調教師の考え方、ラヴズオンリーユーでの成功事例も交えながら、競馬ファンが知らない“調教で変わること&変わらないこと”を解説します。

(取材・構成=不破由妃子)

ジョッキーが調教に乗るのは必要最低限でいい


 同じジョッキーでも調教への向き合い方はさまざまですが、僕は常々、レース一週前や当週の追い切りなど、基本的には必要最低限の騎乗でいいと思っています。

 なぜなら僕自身、馬を動かすというスキルは高くても、日々の調教で馬を作っていくというスキルは高くないから。

 そもそも、馬を作るという目的では、体重が足りないんです。条件クラスの馬であれば、僕ら程度の体重であっても作ることは可能かもしれませんが、GIに出るような一流馬が必要とする負荷を掛けることは難しい。高い能力がある馬というのは、簡単に時計が出てしまうので、体重の軽い僕らが乗ると簡単に調教が終わってしまい、トレーニングにならないこともあります。

 たとえば、同じ6ハロン83秒であっても、51キロの僕が乗った83秒と60キロの助手さんが乗った83秒では、負荷という意味でまったく中身が違います。何より10キロ近く体重が違うわけですから、純粋にパワーの差もあります。

 ちなみに、安田隆行厩舎の調教助手である景一朗さん(安田隆師の長男)は、プロレスラーみたいなムキムキボディです(笑)。そんな景一朗さんが乗っているからこそ、あの有り余るパワーを持つレッドルゼルをコントロールすることができている。体重もパワーも足りない僕が乗っても、毎日暴走されるだけで調教にならない。日々の調教でいい走りをさせるためには、技術だけではなく、シンプルに体重とパワーが必要な馬もいるんですよね。レッドルゼルは、その顕著な例です。

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▲安田隆行厩舎の調教助手、安田景一朗さんとレッドルゼル(撮影:高橋正和)


 かつて、角居勝彦元調教師に、こう言われたことがあります。

「ジョッキーは馬を動かす側の人間なのだから、

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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