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静内農業高校入学式

  • 2022年04月13日(水) 18時00分

「馬の勉強をするために」遠隔地から入学


生産地便り

会場全景


 去る4月8日(金)、新ひだか町静内田原にある道立静内農業高校の入学式にお邪魔してきた。以前、何度か当コラムで触れた通り、この高校には、全国で唯一の「馬の生産と育成」を学べる生産科学科(他に食品科学科もある)を設置しており、近年、注目度が高まっている。

 ウマ娘ブームによるものか、それともまた別の理由があるのか定かではないが、今春は食品科学科が21名に対し、生産科学科が38名(例年20〜25名程度だったという)の、計59名が新たに新入生として入学した。

 8日午後1時。会場の体育館は、周囲に紅白幕が張り巡らされ、遠く全国各地から駆けつけた多くの保護者が見守る中、厳粛な雰囲気の入学式が定刻通りに開始された。

 蔓延防止措置が解除されたことを受け、入学式は、検温とマスク着用こそ必須となったものの、保護者の他、各方面より来賓と報道陣も受け入れて、ほぼ通常通りの形式での開催に漕ぎつけた。

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新入生宣誓、城越美羽さん(上富良野町出身)


 開会の辞の後、全員が拍手で新入生を迎える。BGMが流れる中を、体育館入口から、担任教師に導かれた新入生たちが次々に一列で入場してくる。最初に食品科学科21名。続いて、生産科学科38名が生花(これも同校で栽培し用意されたものだという)が2列に並ぶ通路を、真っすぐ正面舞台に向かって歩いて進んでくる。

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新入生入場の木部千乃さん


 はるばる沖縄から同校に入学することになった木部千乃(ゆきの)さんの姿もその中にあった。2019年10月に東京競馬場にて開催されたジョッキーベイビーズに沖縄代表として出場した経歴を持つ木部さんは、馬への強い思いから、ついにこの静内農高を志望校として選択するに至り、今回の入学となった。もちろん、同校の歴史でもダントツの最南端の地方からの入学生である。

 全員が入場し終わると、着席し、国歌静聴。コロナ禍のため、感染対策から全員が声を出して斉唱することはできなくなっている。続いて、壇上に立つ佐藤裕二校長を前に、入学生が一人ずつ名前を呼ばれ、「はい」と返答して起立する。それが59名繰り返される。木部さんも元気よく立ち上がり、まっすぐ前に視線を向けていた。

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木部千乃さん名前を呼ばれて起立


 入学者名簿によれば、食品科学科、生産科学科ともに、男女比はほぼ半々といったところであろうか。生産科学科38名中、道外からの入学者は木部さんを含め11名。さらに道内各地からこの高校に入学してきた生徒も数多い。むしろ地元の、自宅から通学する生徒は約3分の1しかおらず、親元を離れての入学者の方が多数派なのだという。これら遠隔地からの生徒の多くが「馬の勉強をするために」この高校を選択し、入学してきたということである。

 学校長祝辞、そして来賓祝辞と続いた後、新入生を代表して城越美羽さん(上富良野町出身)が、宣誓を行った。城越さんもまた、馬の勉強のためにこの学校を選んだと聞く。

 こうして木部さんを始め、生産科学科、食品科学科を合わせて59名の高校生活がいよいよスタートを切ることになった。

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生産科学科38名の新入生たち


 なお、木部千乃さんは、結局、同校の敷地内にある「青雲寮」に入所することにした。通学はもちろん、馬術部の活動にも便利なこと、さらに入寮に際し「遠隔地優先」の便宜を図ってもらえることなどから、寮を選んだという。少なくとも1年間は寮生活を続けるつもりとのこと。

 青雲寮は定員が24名。今春、11名が新たに入寮し、「満室」になったらしい。男子18名、女子6名の内訳で、全て2人部屋である。寮は三食付きで、昼食はお弁当が支給される。交代で教職員が毎日宿直するのでセキュリティも万全である。

 木部さんによれば「入学式の夜に、厩舎で仔馬が生まれたんです」とのこと。牡馬だったという。コロナ禍のため、生徒たちは各自のスマホを通じて出産シーンを見守ったそうだが、もともと寮と厩舎はほぼ隣接しているので、その気になれば、個別にいつでも見に行けるのも寮生活の特権ではある。

 また、11日(月)には、馬術部の体験入部会が行われたという。生産科学科38名の半数以上(22名)がそれに参加したそうである。2年生、3年生の部員がすでに19名在籍しており、それに大人数の新入生が加わろうというのだ。静内農高馬術部は、今年かつてないほどの大所帯になりそうな気配である。

 次回は、その馬術部の活動や、静内農高で行われている「マイスターハイスクール」事業について、もう一度触れてみたい。そして、今後は木部千乃さんのみならず、全国各地や道内のあちこちから入学してきた様々な生徒たちの、馬への思いや夢なども折に触れ紹介して行けたら良いなぁと考えている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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