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【皐月賞】ダノンベルーガ、ドウデュース…注目5頭を松本場長が解説! #NFしがらき直行便

  • 2022年04月15日(金) 18時02分
ノーザンファームしがらきが管理をサポートする有力馬について、松本康宏場長にお話をうかがう当コーナー。今回は拡大版として、皐月賞に出走予定のダノンベルーガ、デシエルト、キラーアビリティ、ドウデュース、ジャスティンパレスの5頭についてインタビューしました。

(取材・文=netkeiba編集部)

ダノンベルーガ


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無傷の2連勝で共同通信杯を制したダノンベルーガ(撮影:下野雄規)


──出走決定までに時間を要しました。右トモの問題などお聞かせください。

松本 しがらきに来たのもデビュー戦を勝った後で、当時から右トモが弱点だということは聞いていました。しがらきで馬を見ると明らかに傾いているというか、トモの左右差がある馬だったので、堀先生からもその点はよく注意して見ておいてくださいという話はありました。実際に乗った人は、多少気になるところはあるけどそれ以上悪くなるわけでもなく、十分やれると思うということで共同通信杯に送り出しました。結果すごいパフォーマンスで勝って、次どうするかという話の時にもう少し時間をかけてみたいと堀先生から聞きました。

 しがらきから美浦トレセンに入れた時にやはり馬体重がかなり減ったようで、この時期に輸送を繰り返すよりは美浦の方で様子を見ながら慎重に判断したいと。特に右トモが悪い馬は、左回りの方が最後の直線で右手前に変えた時に左トモ推進に変わるという点では、左回りの競馬の方がこの馬はパフォーマンスを発揮しやすいということや、右回りのコーナーに不安があるということは仰っていましたので、そのあたりは美浦トレセンのウッドチップで調教していく中で、右回りを使うかどうか慎重に判断したいとのことでした。

 できればこの馬でダービーということを最大目標としてオーナーさんと話しているので、ダービーに向けて使った方が良いのか、良くないのかというところを慎重に見極めたいと考えていました。僕も正直マスコミさんと同じタイミングで知ったようなものなので、本当にギリギリまで堀先生とスタッフの方で状態を見極めたんだなと思っています。

──この中間は右回りへの対応を入念にチェックしていたのですね。

松本 僕の記憶では、右回りのウッドチップで追い切りをしたらトモが流れてしまうのではないかということをすごく心配されていた気がします。他に故障であったり、負担が大きくかかるというところも心配されていました。

──川田騎手も問題ないと発言されました。

松本 僕も直接聞いたわけではないですが、記事を読んだ中ではそういう風に騎手から言っていただいたみたいです。本番に向けて何の不安もないと調教師さんも判断したのでしょうから、そこに関しては信頼しているといいますか、期待してみたいなと思っています。


デシエルト


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デビューから2戦はダートで走っていた若葉S覇者デシエルト(撮影:高橋正和)


──1週間前には猛時計をマーク。今の状態についてお聞かせください。

松本 競馬を使って帰ってくるたびに逞しくなっています。元々すごく線が細いイメージだった馬なんですけど、今回は送り出す時点でだいぶよくなってきたなと感じました。ただ正直、もっとしっかりとしてほしいなというところはあり、まだまだ伸びる余地はあるなとは思っています。

──さらに良化の余地があるんですね。

松本 骨格自体がだいぶ大きいというかしっかりしているので、馬体重的にはそれなりにあるのですが、肉付きの面でいうとまだ細いかなと思います。ただ、あれだけ走るので問題はないと思いますし、まだまだ成長して変わってくるなぁという感じはしています。

──皐月賞だけでなく、その先も期待が大きいということですね。

松本 プラスという意味の成長であれば楽しみですが、一方で気性面は血統的にかなり危ういところを持っている馬ですので、精神面・気性面でできるだけおかしくならないようにと厩舎の方も考えてくれていますし、しがらきの方でも考えているところです。お母さんのアドマイヤセプターという馬も僕らが携わっていまして、お母さん自体すごく能力があるけど気性が邪魔しているなという馬だったので、どっちも引き継いで今のところバランスよく結果が出ているのかなと考えています。

──1、2番手の競馬で3連勝。皐月賞のレース展望は?

松本 他にも逃げる馬がいるので、この馬のペースで走って、それが逃げる形になるのか、2、3番手になるのかは分からないです。

 この間も岩田騎手の話を聞くと、3コーナーまで引っ掛かりっぱなしでそこからゴーサインを出して勝ちきったような競馬でした。まだまだ底が分からないというか、どれくらいのペースで行ったらバテてしまうのかというのも分からない馬ですし、そのあたりは騎手の感覚に頼るしかないのかなと思っています。

──安田隆厩舎と岩田康誠騎手のゴールデンコンビについて。

松本 コンビとしてはすごくいいのかなと思っています。しっかりと馬に何が大事かというのを考えてくださっているので、僕としては非常に心強いと思っています。この馬のローテーションに関しては、若葉S後に皐月賞に向かうにあたって、馬のテンションや調教面での難しさを考慮して、厩舎サイドの方から一旦放牧に出してできるだけ直前の入厩でさっと仕上げたいという話がありました。

 心肺機能に関しては十分にできていますし、これ以上に上積みを求める必要がないので、あとは能力を発揮できるように体の使い方であったり、気性面が悪くならないようにということで、そのような判断をされました。僕らもそのような共通認識を持って取り組ませてもらったので、それが結果に出るかどうかという部分で非常に楽しみにはなっています。

──最後にデシエルトに対する期待についてお聞かせください。

松本 僕としてはこの馬はどこまでいくんだろうと考えていますから、どこが目標というか、一戦一戦良い精神状態で使うのが目標みたいなところですね。


キラーアビリティ


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ホープフルSを制した2歳王者キラーアビリティ(撮影:下野雄規)


──ホープフルSからの直行となります。

松本 皐月賞を使うにあたって共同通信杯だとホープフルSからのローテーションとしては間隔が狭い分、疲れも取り切れないなと感じました。過去にホープフルS、弥生賞、皐月賞と使った馬でもよほど体調面での回復力が凄い馬でない限り、弥生賞の疲れを残した状態で皐月賞に向かうことが多かったので、調教師とクラブとの話で直行に決まりました。

──ダメージが残っていたのですか?

松本 流石に時計も早かったですし、ペースもそれなりに流れて、力のいる馬場でした。体もダメージがあるような体つきでしたが、回復力が意外と良くて、その後の立ち上げに関しては思ったよりダメージは無いのかなという感じはしました。GIで激走した分、ある一定の疲れは見られたということですね。

──直近の状態をお聞かせください。

松本 しがらきでの調教をやりすぎると気持ちが入りすぎたり、疲れが残ってしまって、トレセンの中での調整に苦労した経験が過去にありました。今回は疲れをしっかりとることと、折り合いをつけられるように、ある程度のペースで良い体の使い方ができるようになった上でトレセンに送り出すという目標でやっていました。

──1週前追い切りには横山武騎手が騎乗。追い切りはどのように映りましたか?

松本 間隔が開いた分、2週前追い切りが終わった段階では斉藤崇史調教師もまだちょっと重いかなという話をされていました。ですが、1週前追い切りで走る馬を追いかける形での併せ馬をしっかりとやったので、今までの傾向通りであれば十分に間に合うと思いますという話は頂きました。

──本番直行ローテが増えています。不安な点などはありますか?

松本 ローテーションに関しては何の不安もないかなと思っています。勝負付けという意味では、まだ戦ったことがない馬が多いですし、キラーアビリティも幅が出て成長したような感じも見受けられます。他の馬についてもこの時期どんどん成長していくと思うので、成長度合いの差であったり、調整の順調度合いの差というところで、どういった競馬になるのか非常に楽しみです。


ドウデュース


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前哨戦の弥生賞は2着。2歳マイル王のドウデュース(撮影:下野雄規)


──前走・弥生賞(2着)を振り返って。

松本 2着ということで、今まで負けたことがなかったんですが、負けてしまったことは残念です。中山の2000mを初めて走った中で、競馬の内容はすごく良かったと思いますし、武豊騎手のコメントを読んでも本番に向けて良いトライアルになったということでした。

 その後はしがらきに帰ってきていないので、馬の状態は詳しく分からない部分がありますが、友道調教師からさらに良くなっているという話も聞いているので安心しています。

──1週前追い切りでは武豊騎手が体調を褒めていました。牧場の手応えは?

松本 元々弥生賞から皐月賞のローテは聞いていましたし、その後にダービーも控えているので、土台をしっかりと作って成長を促しつつというコンセプトで調教していました。中間では全く問題ないというか、馬もどんどん成長して良くなっているなという感じがしたので、十分に上積みはあるのかなと思います。特にクラシックや芝の中距離以上では、先日勝たせていただいたポタジェもそうですが、友道厩舎はそのあたりのノウハウを持っている厩舎なので心配はしていません。

──弥生賞では進路が厳しい場面も。この影響はなかったでしょうか?

松本 特には無いと聞いているので、心配はしていません。


ジャスティンパレス


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ホープフルSでは2着と好走したジャスティンパレス(ユーザー提供:マックイーンのはなさん)


──ホープフルS(2着)を振り返って。

松本 オーナーさんには申し訳ないですが、正直思ったより走ったなというくらい、僕らが想像した以上のパフォーマンスを発揮してくれました。まだまだ先の馬で、華奢で力強さも足りない中での2着なので、しっかりしたら結構やれそうだなという手応えを感じました。

──期待以上の素質があったのですね。

松本 それを引き出したのはクリスチャン・デムーロ騎手かもしれないですが、バラバラの走り方をしつつもしっかりと末脚を伸ばした2着ということで、トモがしっかりしたら本当にやれてしまうのかなという印象です。

──本番の強みはどの部分でしょう?

松本 一番の魅力はディープインパクト産駒というところで、未知の力がありそうな中であれだけのパフォーマンスができて、今後の成長力という意味ではすごく楽しみがあるかなと思っています。特に乗り難しそうではなく、扱いやすそうなので、その点は良いのかなと思っています。

──前走後はどのような調整を?

松本 しっかりと成長を促しつつ、体全体の肉付きを良くするということでうちの厩舎で取り組んでくれました。

──いい状態で送り出せたのですね。

松本 送り出した段階ではこんなに良くなるのかというくらい良くなったので、馬にとっては非常に良いタイミングなのかなと感じています。

 適度に負荷をかけて、その後疲れを取った中でさらにトレーニングを積んで、体に良い変化が出たというか、馬体面で一番変わったのはこの馬じゃないかなと思います。こんなに幅が出るかなというくらいしっかりしていたので、体つきがすごく良くなりました。そういう意味では、競馬で伸びしろがどういう形で出るかを楽しみにしています。

──今回は兄のミルコ・デムーロ騎手に乗り替わり。どんなレースを期待しますか?

松本 弟に負けないように1着を取ってもらえたらいいなと思いますし、どういう競馬をするか楽しみです。パドックでの歩き方や身のこなし方など成長している部分も楽しみにしていますし、ファンの方にも注目してもらいたいと思います。

──管理する杉山晴紀調教師の手腕をどのように見られていますか?

松本 馬を成長させつつ、使いつつという形で非常にバランスが良いと思います。先日大阪杯で3着だったアリーヴォに関しても、あそこまで成長するかというくらいどんどん馬が良くなり、非常に良い状態で競馬を迎えました。勝ち馬と遜色のない競馬をしましたし、あそこまで走るというのは僕も含めて想像していませんでした。

 杉山先生は、馬を成長させながら使って結果を出してくれるというところで期待しています。今回ジャスティンパレスも成長をどういう形で見られるか楽しみにしています。

──皐月賞にはしがらきが携わる馬が6頭も出走します。意気込みをお願いします。

松本 携わっている厩舎も違いますし、みんなの思いも違いますが、そういった中で良い競馬を見せてほしいなと思っています。




(文中敬称略)

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