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【フローラS】キャリア3戦目の勝利は長い歴史の中で2頭目の快挙

  • 2022年04月25日(月) 18時00分

勝負内容は時計以上の評価


重賞レース回顧

ねじ伏せるように差し切ったエリカヴィータ(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 4月に入ってから行われた平地重賞はGIを中心にここまで11レース。そのうち1番人気馬が勝ったのはGIII「アーリントンC」のダノンスコーピオンだけ。そのほかの10競走はすべて伏兵人気馬が勝っている。また、今年になって行われた平地GIは5競走。1番人気馬は5連敗中でもある。

 5月1日の天皇賞(春)には、1番人気で3月の阪神大賞典を制したディープボンドと、同じく日経賞を1番人気で勝ったタイトルホルダーが登場する。波乱連続の流れを断ち切れるだろうか。

 力強く伸びて勝ったのは、休み明けで5番人気馬の、ここが3戦目のエリカヴィータ(父キングカメハメハ)だった。かつては7-10戦目くらいで勝つのが一般的で、4戦目に勝った馬に1976年のシービークイン(ミスターシービーの母)がいた程度。近年は4戦目で勝つぐらいはふつうだが、長い歴史の中(1800mの4歳牝馬特別当時を含め)、2014年のサングレアルに続き、57年間で2頭目だった。

 エリカヴィータは牝馬のエースを送ることで知られる国枝調教師の管理馬。アーモンドアイのように最初から意図した日程ではないが、見た目とは違ってマイペース「レースの前後半は(60秒2-60秒2)」で逃げたパーソナルハイ(父ディープインパクト)を、勝負強く、最後はねじ伏せるように差し切った。時計以上の評価をしたい。

 最近10年でフローラSをステップにオークスを3着以内に好走した馬は、昨年のオークス馬ユーバーレーベンなど8頭いる。フローラS勝ち馬に限ればオークス成績【0-3-1-6】でもある。入念に調整しての出走だったので、反動の危険は少ないだろう。ただ、母マルシアーノ(父フジキセキ)は最優秀短距離馬だったキンシャサノキセキの全妹。キンシャサノキセキは思われるほど短距離型ではないが、距離2400mには少なからぬ死角はある。

 2着パーソナルハイ(条件賞金400万円)は、近年では珍しい桜花賞からの折り返し組。桜花賞では直線で寄られる不利がありながら、勝ったスターズオンアースと0秒2差の6着だった。以前ならもっと人気になっていたかもしれない。最近10年ではただ1頭、桜花賞から折り返しての優先出走権獲得馬となった。今回が8戦目。少々きびしい日程だろうが、こちらは世界の矢作厩舎の所属馬。

 「フローラS2着→オークス2着」馬は最近10年では2013年のエバーブロッサムがいる。父は同じディープインパクト。パーソナルハイの母パーソナルダイアリーは、芝9Fの米G1デルマーオークスを人気薄で勝っている。

 雨の影響が多少あって芝コンディションが微妙だったが、勝ったエリカヴィータ、2着パーソナルハイだけでなく、外から先行した3着シンシアウィッシュ(父キズナ)、4着マイシンフォニー(父ディープインパクト)まで、みんな内ラチ沿いを通った馬ばかり。開催1週目とあって、明らかに内を回った馬が有利だった。

 シンシアウィッシュは、最初はかかり気味に行く構えを見せたが、内のパーソナルハイに主導権を譲ってからはスムーズに2番手追走、自身の1000m通過は61秒0前後。少しも速くなかった。新馬勝ちのあと、これで5戦連続して5着以内。詰めが甘いのは確かだが、自己条件の1勝クラスなら確勝級だろう。

 4着マイシンフォニーは、向こう正面に入って落ち着くまで、ずっとかかり気味だったのが痛い。4分の3同血の兄マイラプソディ(父ハーツクライ)にもレース運びの難しさがある。毎回人気なので妙味はないが、シンシアウィッシュと同様に2勝目に時間はかからない。

 人気のルージュスティリア(父ディープインパクト)は、10キロ減。そう細くはなかったがパドックから落ち着きがなかった。5馬身近くも出遅れた前回とは逆に、気負って好スタートを切ると、激しく行きたがってしまった。長期休養をはさんでこれが3戦目。残念ながらあまりにも若かった。強気にクラシックを狙ったのだから仕方がない。素質は衆目一致。立て直しての再スタートになる。

 同じオーナーのもう一頭の人気馬ルージュエヴァイユ(父ジャスタウェイ)は、前2戦ともにスタートに課題があっただけに、1番枠が大きな死角だった。出負けしたわけではないが、ダッシュが鈍い。東京の芝2000mで、まだキャリア2戦の牝馬がダッシュつかずでは、次つぎに外から来られて行く場所がない。

 直線で外に回ろうとしたが、そこでも再三前がカベになって、まともにレースができたのは最後の200mくらいだった。上がりは最速の33秒6。運がなかった。このデインドリーム(凱旋門賞馬)の孫は、多頭数では外枠を引きたい。

 2番人気のラスール(父キタサンブラック)は流れに乗っていたが、追って案外だった。距離2000mは合っていると思えたが、現時点ではマイル戦向きということか。これからの成長に期待したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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