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【天皇賞・春 AI予想】レースの傾向からも魅力十分! AIの注目馬は波乱を演出できるか

  • 2022年04月25日(月) 18時00分

フローラSは単勝13.6倍のエリカヴィータが勝利(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)


2017年以降は2016年以前に比べ堅く収まりがち


AIマスターM(以下、M) 先週はフローラSが行われ、単勝オッズ13.6倍(5番人気)のエリカヴィータが優勝を果たしました。

伊吹 好スタートを決め、道中はインの4番手を追走。ゴール前の直線に入っても脚色が衰えませんでしたし、特に残り200mを切ったあたりからの伸びが素晴らしかったですね。パーソナルハイ(2着)やシンシアウィッシュ(3着)とは最終的なタイム差こそ0.1秒でしたが、着差以上の完勝だったと言って良いでしょう。

M エリカヴィータは前走のフェアリーSで10着に敗れていました。

伊吹 この時はダッシュがつかず、後方からの競馬になってしまいましたね。3〜4コーナーでは大外を回らざるを得ず、さらには他馬と接触する不利もありましたから、着順は度外視すべきだったと思います。能力の高さを証明したエリカヴィータ自身はもちろん、休養を挟んで立て直した陣営も、テン乗りで見事にエスコートしてみせた田辺裕信騎手も、お見事と言うほかありません。

M 優先出走権を獲得したオークスでも注目を集めそうです。

伊吹 桜花賞組の評価は東京芝2400mに対する適性を含めて議論が分かれるところでしょうし、今回の勝ちっぷりや、もともと1歳時のセレクトセールで1億8700万円の値が付いた馬であることを考えても、上位人気に推される可能性が高いのではないかと思います。狙うにしても嫌うにしても、買い目作りのポイントになるのではないでしょうか。

M 無事に出走してきた場合、伊吹さんはどう評価する見込みですか?

伊吹 オッズもメンバー構成も見えていない段階なので、現時点では何とも言えません。ただ、一点だけ気になるのは、今回の馬体重が442kgどまりだった点。2017年以降のオークスを見ると、前走の馬体重が450kg未満だった馬は[0-1-1-31](3着内率6.1%)と苦戦しています。他に大きな不安要素のない馬がいたら、そちらの方を高く評価することになるでしょうね。

M 今週の日曜阪神メインレースは、古馬長距離チャンピオン決定戦と位置付けられている天皇賞(春)。昨年は単勝オッズ5.2倍(3番人気)のワールドプレミアが優勝を果たしました。ちなみに、その2021年は3連単の配当が1万1490円。高額配当決着となる年も少なくない印象なのですが……。

伊吹 近年は比較的順当な決着が続いていますね。2017年以降の過去5回はいずれも3連単の配当が10万円を超えていないうえ、そのうち3回は2万円未満の低額配当でした。もっとも、2009〜2016年の8回はいずれも3連単の配当が10万円を超えていましたし、単勝オッズ159.6倍(14番人気)のビートブラックが優勝を果たした2012年は3連単145万2520円の高額配当決着。競馬歴の長さによって印象が変わるレースかもしれません。ちなみに、過去10年の単勝人気順別成績がこちら。


M 単勝1番人気馬は5連対。好成績とまでは言えないものの、決して悪くはない数字です。

伊吹 そう見えますよね。ただ「過去10年」という括りだとどっちつかずに映りますが、2017年以降の該当馬5頭がすべて連対を果たしている一方で、2016年以前の該当馬5頭はいずれも4着以下に敗れていました。2016年以前に限ると、単勝1番人気の支持を集めた馬のうち、3着以内となったのは2008年3着のアサクサキングスが最後、連対を果たしたのは2006年1着のディープインパクトが最後。「ひと昔前までは波乱続きだったものの、最近は堅く収まりがち」というのが、このレースに対する正しい認識と言えるでしょう。

M そんな天皇賞(春)でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、シルヴァーソニックです。

伊吹 Aiエスケープらしいチョイスですね。それなりに注目を集めそうですが、人気の中心ということはまずないでしょうし、手頃なオッズがつくのではないかと思います。

M ここ3戦はいずれも3着。ステイヤーズS・万葉S・阪神大賞典と、3000m以上のレースで健闘してきました。重賞未勝利、なおかつGI初挑戦の身ではあるものの、距離適性の高さは証明済みですし、狙おうと考えている方は少なくないでしょう。

伊吹 Aiエスケープが高く評価しているわけですから、能力や適性に関してはそれほど心配しなくて良いはず。私はレースの傾向を参考に、この天皇賞(春)が合うタイプなのかどうかを検証していきたいと思います。

M まず気になるのは実績面。重賞未勝利馬を積極的に狙っても良いのでしょうか。

伊吹 さすがにこの点は不安要素と言わざるを得ません。過去10年の3着以内馬30頭中23頭は、前年以降にステイヤーズSを除く2200m以上のGI・GIIで優勝を果たしていました。


M 重賞未勝利馬はもちろん、GIIIしか勝ったことのない馬も評価を下げた方が良さそうですね。

伊吹 2021年1着のワールドプレミアと2021年3着のカレンブーケドールはこの条件に引っ掛かっていましたが、この2頭はいずれも前々年下半期のGIで連対を果たしていた馬。これまでの実績を素直に評価すべきレースと言えるでしょう。

M この傾向を踏まえると、シルヴァーソニックの戦績は物足りなく映ります。

伊吹 ただし、今年の天皇賞(春)は“2021年以降、かつJRA、かつ2200〜3200m、かつGI・GIIのレース”において1着となった経験のある馬がタイトルホルダー・ディープボンドの2頭しかいません。

M おおっ、確かにその通りですね。今年のメンバー構成ならチャンスはあると見て良いのでしょうか。

伊吹 良いと思いますよ。実績以外の部分をチェックしてみると、シルヴァーソニックは不安要素が比較的少ない方です。例えば、2014年以降の3着以内馬24頭中21頭は、前走の4コーナー通過順が6番手以内でした。


M 前走で積極的な競馬をしていた馬の方が信頼できるんですね。

伊吹 さらに、同じく2014年以降の3着以内馬24頭は、いずれも父がサンデーサイレンス系種牡馬でした。


M 特別登録を行った馬のうち、前走の4コーナー通過順が6番手以内、かつ父がサンデーサイレンス系種牡馬なのは6頭だけ。レースの傾向からもそれなりに強調できる一頭と言えるのではないでしょうか。

伊吹 おっしゃる通りですね。そのうえAiエスケープの評価も高いわけですから、押さえておくに越したことはないでしょう。私自身はごく少点数の買い目で勝負する予定ということもあり、まだシルシを打つと決めたわけではありませんが、最後の最後まで当落線上に残るのはこの馬だと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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