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静内農業高校馬術部

  • 2022年05月12日(木) 18時00分

大所帯の同部が抱える、公立高校であるが故の悩みとは?


生産地便り

静農馬術部、練習風景1


 去る5月7日(土)、晴天に恵まれたこの日、静内農業高校馬術部の練習を見学させて頂いた。大型連休の終わりがけのこの日、静内農校に隣接する二十間道路の桜並木も満開を過ぎてかなり散っており、訪れる見物客の車はまばらであった。ただ今年の連休中は、交通渋滞が発生するほどの車列であったという。

 午前9時過ぎに敷地の奥にある厩舎にお邪魔する。すでに馬術部員たちが集まり、活動が始まっていた。詳細は後述するが、とにかく部員が多い印象だ。厩舎の中にも、繋ぎ場にも、馬場内にも部員たちがそれぞれの役目を与えられ、働いている。そして、近くを通った部員たちは例外なく私にも大声で挨拶してくる。礼儀が徹底しているのであった。

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馬術部全員集合


 準備のできた人馬から順に馬場に入る。静内農高の馬場は、厩舎の奥にある幅50m、奥行き70mほどの角馬場のみで、露天である。覆馬場はないので、よほどひどい降り方にならない限りは全てこの角馬場で練習を行う。

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角馬場全景


 この日、馬場入りしたのは7頭であった。静内農高には現在12頭の馬が繋養されており、そのうち、繁殖牝馬が2頭、入学式の夜に誕生した当歳馬1頭、昨年生まれた1歳馬が1頭、残り8頭が馬術部の活動に供される乗用馬という内訳である。8頭のうち、1歳馬の“相棒”として1頭が一緒に放牧されているため、残り7頭での練習ということのようだ。

 角馬場を手前と奥とに簡易牧柵で仕切り、手前のスペースを広く取って、障害が設置されている。1列に4か所設置され、最初はクロス障害に横木が組まれていた。

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静農馬術部、練習風景2


 3年生の部員たちが、馬上で声を発しながら元気よく馬上体操を行う。手前の障害が置かれた広いスペースに5騎、奥の方に2騎と別れて、奥の組は別メニューでの練習である。

 手前の広いスペースに設置された障害の近くに、顧問の小林忍先生がいた。馬上体操が終わった順に、小林先生が1人ずつ指名して、クロス障害を飛ぶよう指示する。細かい動きをチェックし、アドバイスを送る。その都度、馬上の部員は「はい」と大声で応える。

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馬術部員を前に小林忍先生が連絡事項を伝える


 馬場の北西側の一段高くなった道路上から、2年生と思しき部員が、練習風景をずっと動画撮影しているのが見えた。後で各人のフォームなどをチェックする際の資料にするのであろう。

 クロス障害を飛んだ後は、4番目のみ横木を高さ80センチ程度に調整した障害にして、再び、飛越が再開された。1頭「反抗」する馬が出て、その時には小林先生が乗り替わり、しばらく調教し直した後に、また生徒が騎乗した。この日は、こうした基本練習が約2時間続けられた。

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木部千乃さん


 1年生部員として馬術部に入部した木部千乃さんの姿もあった。1年生たちは、まず馬たちが暮らす厩舎の馬房の掃除が最初の仕事である。フォークやボロミ(馬糞や汚れた寝ワラなどを集めて入れる大型の塵取りのようなもの)など使って、みんなで作業をしていた。

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騎乗馬の蹄底を洗う木部さん


 堆肥場までボロや寝ワラを運ぶのは、リヤカーである。積載量を増やすために男子部員が上に乗ってボロを踏みつけたりしている。こうした作業もまた馬術部には欠かせない部分で、馬に乗るよりも重視される基本的な労働だ。掃除が終わると、馬房に新しい寝ワラを敷く。

 これらの厩舎作業を指導するのは2年生部員である。馬術部(に限らないのだろうが)は、上下関係が徹底しており、1年生たちは、まず馬に乗るよりもこういう下作業に慣れるところから始まるのだ。

 11時をだいぶ回った頃、3年生たちの馬場での練習も終わりに近づいた。そこで「上がり」の直前のわずかな時間を、1年生が乗せてもらえることになった。ただし、希望者と比較すると馬の方が少ないため、じゃんけんで騎乗者を決めることになり、木部さんが期せずして乗せてもらえることになった。入部して以来、これが2度目の騎乗だという。時間にすれば、10分〜15分程度であったろうか。木部さんは、ゆっくりと馬上の空気を味わうように馬場を周回していた。

 騎乗した後は、馬を繋ぎ場に連れて行き、脚元を洗ったり、手入れをしたりするのも必須の作業である。

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作業が終わった1年生たちが先輩の練習風景を見学する


 練習が終わり、厩舎前に全員が集合したのを見て、改めて静内農高馬術部がいかに大所帯であるかということが分かった。学年ごとに3列に並んでみると圧巻である。3年生9人、2年生10人、1年生は15人という。馬8頭に対し、部員が34人というのは、どう考えても頭数が少ないのだが、公立高校という制約もあり、部員数に合わせて馬を自在に増やすというわけにはいかない事情があるらしい。厩舎や馬房数の制約もさることながら、飼料敷料、馬具などすべてに資金が必要で、このあたりが何とも悩ましい部分ではある。この大所帯をどのように運営していくか、が今後の課題である。

 なお、入学式当日(4月8日)の夜に同校の厩舎で1頭の当歳馬が誕生した。父ノーブルミッション、母ナリタトップスターの牡馬で、ちょうど1ヵ月目を迎えようとしていた。

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ナリタトップスターの2022


 生産科学科の生徒たちの愛情をたっぷり受けて育っているせいか、まるで物怖じしない。

 私がカメラを向けていると、興味津々の態で近づいてきて、盛んにちょっかいを出してくる。どこを触っても全く意に介さないほど人間に馴れている。ほとんど「ペット」に近い感じである。このまま順調に育てば来年夏のセールに上場されることになるが、この馬の成長過程もまた気になるところだ。

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岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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