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【オークス】次は人気の中心で3冠制覇へ挑む

  • 2022年05月23日(月) 18時00分

発走遅延が結果に与えた影響は少なくなかったか…


重賞レース回顧

桜の女王スターズオンアースが樫の舞台も制した(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 桜花賞馬スターズオンアース(父ドゥラメンテ)が牝馬クラシック2冠制覇を達成した。1952年のスウヰイスーを出発に16頭目の2冠牝馬となったこの牝馬は、大接戦だった桜花賞をハナ差の勝利で単勝1450円(7番人気)。これに続き、今回も大外18番枠を引いたこともあり、単勝650円(3番人気)。2冠牝馬としては桜花賞の単勝配当も、オークスのそれも、もっとも高配当となった。

 まだ衆目一致のスターホースともいえないが、グレード制導入後の春の2冠牝馬で、秋の秋華賞(3歳限定当時のエリザベス女王杯を含む)に出走した馬は、「2020年デアリングタクト、2018年アーモンドアイ、2012年ジェンティルドンナ、2010年アパパネ、2009年ブエナビスタ、2003年スティルインラブ、1993年ベガ、1987年マックスビューティ、1986年メジロラモーヌ」の9頭。

 その成績は新しい順に、「1着、1着、1着、1着、降着3着、1着、3着、2着、1着」。素晴らしい成績で凡走はない。スターズオンアースが秋華賞に出走するとき、今度はさすがに人気の中心だろう。2400mまでこなした自信は大きい。

 スターズオンアースは、最外18番枠が嫌われたが、発走時刻の大幅な遅れで、先手を主張しそうな馬のスタートが良くなく、外枠の伏兵ニシノラブウインク(父エピファネイア)の作ったペースは、前後半の1200m「1分13秒1-1分10秒8」=2分23秒9(上がり34秒8)。みんな初距離の2400mにしてもかなりスロー(ここ10年では速い方から7番目)。

 レース前に輪乗りで15分以上も待たされた内面のロスを心配したのか、強気に出る馬はいなかった。先行タイプが次つぎに「あわや…」の場面を作ったが、粘ったニシノラブウインクは1秒1差の8着。坂上で躍り出た新星アートハウス(父スクリーンヒーロー)も最後は7着だった。

 ルメール騎手の勝ち馬は、バラけた隊列の8-9番手あたり。落ち着いていた。4コーナーで気合を入れながらも本気のスパートはみんなが苦しくなる最後の1ハロン。スターズオンアースの上がりは最速の33秒7(最後推定11秒5)。ルメール騎手のもっとも得意とする最後の最後に集約される切れ味勝負だった。

 スターズオンアースの祖母スタセリタ(その父Monsun)は仏オークス馬。2018年のオークス馬ソウルスターリング(父Frankel)の母であり、父ドゥラメンテの祖母エアグルーヴも、その母ダイナカールもオークス馬。オークス色のもっとも濃い血統背景を持っていたのがスターズオンアースでもあった。

 また、ドゥラメンテの父キングカメハメハは、孫世代のスターズオンアースが勝って、2着スタニングローズは自身の送った最終世代の直仔。キングカメハメハは、後継種牡馬争いで一歩ディープインパクトに先んじ、孫世代の活躍でもリードしているが、ディープインパクトの後継種牡馬は日本だけで50頭に達しようとしている。ディープ系の攻勢はこれからという図式になり、2大種牡馬の戦いは今後も続く。

 そのスタニングローズは、今年の出走馬の中では数少ない3勝馬。一連の牡馬相手の重賞でも高い評価を受けていた馬であり、フラワーCから間隔を空けての挑戦。今回は活力にあふれていた。D.レーン騎手の理想の位置でのレース運びも、直線で外に出してのスパートも文句なし。勝ったにも等しいが、残念ながら勝ち馬の総合力が一枚上だった。

 3着ナミュール(父ハービンジャー)も、現時点での能力は出し切ったと思える。不安のあった2400mもこなした。桜花賞後の懸命の立て直しで、気配は上々だったが、426キロにまで減った馬体が戻っていなかったのが痛かった。

 1番人気のサークルオブライフ(父エピファネイア)は、かなりカリカリした状態での本馬場入り。そこへ追い打ちをかけたのが、輪乗りに入ってサウンドビバーチェがラブパイローに蹴飛ばされて落馬逸走。大きく発走時刻が遅れたことだった。あの状態で15分もゲート前で輪乗り状態では平常心を失っただろう。出遅れて仕方なく最後方追走。後半が「1分10秒8-58秒5-上がり34秒8」の高速決着になっては、まったく対応できなかった。

 出走馬のレース前の逸走による遅延は仕方がない。だが、捕まったサウンドビバーチェは、3コーナーから係員などに誘導されてスタート地点に戻っている。3コーナー近くの馬体検査では発走可能と判断され、だから時間をかけてスタート地点に戻ったように見えた。そこで石橋騎手が蹴られた顔面チェックを求め、それで負傷が判明。

 10数分も要しての「競走除外」の発表には連携(連絡)不足があったのではないか。オークスである。逸走しても疲れがなければ、だれだって出走させてあげたいとする気持ちになるが、連絡(チェック)が不十分だったように見えた。10数分の遅延で、人気のサークルオブライフなどに明らかに大きな影響が出た。

 また、主導権を握るのではないかと思えたウォーターナビレラ(父シルバーステート。武豊騎手)は1番なのにゲート入りを遅らせたが、激しく入れ込んで暴れる寸前だった。出遅れというより、馬は平常心を失った状態。スターターはこれ以上待てない、そんなスタートだったかもしれない。遅延には改良(反省)すべき点があった。

 2番人気のアートハウスは見せ場十分の7着。ペースを考えると物足りない失速だったが、強敵相手との対戦は少なく、ここまでまだ3戦。勝てばデアリングタクトなどとともに、現体系になって最少キャリア優勝馬となるところだったが、初の左回り、初の遠征競馬などの不利に加え、まだ成長の途上も敗因だろう。

 善戦止まりに終わった5着プレサージュリフト(父ハービンジャー)、6着ルージュエヴァイユ(父ジャスタウェイ)も、アートハウスと同じく戦歴3戦だけ。秋には先着を許したグループに追いつけるだろう。

 快走に期待したベルクレスタ(父ドゥラメンテ)は、直線の伸びを欠いて10着。落ち着いて前回以上の好状態に見えたが、スタミナ不足だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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