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エリザベス女王の即位70年記念「プラチナム・ロイヤルアスコット」

  • 2022年05月25日(水) 12時00分

注目は女王陛下ゆかりの牝系血統の2頭



 エリザベス女王の即位70年を記念しての開催となる「プラチナム・ロイヤルアスコット(6月14日から6月18日)」まで3週間を切ったが、そのエリザベス女王が生産し所有する2頭が先週、ロイヤルアスコット参戦へ向けての試走を終えた。

 1頭は、ジョン&セイディ・ゴスデン厩舎のリーチフォーザムーン(牡3、父シーザスターズ)だ。

 母ゴールデンストリームも、祖母ファントムゴールドも、3代母トライングフォーゴールドも、4代母エクスパンシヴも、そして5代母アミカブルも女王陛下の所有馬という、生粋の女王血脈を背景に持つのがリーチフォーザムーンだ。

 このうち、エクスパンシヴとファントムゴールドは、ロイヤルアスコットのG2リブルスデイルS(芝11F211y)の勝ち馬だから、ロイヤルアスコットと縁のある牝系である。

 さらに、母の全姉フライトオヴファンシーは、01年のG1英オークス(当時芝12F10y)2着馬で、母ゴールデンストリームもG3チャートウェルフィリーズS(芝7F)2着、G3オークツリーS(芝7F)2着と、重賞での2着が2度ある活躍馬。リーチフォーザムーンの6歳年上の半兄インヴィクタスプリンスは、豪州のG1ウインクスS(芝1400m)の2着馬と、ごく近しいところから活躍馬が出ている活気あるファミリーだ。

 2歳5月にデビューしたリーチフォーザムーンは、2歳7月にニューバリーのノーヴィス(芝7F)を制し、デビュー3戦目で初勝利。さらに、続いて出走したサンダウンのG3ソラリオS(芝7F)を4馬身差で快勝し、重賞初制覇を果たした。

 同馬にとって2歳シーズンの最終戦となった、ドンカスターのG2シャンパンS(芝7F)では、オッズ1.62倍の圧倒的1番人気に応えられず勝ち馬から頭差の2着に敗れたものの、今年の3歳クラシック候補という高い評価を得ることになった。

 馬主としてのエリザベス女王が、3歳クラシック5競走中で唯一取り損なっているのがダービーで、プラチナム・ジュビリーの年に女王が悲願のダービー制覇を果たすという夢を、リーチフォーザムーンがかなえてくれることをファンは願った。

 同馬を管理するゴスデン師も、ヨークのG2ダンテSからG1英ダービーへという青写真を描いていたのだが、昨年9月に発症した故障からの回復が想定よりも長引き、5月初旬の段階で、調整遅れのためG2ダンテS出走を断念。これによりダービー出走も諦め、目標をロイヤルアスコットに切り換えることになった。

 そのリーチフォーザムーンの復帰戦となったのが、5月19日にサンダウンで行なわれたLRヘロンS(芝8F)だった。

 F・デットーリが騎乗したリーチフォーザムーンは、発馬後まもなくハナに立って馬群を先導。逃げ込みを図った同馬だが、前走ニューバリーのメイドン(芝8F)で初勝利を挙げての参戦だったマイプロスペロ(牡3、父イフラージ)に差され、2着に敗れた。だが、ゴスデン師はレース前に「ひと叩き必要な状態」とコメントしており、ここを使われての上昇が見込まれている。

 リーチフォーザムーンは、ロイヤルアスコット4日目(6月17日)のG2キングエドワード7世S(芝11F211y)にエントリーしており、ブックメーカーの前売りではオッズ8倍前後の2-3番人気となっている。

 ロイヤルアスコットへの試走を終えたもう1頭は、アンドリュー・ボールディング厩舎のキングスリーン(セン5、父ケーブルベイ)だ。

 こちらも、母キネマティック、祖母スピニングトップ、3代母セニス、4代母ソプラノ、5代母コントラルトがいずれも女王陛下の生産馬という、純度の濃い女王血脈である。祖母スピニングトップがLRルーピS(芝9F197y)2着馬で、母の1歳年上の半兄ミュージカルコメディーがLRカナーヴォンS(芝6F8y)勝ち馬。そして、キングスリーンの1歳年下の全弟コリンズベイがG3チュディニ賞(芝1200m)勝ち馬と、超大物こそ輩出していないものの、旺盛な活力を維持しているファミリーと言えそうだ。

 2歳8月にデビュー。3歳シーズンを終えて5戦1勝の成績に終わった段階で、去勢されてセン馬となっている。これが功を奏したようで、4歳5月にヘイドックのLRアキレスS(芝5F)を制し特別初制覇。さらに4歳10月、3度目の重賞挑戦となったアスコットのG3ベンゴーS(芝6F)で2着に好走している。

 5歳となった今季、初戦に選んだのが5月6日にチェスターで行なわれた条件戦(芝5F15y)で、ここで2着となって臨んだのが、5月21日にヘイドックで行なわれたG2テンプルS(芝5F)だった。

 内外二手に分かれた馬群の内側4番手を追走したキングスリーンは、残り250m付近で先頭へ。重賞初挑戦だった前走G3パレスハウスS(芝5F)は5着だったトゥワイライトコールス(セン4、父トゥワイライトサン)が、内側馬群5番手追走からゴール前で追い込んだが、これを頭差退けてキングスリーンが優勝。5歳春にして待望の重賞初制覇を果たすことになった。

 ロイヤルアスコットでは、初日(6月14日)のG1キングズスタンドS(芝5F)、最終日(6月18日)のG1プラチナムジュビリーS(芝6F)、同じく最終日のウォーキンガムS(芝6F)の3競走にエントリーしているが、おそらくは初日のG1キングズスタンドS(芝5F)に向かうと見られており、ブックメーカーの前売りではオッズ13-15倍の3-7番人気となっている。

 96歳におなりになったエリザベス女王は、昨年秋から体調不安が囁かれていたが、5月13日にはウィンザーで開催された「ロイヤル・ホースショー」に、17日には地下鉄「エリザベス線」の開通式典にお出ましになり、元気なお姿を拝見することが出来た。ロイヤルアスコットで所有馬が優勝し、エリザベス女王の飛び切りの笑顔が見られることを期待したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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