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危険を周知する「尻尾の印」とオークスの15分間を語る【In the brain】

  • 2022年06月02日(木) 18時02分
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▲オークスの“15分”から考える「尻尾の印」の重要性 (撮影:福井麻衣子)


今年のオークスは、GI史上最長の15分遅れでの発走という稀有な事態となりました。ゲート裏での輪乗りの際に、ラブパイローとサウンドビバーチェが接触。蹴られたサウンドビバーチェが放馬し、大幅な発走遅れとなりました。

蹴ったラブパイローの尻尾には、「近づくと蹴りますよ」の危険を知らせる印が。そのような馬が近くにいる際、ジョッキーはどんなことに気を配り、どのように対処しているのでしょうか? 今回はこのテーマでお届けします。

(取材・構成=不破由妃子)

厩務員さんにはたくさん指示を出させてもらっています


 GI史上最長となる15分遅れのスタートとなったオークス。

 ご存じの通り、ゲート裏で輪乗りをしている際にアクシデントが起きてしまったわけですが、僕が気づいて振り向いたときには、すでにサウンドビバーチェは体を捻って立ち上がっており、人が乗っていられるような体勢ではありませんでした。

 なにが起こったのか、その出来事自体はあとから聞いて知っていますが、そこに至るまでの過程はまったく見ていません。なので、明確な原因を知る立場にはありませんが、蹴ったラブパイローの尻尾には、「近づくと蹴りますよ」の危険を知らせる印が付いていて、ファンのみなさんの関心も高いと編集部の方に聞きました。

 そこで今回は「尻尾の印」に注目し、ジョッキーが普段どんなことに気を配り、そういう馬にどう対処しているのか、僕のケースを書いていきたいと思います。

 馬の蹴りというのは、当たりどころひとつで命を奪える強さを持っています。アルミとはいえ、蹄鉄を履いた500キロ前後ある動物が本気で蹴りにくるわけですからね。だからこそ、馬も人もケガをしないよう、命を落とすことがないよう、「この馬は蹴りますよ」ということを周知しておく必要がある。それが尻尾に付いている印の役割です。ちなみに、色や形状はさまざまですが、意味するところは同じです。

VOICE

▲前走でも赤い印を尻尾につけて出走していたラブパイロー (撮影:下野雄規)


 もともと日本の馬は蹴る馬が多く、オークスだけでも尻尾に印が付いている馬が4、5頭はいたはず。でも、実際には滅多にああいった事故は起きません。なぜなら、事故が起こらないよう、みんなが当たり前のように気をつけているからです。

 逆に言うと、あの狭いスペースに18頭の馬がいて、18人のスタッフがその馬たちを引っ張っているわけですから、状況によっては、先日のような事故が起きてしまっても仕方のない面もあると思います。

 馬の動きは、みなさんが思っている以上に素早いので、多少距離を取っていたとしてもササッと動いてきて、気づいたときには蹴られていた、なんてことも経験しました。それくらい一瞬で事故は起こってしまいますので、たとえそうやって寄ってこられたとしても、瞬時に逃げられるスペースを確保しておく。その距離感は常に意識しています。

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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