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【エプソムC】父以上に広い守備範囲で今後の活躍に期待

  • 2022年06月13日(月) 18時00分

1800-2000mを中心にこれからさらにパワーアップするだろう


重賞レース回顧

自在脚質を生かして勝利したノースブリッジ(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 重馬場発表ほど渋った芝コンディションではなかったが、昼過ぎのスコールのような豪雨の影響が残り、切れ味を削がれる馬場状態。少なからぬ影響を受けた馬がいたことは推測される。

 5着までを占めたのは「4歳-5歳」馬で、それもすべて「クビ、アタマ」の小差。ベテランとなった6歳馬は5頭ともにすべて着外。シーズン末のこの重賞の大きな特徴である「今後の成長が期待されるグループの出世レース」となった。

 勝った4歳ノースブリッジ(父モーリス)は、再三の休養ブランクがあり、今回がまだ9戦目。初の重賞制覇だった。前半は行きたがるのをなだめるように好位3番手を追走。自在脚質を生かしてうまく流れに乗せたのが最大の勝因。

 レース全体の流れは「前半48秒1-(11秒6)-後半47秒0」=1分46秒7のスローバランス。上位6頭が大接戦となった直線の攻防で、上がりはこの馬の「34秒6」がもっとも遅かったから、積極的に動いてしぶとさをフルに引き出した岩田康誠騎手の好騎乗が大きかった。

 モーリス産駒は、すでにG1を3つも制しているHitotsu(AUS)や、中距離で5連勝を記録したジャックドールの大活躍で評価をあげたように、父以上に守備範囲の広い産駒が多い。ノースブリッジも1800-2000mを中心にこれからさらにパワーアップするだろう。一族には短距離型が多かったが、母アメージングムーンのイトコには宝塚記念に出走するディープボンドがいる。

 外から2着に伸びた5歳ガロアクリーク(父キンシャサノキセキ)は、3歳時にスプリングSを制し、セントライト記念を3着したあと、脚部不安などで長い低迷期があったが、今回は復活の快走だった。ゲート再審査があった今回は決して万全の状態とはいえない面もあっただけに、3歳三冠で「3、6、9」着した当時の底力がこれで戻ってくるだろう。

 3着ダーリントンホール(父New Approach)は、決して凡走はしないが、「あと一歩の詰めが…」の近走と同じようなゴール前になってしまった。まだまだ巻き返せるはずだが、欧州のクラシック血統は決して遅咲きではない(奥手タイプはシーズンの短い欧州のクラシックで快走できない)。そんなパターンが当てはまりそうな内容になってしまった。今年のメンバーは例年より強力ではなかったから、ここはビシッと決めたいレースだった。

 1番人気で0秒1差4着のジャスティンカフェ(父エピファネイア)は、懸念のカリカリしたレース前の気配ではなく、落ち着いていた。控えるのは予定通りだったと思えるが、良馬場ではないためか、道中の追走に余裕がなかった。上がり最速の33秒5だが、4コーナーでコースロスを避けて馬群の内側に進路を取ったのは、手ごたえもう一歩だったからではないかと思われる。490キロの馬体重のわりにはパワーを感じさせないので、新馬戦こそ渋馬場で勝っているが、良馬場向きなのだろう。さらなるスケールアップに期待したい。

 5着タイムトゥヘヴン(父ロードカナロア)も、ダービー卿CT1600mを1分32秒3で直線一気を決めている馬。重馬場発表ほどは渋い馬場ではないものの、この日の午後の芝はちょっと厳しかった。東京でこの内容なら、距離は1800mでも切れ味は鈍らない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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