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グリムや東京ダービー馬が高知最下級レースに。そのカラクリとは?

  • 2022年07月05日(火) 18時00分
馬ニアックな世界

▲重賞5勝を挙げたグリムが高知C3に出走!? そのカラクリとは…


netkeibaニュース「ダート重賞5勝馬グリム、高知の最下級条件から再出発」(6月17日付)が注目を集めました。ご覧になった方の中には「なぜ重賞馬が最下級条件に?」と疑問を持った人もいるのではないでしょうか。さらに、最近は他にも東京ダービー馬ヒカリオーソが高知競馬の最下級クラス「C3」レースに出走しています。

これはJRAとは異なる各地方競馬のクラス分けのルールによるもので、より魅力的なレースとなるよう設計されたもの。なぜグリムがC3クラスに出走となったのか、そしてその先の展望とは。「ちょっと馬ニアックな世界」を覗いてみましょう。


高知独自の「2年ルール」


 JRAで例えるならば、「重賞馬が未勝利戦を走る」とでも表現したらいいのでしょうか。

 合っているような、正確には違うような、微妙な表現なのですが、地方競馬に馴染みの薄い方にとっては、グリムのC3クラス出走をそう説明しようかと思います。

 グリムは2歳の2017年にJRAでデビューし、翌年のレパードS、白山大賞典と連勝。19年に名古屋大賞典を勝つと、同年はマーキュリーC、そして白山大賞典を連覇とダート中距離で活躍しました。

 名古屋大賞典を勝った時、野中賢二調教師はグリムの長所を尋ねられると「セールスポイントと言えるセールスポイントがないところ」と笑顔で答えました。

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▲名古屋大賞典を制したグリム


 その真意は、当時まだ4歳で、まだまだ成長の余地がある、ということだったのでしょう。それゆえ、グリムに対する期待は広がるばかりでした。

 ところが。

 19年白山大賞典後に屈腱炎を発症。約1年5カ月後に復帰した黒船賞では、久しぶりの1400mでも逃げて存在感を示したものの、4着。続くアンタレスS12着を最後に、しばらく競馬場に姿を現すことはありませんでした。

 そんなグリムが久しぶりに出走したのが今年6月19日の高知7レースC3-13組。JRAから高知・打越勇児厩舎に移籍しての初戦でした。

 高知競馬では最下級のC3クラス、その中でも収得賞金順に上から1組、2組と組み分けされる中で下級組の13組への格付け。

 なぜ、重賞5勝を挙げ、将来を嘱望された馬がこのクラスに編成されたのかというと、高知独自の「2年ルール」がありました。

 JRAでは1つ勝つとクラスも1つ上がる、という勝ち抜け方式ですが、地方競馬では限られた在厩頭数でレースを行うことから、面白味のあるレースとなるよう各場では様々なルールの下、定期的にクラス再編成を行っています。

 高知競馬の場合は、4月と10月の年2回にクラス分けの見直しが行われるのですが、その時に基準となるのが「直近2年の賞金」。

 グリムを例に取ると、22年6月に移籍初戦を迎えたグリムは同年4月時点での「直近2年」にあたる20年4月以降の賞金で判断されます。

 そこで振り返ってみると、グリムの場合は「屈腱炎で約1年5カ月の休養」というのが大きなポイントでした。同馬は20年4月以降、2回しか走っておらず、黒船賞4着とアンタレスS12着。

 黒船賞では190万円の収得賞金を手にしましたが、これは高知ルールでは30%の57万円として扱われます。(レース格やどの競馬場でのレースかによって換算率は変わります)

 これにより、高知競馬ではC3の、それも下級組への編入が決まったのでした。

重賞レースへの出走には10勝前後が必要!?


 地方競馬への移籍と聞くと、一昔前は「都落ち」という表現をされることもありました。

 しかし、近年はJRAのレース、特にダートレースのオープンクラスなどにおいては出走希望馬がとても多く、かなりの賞金を持っていないと出走することすら困難な場合が多いのです。

 対して地方競馬に目を転じると、売上好調の波に乗って各地で賞金の増額が続いています。高知競馬では古馬重賞は最低でも1着賞金1000万円。地元馬同士の高知県知事賞の今年の賞金は1着2000万円と発表されています。

 先週、JRA小倉競馬場で行われた西部スポニチ賞(3歳以上2勝クラス)で1着1510万円ですから、高知競馬の賞金がいかに上がっているかが分かります。

 グリムは現在C3クラスですが、順調に勝ち上がっていけば高知競馬の重賞レースでその姿を見ることもできるでしょう。

 同じく、19年東京ダービーなど重賞4勝を挙げたヒカリオーソも高知競馬に移籍し、最下級クラスへの編入。7月3日に高知6レースC3-14組を完勝しました。

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▲19年の東京ダービー馬ヒカリオーソも高知へ移籍した(撮影:高橋正和)


 こちらは最後に賞金を稼いだのは20年1月の川崎記念2着なので、今の時期に高知競馬に移籍すれば収得賞金0という状況だったのです。

 グリムもヒカリオーソも、最下級クラスからのスタートのため、重賞レースに出走できるようになるには10勝前後することが必要と思われますが、その歩みも楽しみたいもの。(2、3着でも賞金は加算されますし、特別レースなどに出走すれば賞金が上がるため、多少の前後があります)

 一方で、高知競馬場の砂はJRAに比べ約4cm深く、今年の黒船賞のように良馬場などで非常にパワーを要する馬場になると、レース結果に大きく影響を及ぼすこともあります。

 重賞馬たちが下級条件レースへの出走となれば自ずと人気するでしょうが、馬券ファンとしては「万が一、2着以下になったら万馬券になるんじゃないか」という予想も楽しいかもしれません。

 競馬に絶対はありません。その中で、新天地に活躍の場を求めた重賞馬たちがどんな輝きを見せるのか、楽しみです。

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競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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