着差以上の完勝でさらなる進展に期待
七夕賞を制したエヒト(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
波乱の多い夏のハンデ重賞を鮮やかに制したのは、6番人気の成長株5歳牡馬エヒト(父ルーラーシップ)だった。オープンに昇格してこれが3戦目、初の重賞制覇。その内容は着差以上の完勝だった。
前後半の1000m「58秒5-59秒3」=1分57秒8は、従来の記録を0秒4更新するレースレコード。レースの後半4ハロンは「→11秒9-11秒9-11秒6-11秒8」。「自らハミを取って、グイグイ走っていた」と、ベテラン田中勝春騎手が振り返ったように、福島コースは初めてなのに、エヒト自身がレースを作ったかのような鮮やかな勝ち方だった。これで全5勝が1番人気の際ではないが、2走前のAJCCは直線不利があっての0秒7差。前回の京都記念は流れに恵まれずの0秒4差(自身の上がり34秒2)。
5歳になって一戦ごとにパワーアップしていた成長力が一気に開花した快勝だった。2000mの自身の最高時計を2秒3も短縮したからすごい。遅咲きの素質が開花したと思えるので、この後のさらなる進展が期待できる。
田中勝春騎手(51)の重賞勝ちは、ちょうど3年前2019年のマイスタイルの「函館記念」以来。その前の重賞制覇は2015年の「福島牝馬S」。近年は乗鞍こそ少ないが、マイスタイルのベテランはまだまだ健在だった。
1着エヒト、2着ヒートオンビート、3着アンティシペイトはみんな5歳馬。父は、そろってキングカメハメハ系。母の父はみんなディープインパクトだった。
2着ヒートオンビート(父キングカメハメハ)も、速い流れだったとはいえ、自身の2000mの最高タイムを2秒3も更新している。この夏、全場の時計はみんな速い。これでGIも含め5戦連続して4着以内。通算【4-8-3-5】。詰めが甘いのは確かだが、さすがに次走あたり重賞初制覇のチャンスだろう。次走は新潟記念(9月4日)が予定されている。
3着アンティシペイト(父ルーラーシップ)は、豪快な勝ち方を見せた福島民報杯と同じようにこのコース向きのスパートをかけたが、前半57秒台のハイペースで、後半1000mが62秒2だった福島民報杯と違い、今回の後半1000mは約3秒も速い「59秒3」。これに対応して自身は上がり34秒5で伸びたのは素晴らしかったが、前方にいて勝ったエヒトに同じように上がり34秒4でまとめられては苦しかった。もう少しタフな芝コンディションの際がチャンスだろう。
13番人気のエヴァーガーデン(父アイルハヴアナザー)が、軽ハンデ52キロとはいえ巧みに流れに乗って4着したのは立派。今回は全体の時計が速すぎて善戦止まりだが、距離ベストの2000mで、時計のかかる馬場なら侮れない。
快走を期待した5歳馬プリマヴィスタ(父ハーツクライ)は、好走例のない外枠も重なって前半の行き脚が鈍く最後方追走。最後だけ差は詰めたものの、流れに乗れない時のモロさが出てしまった。前半のペースが緩むコースで見直したい。
復活のきっかけをつかみたかった4歳レッドジェネシス(父ディープインパクト)は、スタートで接触する不利があって最初からリズムが崩れてしまった。馬体は良くなっているので、次走あたりなんとか復調を示すレースを見せてほしい。