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【函館記念】遅いタフなレースで余力を示す勝利

  • 2022年07月18日(月) 18時00分

むしろ芝で良さが生きるのではないかと思える内容


重賞レース回顧

ハヤヤッコが芝ダート両重賞制覇達成(C)netkeiba.com


 1994年にコースが改修され、同時に全面洋芝になって以降、現在の芝で2分03秒6「前後半1000m60秒1-63秒5(レース上がり38秒3)」の勝ち時計は、3番目に遅いタフなレースだった。

 人気が割れたなか、7番人気で抜け出した白毛のハヤヤッコはコースロスを避けて3コーナー過ぎまでインのラチ沿いキープ。直前の芝のレースでもインを通った馬が好走したように、重馬場でもインが特に悪いわけでもなかったが、4コーナーから直線に向くと少し外に回る余力を示す勝利だった。

 2歳戦以来、久しぶりの芝に出走した3月のGII日経賞2500m(稍重)が、今回と同じように終始インを通って勝ったタイトルホルダーから0秒4差の5着。最後までしぶとく伸びて上がり34秒6は、次走で目黒記念を制したボッケリーニ、さらにはヒートオンビートと並んで最速タイだった。

 最近は得意のダートで伸びを欠いたが、初勝利は芝1800mだった馬。パワーアップした現在、時計を要するパワー勝負なら、むしろ芝で良さが生きるのではないかとさえ思える内容だった。

 この白毛一族、母マシュマロ(父クロフネ)の半妹が、ソダシ(父クロフネ)の母となったブチコ(父キングカメハメハ)であり、シラユキヒメの孫になるソダシとハヤヤッコ(父キングカメハメハ)は、極めて似た血統背景を秘める「いとこ」同士になる。8月21日の「札幌記念」を予定するソダシのライバルに、ハヤヤッコが名乗りを上げないとも限らない。ダート重賞だけでなく、芝の重賞も快勝したハヤヤッコは、金子オーナーが種牡馬への道を開いてあげそうな気がする。

 馬場が悪化するごとに人気が上昇した6歳マイネルウィルトス(父スクリーンヒーロー)は、スタートに失敗。2着した目黒記念のように流れに乗れなかった。結果、2着にとどまったが、意を決して前半で無理に脚を使わずしばらく最後方追走。

 3コーナー手前からスパート態勢に入り、4コーナーではあっというまに先団の外に取りついていた。並びかけたハヤヤッコを交わすことはできなかったが、あれだけロングスパートをかけながら最後まで失速することなく4分の3馬身差。上がり37秒3はレース上がりを1秒0も上回って断然最速だった。昨春の福島民放杯(新潟)で見せた重馬場適性はまさに本物。抜群のスタミナもあった。これで渋馬場(稍重-不良)は通算【2-2-3-1】。重賞【0-3-0-4】。条件がそろえばビッグレースでも侮れない。

 3着スカーフェイス(父ハーツクライ)は、位置取りこそ違ったが、勝ったハヤヤッコと同じようなコース選択。内、外の芝コンディションの差は少なかったのだろう。最後の直線、もうひとつ伸びなかったのは現時点での総合力の差か。1-2着馬はこの馬場を味方にしていた。

 七夕賞では5歳馬が上位を独占したが、函館記念は6歳以上馬が上位5着までを占めた。タフなレース経験の差が出たのだろう。実際、2番人気で6着にとどまったアラタ(父キングカメハメハ)は素晴らしいデキだったが、古馬になっての重賞挑戦は今回がまだ3回目。上がり馬の勢いを生かしたかったが、レースがタフすぎた。

 3番人気のサンレイポケット(父ジャングルポケット)は、稍重程度の渋馬場はこなせるが、ハンデ頭にとって午後からの雨で一段とタフな芝状態になったのが不運。6歳後半に天皇賞(秋)、ジャパンCで差のないレースをした底力はまだ衰えてはいないが、今回は重巧者でなければ差し脚の生かせるコンディションではなかった。

 人気薄で上位に食い込んだのは、12番人気で4着したウインイクシード(父マンハッタンカフェ)1頭だけ。もう8歳夏だけに上昇は乏しいと思えたが、ハンデ56キロでこの内容は立派。タフだった。夏の平坦に近いコースの1800-2000mで、ハンデが1キロでも軽くなるようなら馬券圏内好走もある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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