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日高で余生を過ごすマンダララ(1)外国産繁殖馬として初!引退馬協会のフォスターホースに

  • 2022年07月19日(火) 18時00分
第二のストーリー

アイルランド生まれのマンダララ(撮影:朝内大助)



 アイルランドで生まれた1頭の馬が、繁殖の務めを終えて穏やかな余生を過ごしている。その馬の名はマンダララ。1997年4月15日生まれの25歳だ。マンダララの父はLahib(USA)、母Madiriya(IRE)。母の父がDiesis(GB)という血統だ。自身の競走成績は1戦1勝ながら、フランスで産んだ2番仔のMandesha(父Desert Style)は、2006年にヴェルメイユ賞、アスタルテ賞、オペラ賞とG1を3勝して、全欧3歳牝馬チャンピオンに選出されるほどの名牝に成長。2007年にはG2のコリーダ賞を制し、G1のサンクルー大賞典、ナッソーSで2着という成績を収めている。送り出した娘が大活躍したマンダララは、繁殖として大きな期待を背負って日本へとやってきた。

 日本での産駒からは残念ながら重賞勝ち馬に恵まれなかったものの、3つの牧場で繁殖牝馬としての務めを果たした。現在は認定NPO法人引退馬協会のフォスターホースとして、それまで繁殖生活を送っていた北海道日高町にあるスウィングフィールド牧場でそのまま余生を過ごしている。

 スウィングフィールド牧場代表の宇田昌隆さんは、海外でG1馬を送り出したマンダララの命を繋ぎたいと思い、かねてから認定NPO法人引退馬協会に相談をしていた。日本で活躍した馬に比べて、外国生まれの種牡馬や繁殖牝馬たちは日本の競馬ファンには馴染みが薄い。だがマンダララのように期待を背負って輸入された優秀で良血の繁殖馬たちが、日本にはたくさん来日しているのも事実だ。これまでスキャンとプリサイスエンドの2頭の外国産種牡馬を引き取り余生を支援してきた引退馬協会だが、これまで外国産繁殖牝馬は引き受けたことがなかった。マンダララについて宇田さんから相談を受けたことが、引退馬協会が外国産繁殖馬について考える大きなきっかけになったという。

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マンダララの存在が外国産繁殖馬について考える大きなきっかけに(撮影:朝内大助)


 引退馬協会では、ナイスネイチャのバースデーを記念して毎年テーマを決めてクラウドファンディングを行っているが、2020年の「ナイスネイチャ・32歳のバースデードネーション」では、公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナルの引退名馬繋養展示事業で助成金が支給される資格のある馬(JRAの重賞及び交流重賞優勝馬)のための支援を募った。その結果、1999年のチューリップ賞(GIII)や2001年の中山牝馬Sを制したエイシンルーデンス(当時26歳)が受け入れ馬となり、引退馬協会のフォスターホースとして晩年を過ごした。そして2021年の「ナイスネイチャ33歳のバースデードネーション」では産駒に重賞勝ち馬がいる種牡馬及び繁殖牝馬にも支援の対象を広げることとし、娘が海外のG1レースを勝ったマンダララも支援の対象となった。こうして昨年のドネーションによる最初の受け入れ馬となったマンダララは、穏やかに余生を送る切符を手に入れたのだった。

 スウィングフィールド牧場の宇田さんは、高校を卒業後に育成牧場に就職。以来、育成畑をずっと歩んできた。1996年に独立して育成牧場を開場。だが人材集めに段々苦労するようになった。

「実は育成ではなくて、生産をやりたくてこの世界に入ったんですよね」

 人材集めの苦労もさることながら、年齢を重ねてきたこともあり、今から7年ほど前に当初からの夢を実現させるために育成から生産牧場に切り替えた。マンダララが宇田さんのもとに来たのが約5年前。

「初めて見た時は、ずんぐりむっくり(笑)と言いますか…。今は背中の肉が落ちて来てはいますけど、来たばかりの頃はもっと雄大でした。ヨーロッパの馬ですからスッとした馬なのかなとイメージしていたのですが、力馬タイプに映りましたね」

 背中は少し年齢の影響が出てきているようだが、馬体の幅は今も変わらず、若々しさを保っているようだ。

「性格はおっとりしていますね。他の馬に喧嘩を売ることもないですし、他の馬には我関せずでドシッと構えていて、いわゆる日本のお母さんみたいな感じでしょうか(笑)」

 他の馬が近くに来ても脚を上げることもなく、穏やかな性格のマンダララ。それが買われて繁殖引退後は若駒たちのリードホースとしての役目を担っている。

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リードホースとして若駒たちと過ごしているマンダララ(撮影:朝内大助)


 現在は昨年生まれの1歳の牝馬たちと放牧されているが、そろそろその馬たちとも離れて、秋に離乳を待つ親子の群れに放たれるという。離乳の時を迎えると、母たちが他の放牧地へと移動し、当歳たちとリードホースが放牧地に残される。日頃から見慣れたリードホースがいれば、当歳たちはさほど寂しがらずに安心して過ごすことができるというわけだ。

 競走馬、繁殖牝馬、そしてリードホース。マンダララは、その時々で与えられた役目をしっかりと果たす偉大な馬だと、宇田さんの話を聞きながら感じ入ったのだった。

(つづく)



▽ 引退馬協会 HP
https://rha.or.jp/index.html

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北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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