4月19日・20日の両日に英国のニューマーケットで行われた「タタソールズ・ブリーズアップセール」は、総売り上げが前年比69.5%アップの1073万ギニー、平均価格が前年比43.0%アップの73,034ギニー、中間価格が前年比42.8%アップの5万ギニー、前年27.9%だったバイバックレートが今年は16.0%と、全ての指標が前年を大きく上回る、驚異的な成功を収めた。
アメリカに比べて発展の遅れていたヨーロッパの2歳市場だが、ここ数年の間に急成長。その上昇トレンドが一気に爆発した今年、トップランナーである「タタソールズ・ブリーズアップ」は遂に総売り上げでキーンランド・エイプリルやバレッツ・マーチを凌駕し、ファシグティプトン・コールダーに次ぐ世界第2の2歳市場へと躍進を遂げた。
一方で、マクトゥーム・ファミリー、クールモアといった大御所たちは、同じ時期に南半球で行われた1歳のプレミアセール「イングリス・イースターセール」に出向いており、タタソールズは今年も不参加。それでもこれだけの好況振りを誇るあたりに、ヨーロッパのブラッドストック市場の懐の深さを感じるとともに、ここにマクトゥームやクールモアが参戦するようになったらどんな市場になることやらと、末恐ろしい気もした。
今年急上昇の要因は、ひとえに上場馬のレベルが高かったことに尽きる。市場に出回る最後のデインヒル産駒たちをはじめ、種牡馬のリストはまるで10月の1歳プレミア市場並みで、しかもコンサイナーたちが軒並み良い仕事をして公開調教で素晴らしい動きを披露したとあっては、バイヤーたちの財布の紐も緩まざるを得なかったようだ。
最高価格馬は、2日目に登場した上場番号128番の父グリーンデザートの牡馬。力強い後駆が印象的な馬体が下見の段階で際立っていたのに加え、母アレグザンダースリーディーがG3パークヒルS勝ち馬で、叔母にアメリカで芝のG1・3勝のゴールデンアップルズがいるという牝系も一流。しかも、18日の公開調教で目を見晴らせるような動きを見せたとあって、セール開始前から「最高価格はこの馬」と評判をとっていた馬だった。
激しい争奪戦の末、オークショニアのハンマーがノックされた時の価格は650,000ギニー(約1億4200万円)。2年前のこのセ−ルで、父フサイチペガサスの牡馬がマークした50万ギニーを上回る、ヨーロッパにおける2歳セール歴代レコード価格が樹立されることになった。
日本のファンにとってはうれしいことに、購買したのは日本人で、我々の目の前で競馬をしてくれる予定とのこと。タイプとしてはマイラーで、暮れの朝日杯FS、来年のNHKマイルCあたりを目指すことになりそうだ。
最高価格馬を含めて、日本人によると見られる購買は、平均128,636ギニー(約2810万円)で11頭。前年が平均86,666ギニーで6頭だったから、アメリカにおける2歳市場同様、ここでも日本人購買者の健闘が目立つ結果となっている。