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今夜発走! バスラットレオンが挑むサセックスSの展望

  • 2022年07月27日(水) 12時00分

調整は順調も斤量面が不安材料


 ヨーロッパにおける真夏のマイル王決定戦、G1サセックスS(芝8F)の発走が、日本時間の今夜11時35分に迫っている。

 25日(月曜日)の日本時間18時に設けられていた、最後の登録ステージの直前に入ってきたのが、コロエバス(牡3、父ドバウィ)回避の一報だった。

 G1英2000ギニー(芝8F)、G1セントジェームスパレスS(芝7F213y)を連勝し、3歳世代最強マイラーの称号を手にしているのがコロエバスだ。

 マイル戦線における3歳と古馬の精鋭が初めて激突する舞台となるサセックスSで、3歳世代の旗頭となる予定だったのだが、25日の朝、まだ馬房にいる段階で歩様の乱れが確認され、検査の結果、左後肢の繋ぎの部分に腫れがあるのが見つかったものだ。

 陣営からは、サセックスSの回避とともに、炎症が早急に治まれば、8月14日にドーヴィルで行なわれるG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)を目指したいとの発表もあった。

 カタール・グッドウッドフェスティヴァル2日目のメイン競走となるG1サセックスSには、古馬5頭、3歳2頭の合計7頭がラインナップすることになった。

 そんな中、ブックメーカー各社が1.16〜1.2倍というオッズを掲げて圧倒的1番人気に支持しているのが、ウイリアム・ハガス厩舎のバーイード(牡4、父シーザスターズ)だ。

 デビュー以来ここまでの戦績は8戦8勝。昨年秋から、G1ムーランドロンシャン賞(芝1600m)、G1クイーンエリザベス2世S(芝8F)、G1ロッキンジS(芝8F)、G1クイーンアンS(芝8F)と、マイル路線のG1を4連勝中なのがバーイードだ。

 前走G1クイーンアンSにおけるパフォーマンスで、レイティング128を獲得。世界ランキング首位に立っている、マイル路線の絶対王者である。昨年のカタール・グッドウッドフェスティヴァルでは、G3サラブレッドS(芝8F)に出走し、ここを6.1/2馬身差で快勝。コース実績も実証済みで、死角の見当たらない大本命馬と言えそうだ。

 管理するハガス師はかねてから、バーイードを10F路線に挑ませたいとの意向を示しており、8月17日にヨークで行われるG1インターナショナルS(芝10F56y)が、転進初戦になると見られている。すなわち、マイル戦を走るバーイードは、サセックスSが見納めとなる可能性があるわけだ。

 昨年のこのレースの勝ち馬で、前走G1ジュライC(芝6F)を制し4度目のG1制覇を果たしたアルコールフリー(牝4、父ノーネイネヴァー)と、今季初戦のG1クイーンアンSでバーイードの3着となった後、前走G2ミンストレルS(芝7F)を制し3度目の重賞制覇を果たしたオーダーオブオーストラリア(牡5、父オーストラリア)の2頭が、オッズ11〜12倍で2番人気を争っている。

 オッズ17〜21倍の4番人気が、コロエバスの回避で3歳世代の代表格として出走することになった、コロエバスと同厩のモダンゲームズ(牡3、父ドバウィ)だ。

 G1仏2000ギニー(芝1600m)を制し、自身2度目のG1制覇後、G1仏ダービー(芝2100m)は、距離が長かったことと、展開がきつかったことが響いて3着に敗退。前走G1ジャンプラ賞(芝1400m)では、ゴール前の詰めを欠いて5着に敗れている。3戦ぶりに最適距離の1マイルに戻るここで、巻き返しを図る。

 ここに日本から挑むのが、G2ニュージーランドトロフィー(芝1600m)、G2ゴドルフィンマイル(d1600m)と、マイル重賞を2勝しているバスラットレオン(牡4、父キズナ)だ。

 英国での拠点となるニューマーケットに同馬が到着したのは、6月24日のことだった。現地到着から、現地における初戦まで1カ月以上の調整期間があるというのは、ここ最近の日本馬の海外参戦では見られなかったパターンである。ニューマーケットという環境や、ヒースにおける調教など、バスラットレオンにとっての非日常が、馬の心身にポジティヴな効果をもたらしていることを期待したい。

 グッドウッドの馬場は、英国の競馬場らしく起伏に富んではいるものの、日本馬が往々にして戸惑うきつい昇り坂が、勝負どころにあるわけではない。ディアドラがG1ナッソーS(芝9F197y)制覇を果たしたのもこの競馬場で、日本馬が力を発揮出来る舞台である。

 それよりも、ポイントとなりそうなのは斤量だろう。4歳以上の牡馬は9ストーン8ポンド(=約60.8キロ)というのがサセックスSの当初の規定で、これでも日本のスタンダードからするとかなり重いのだが、コロナウイルス感染拡大以降、競馬場のサウナが閉鎖されている中、騎手の減量苦が考慮され、2ポンドの上積みが認められていることから、今夜のサセックスSにおける4歳以上の牡馬は、9ストーン10ポンド(=約61.7キロ)を背負っての出走となる。

 バスラットレオンは500キロ近い馬格がある一方で、これまで実戦では57キロまでしか背負ったことがないだけに、斤量の克服がキーファクターとなりそうである。

 レースの模様はグリーンチャンネルで生中継(27日、23時〜24時)されるので、ぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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